序章 『原点はこちらです』
目を覚ます。体を起こす。もう慣れっこになってしまっただるさを引きずってトイレへ行く。顔を洗う。無精髭と濁った目が鏡に映る。部屋に戻る。スマホを取り出す。
いつもの生活である。この生き方は数年変わっていない。
俺は佐渡まひろ。高校2年生。訳あって休学中である。
俺には、やりたいことがない。外の小さな世界が怖い。相手の波長を読みながら、薄っぺらい笑みを貼り付けた口で、言葉を喋るのがつらかった。
この生活だって、俺から変わろうとしない限り、ずっと続いていくのだろう。俺は、普通の人ほど、強くないのだから。
この日も、生産性のない日だった。気づいたら外が明るい。体を起こし、トイレへ向かう。そのドアを開けた瞬間だった。
便器のなかが黄金色に光始め、俺の意識はそれにスゥッと惹かれていく。
「え、俺の死因『トイレに流される』なのか…?」
そう感じたときには、俺の意識は飛んでいた。
ーーー
「っ…あれ?生きてる…?」
目を開けると、そこには鬱蒼とした森に、4人の少年少女。足元には魔法陣。
これは親の顔と同じぐらい見た、かの有名な展開。
「本当に起こるんだ…異世界召喚…」
基本的にちまちま短めの投稿をしていきます。