表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/119

87・ゴーレム

 ストーム系はテンペスト系より威力は落ちるものの、プロキオンは暗黒魔法が得意な上に自慢の反射壁のお陰で、魔法の威力は恐ろしく高くなっていた。


「くっ、また私達を巻き込むとは……」

「……暫し広範囲魔法は使わないと言ったではないですか冥王様」

「カストル、ポルックス、二人共いい加減にしろ!」


 まだ武器を交えながら平行線の言い争いをしているアリス達を見て、冥王プロキオンが「ふはははっ」と愉快そうに笑う。


「早く説得せよと尻を叩いただけだ。しかし我の魔法を塞ぎきれなかったのか? ボロボロではないか、ふはははっ」


 プロキオンの言う通り三名は傷だらけだ。

 口論をしながら戦闘をしていたアリス達は、俺達より離れた位置にいて尚且つ動き回っていた為に、あの三名を守る為のクレアの結界の展開がが間に合わなかったようだ。

 自前で障壁を張ってある程度防いだようだが、結構ダメージを受けている。アリスはともかく側近二人はかなり傷が深そうに見えるな。


「仲間割れしてる場合じゃないのがわからんのか?」

「分かっていないのはアリス様です!」

「我々はあの二名を仲間だと思った事など一度もありません!」


 うん、分かってたよ。アリスの命令がなければ、あの二人は目も合わせようともしない。

 まぁ以前俺がアリスと戦った時に、あいつ等を首だけにしちゃったしな。恨まれる心当たりがあり過ぎる。

 二人の返事でショックを受けているのはアリスの方だった。俺達はもっと上手くやっていると思っていたのかな? すまんな。


「さて、次は冥王らしくアンデッドの大量召喚をして、物量で襲おうかと思ったが……貴様ら聖属性持ちだったな。では少し指向を変えてみる事にしよう。四王会議の時に他の王からいいものを貰ったのでな」


 自分のローブの中を手で弄る冥王。


「大切な時期なのにも関わらず、強引に四王会議に参加させられて国が大変な事になっていると文句を言ったら、各王から謝罪代わりに手土産を貰ったのだ。ほれこれは魔王から貰った魔道具だ」


 マジか?!

 冥王は高々と半円形の石に黒い穴が空いている魔道具を掲げた。


「魔王は多彩な奴でな……今はゴーレムにはまっているそうだ。ふはははっいくぞ、サウザンドゴーレム!」


 石の中心の黒い部分が光ると、冥王の手前に巨大な穴が現れた。

 そこから床を揺らし石のゴーレムが現れる。

 いや、石だけじゃない。

 木、鉄、タイプの違うゴーレムが次々と大部屋に現れた。しかも大きさもバラバラだ。

 よく見ると銀色に光るゴーレムもいる……おいおいマジか、あれってミスリルゴーレムじゃないのか?

 流石魔王、太っ腹だな、畜生め!


 十体程現れたら巨大な穴からゴーレムは出てこなくなった。しかし穴はそのままだ。嫌な予感がするなぁ。

 取りあえず、一番最初に出てきた一番近い三メートル程の石のゴーレムと対峙する。リーチはあちらの方が長い、迫ってくるパンチを躱し聖剣で一撃入れると真っ二つになった。

 流石聖剣、刃こぼれ一つしないな。

 ゴーレムもそんなには強くはない。まだ一体倒しただけだけど。

 むっ?

 二つになったゴーレムがまだ動いていた。上半身だけになったゴーレムが放ったパンチを聖剣で受ける。倒したと思ってちょっと油断したよ、危ない危ない。

 下半身は動いていないのでゴーレムの核は上半身にあるみたいだ。

 胸部を刺す……まだ動くな。

 次は頭部を切り付けてみた。

 カツンっと今までとは違う手応えだ。そのまま剣を振り切ると頭部は左右に割れて、中から元は球体だったのだろう水晶っぽい物体が出てきた。

 動かなくなったな……どうやらゴーレムの核は頭部にあるらしい。

 まぁ全部がそうとは限らないが多分同じだろうと思う。

 次に襲い掛かってきた四~五メーターはある木のゴーレムの攻撃を避けた時に冥王の近くにある巨大な穴から新たなゴーレムが出てくるのが見えた。

 ああやっぱりそうか。倒されたら補充されるタイプのやつだ。

 くそ、こんなチートな魔道具を冥王に与えやがって、勘弁してくれよ!


「ぐぁ!」

「くっ!」


 アリスの側近二人はゴーレムに襲われ吹っ飛ばされるが、直ぐに起き上りアリスの下まで駆け寄る。ゴーレムは冥王の眷属になっている二名に対しても遠慮なく攻撃を仕掛けてくる。

 こんな状況でもアリスに冥王の言う事を聞くように口を開く側近二名に、アリスは言い返しながらもなんとか襲い来るゴーレムと戦っていた。


「アリスさん!」

「クレアこちらはいい、自分とセシリィだけに集中しろ! ……すまん」


俺達と連携ができてない事を謝るアリス。だが仕方がない、これも冥王プロキオンの策だからな、くそっ。


「ふははっ、ゴーレムと戦わずに説得をせんか。それとも諦めたのか? いやすまん、それどころではないかぁ~?」


 本当にいい性格をしてるよな。俺達とゴーレムとの戦いを、高みの見物しているプロキオン。いつの間にかブランの時に出した椅子に座っていた。

 嫌がらせのつもりなのか冥王プロキオンはゴーレム達の隙間から魔法を飛ばしてくる。ああもう、非常に戦いずらい。


 防御をクレアに任せ俺はゴーレムを破壊する方を優先する。しかし何分手が足りない。どうしても死角からの攻撃には手が回らずクレアが張ってくれる障壁頼みになる。

 今の所は戦えてはいるが、そのうちジリ貧になるのは目に見えている。

 俺の魔力はクレアに譲渡できるが当然無限ではない。

 そして聖属性を得たと言っても本質はゾンビの俺だ、自身の傷は回復魔法では回復しないどころか、逆にダメージを負ってしまう。

 体力の回復は魔素による自然回復頼みだ。

 この冥王城は魔素が濃く非常に豊富ではあるが、魔素が多ければ多少回復量が増えるものの劇的に増加する訳ではない。

 そして俺が回復すると言う事は、同じアンデッドの冥王プロキオンも回復してしまうと言う事でもある。

 冥王を倒すには、魔素より得る自然回復量より多いダメージを与え続けないといけないのだ。俺が倒される条件も同様だがな。

 つまりこちらの魔力が切れて結界や障壁が張れなくなり、俺がゴーレムにボコられ魔素による自然回復が追いつかなくなる程のダメージを受け続ければ、こちらの負けが決定する訳だ。

 あちら……冥王プロキオンはそれを見ているだけでいい。

 ゴーレムが尽きるまで倒せばいい? 馬鹿言うな、プロキオンは魔道具を使う時サウザンドゴーレムって言ってたぞ。つまり千体程のゴーレムが出てくるかもしれないって事じゃん。そんなに魔力が持たないってばよ。

 ……あれ、これ詰んだ?


 いやいや、まだ手はある。要は手数を増やせばいいんだろう?

 俺が収納鞄に手を伸ばそうとしたその時、俺の左右から襲い掛かってきたゴーレムが吹っ飛んだ。


「すまんセシリィ」

「アリス……様?」

「もう様も敬語もいらん。待たせたな」


 後方には重なる様に倒れたアリスの側近……カストルとポルックスがいた。


「……いいのか? あいつ等はアリスの為に止めようとしていたんだろう?」

「良いも悪いもあるか、あいつ等は私に対する忠誠心と意地で他に何も見えなくなっていたんだ……冥王様……冥王の手の内で踊らされて結局は切り捨てられる事も分からん程にな」


 ああ、恋は盲目と同じみたいな感じだろうか。

 冥王の眷属になっていたくらいだし多少は精神汚染されていたのかもな。アルデバランやカノープスみたいに図太くはなさそうだし。まぁある意味図太くはあるか、アリスに対しては。


「見捨てたか、薄情な奴だ」

「お前に言われたくはない、プロキオン!」


 もう冥王に対し完全に敵扱いなアリスだ。ここまで弄ばれたら、そりゃあ怒りたくもなるよな。


「ぬっ?」


 三体のアリスがそれぞれゴーレムを破壊していく。

 俺がアリスと戦った時に見せた分身だ。

 あの時よりはかなり動きが良い。やっぱり俺と戦った時は手を抜いていたんだな。素直じゃない奴め。

 クレアも障壁を張りアリスがダメージを受けないようにフォローをする。巨大穴から新たにゴーレムが追加される前に冥王に迫ろうとしたが……。

 う~んくそっ、たまに出てくるミスリルゴーレムが強くて一歩出遅れた。


「酒落臭い、エリアオブダーク!」


 冥王を中心に黒い空間が広がる。

 聖属性を持つ俺とクレアは闇に包まれる事はなかったが、アリスは闇に飲まれてしまったようだ。闇に耐性のあるヴァンパイアにも効果を及ぼすとは冥王プロキオンの闇属性がいかに強力なのかが分かる。


「くっ何処だプロキオン!」

「ふはは、他愛無いのぅアリス、それロックバレット!」

「かはっ!」


 やべぇ、一体やられた様だ、本体じゃない事を祈る。

 俺やクレアの周りに闇は来ないが、その闇の中から襲ってくるゴーレムは冥王の闇の力でパワーアップした様だ。闇から飛び出すように襲ってくるので対処が多少遅れてしまう。厄介な。

 なんとかしないといけないと思うが、どうしたものだろう?

 聖女であるクレアの力でもこの闇を押さえきる事はできないようだ、やはり一般的にはレベル差が力の差なのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ