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4・再戦

 うおおおおおっ、マスターゾンビ爆誕!

 俺は片手を高々と掲げ、進化の喜びを身体で表す。


「ふぅふ、ふぅ」


 相変わらず上手く言葉を発せられない。不気味な笑い方になってしまうのは許してほしい。

 しかし身体の方はかなり良くなった。

 いや、良くなったと言うのは少し違う気がするな、ゾンビだし。

 どうなったのかというと、まず身体の穴は塞がり手足は骨も見えない。腐った肉だったのが、腐り始めた肉くらいになっている。

 まぁ臭いが分かるなら、まだ結構臭いとは思うが……。

 全体的に筋繊維が剥き出しの所が多く、昔学校の理科室にあった人体模型を思い出す。

 今の俺の状態がアレかぁ……ちょっ悲しくなってきた。忘れよう、そうしよう。

 しかしこれは進化なのか? ゾンビとしてならかえって退化しているのでは……?

 でもまぁ俺としてはありがたい。

 ゾンビになって精神に耐性ができたのか、腐った身体でも正気を保ってきたが、やはり身体はなるべく腐っていない方が良いに決まっているしな。


 さて、早速レベル上げだ。

 おおっ、凄!

 ハイゾンビの時より更に早くレベルが上がる上がる。

 同じレベルでも上位種の方が圧倒的に強いんだな。そうなるとレベルとは何ぞや、強さの目安じゃないのか? って話になるが、その辺は突っ込まないでおく。

 まぁぶっちゃけ、同じレベルでも上位種の方が明らかにステータス値が高いしな。進化するほど強くなるという事なんだろう。


 前回の失敗を踏まえて、レベルを10まで上げることにした。

 ボス部屋までの魔物ではこの辺りがレベル上げの限界だ。経験値の効率が悪くても、地道に頑張ればもう少し上げれそうではあるが。

 そしてマスターゾンビでレベルが10となった。

 俺はステータス画面を呼び出し、じっくりと画面を覗き込む。

 ……無いな。

 何が? ああ、進化報告の文字が無かったのだ。

 マスターゾンビが最上種なのか?

 ……それとも、進化可能レベルが上がっているのか? 確かに強くなった上位種ではレベル10は割と簡単に上がるしな。

 まぁ、今は分からない事は置いておこう。

 前回よりもレベルが高く、尚且つ上位種だ。前のようにはいかないぜ、覚悟しろスケルトンナイト!

 ……そうやって慢心して失敗したんだったな。反省反省。

 多少ボロだが状態の良さそうな部分鎧を身に付け、小型の盾も装備する。メイスを見つけたのでそれをメイン武器にした。スケルトン系には打撃武器が定石だしな。一応剣もサブ武器として持っていくことにする。

 全部戦利品と拾ったものだが、何とか形になったな。


 意を決してボス部屋に乗り込む。

 部屋の奥の中央には、でかいスケルトンナイトが見える。

 多少姿の変わった俺を見て、ニヤリと笑った気がしたが気のせいだろう。スケルトンの表情なんて分からないしな、骨だから。

 案の定、倒した筈のスケルトンソルジャーは復活していた。

 よく見るとスケルトンソルジャーは三体、ゾンビは四体だ。

 どうやらランダムで数が変わるらしい。

 でもまぁそれも想定内だし、問題はない。

 前回と同じくスケルトンソルジャーが先行して襲って来た。俺はそれを迎え撃つ。

 特に危なげも無しにスケルトンソルジャーを倒すと、続けて来たスケルトンナイトと相対した。

 スケルトンナイトが前回と違い、横薙ぎではなく剣を振り下ろす感じで切りかかってくる。

 相変わらず早いが対応できない程ではなかった。伊達に上位種になったわけではない。

 剣を避け背後に回るとともに遅れてきたゾンビに切りかかり、それを倒す。

 スケルトンナイトが俺に振り返る間にゾンビ四体は倒れた。

 これでタイマンだ。

 増援来ないよな? ……来ないようだ。ほっと胸を撫で下ろす。

 気のせいかもしれないが、配下を倒したくらいでいい気になるな……と、スケルトンナイトが言っているように感じた。

 だって首を左右に傾け、持っている大剣を肩に担ぐようにポンポンと当てているのだ。そんなジェスチャーにしか見えん。

 いいだろう、決着を付けようぜ!

 でも……ヤバくなったら即、逃げよう。

 何処までも逃げ腰精神が抜けない俺だった。

 そう俺は、敵はこの身はどうなっても必ず倒す! などと熱血漢溢れるキャラではないのだ。

 それでもギリギリまでは頑張るけどな。倒せるなら倒したい。

 一進一退を続け、双方ほぼ互角。流石ボス強ぇえ。

 戦闘のセンスは奴の方が上なのかもしれない。

 ゲームの中で戦闘はよくやったが、ガチ戦闘なんてのはこの世界に来てからだしな。熟練度みたいなものが全然違うんだろう。

 それでもこの強敵相手に何とかなっているのは、恐らくだが俺の方が奴よりステータス値が高いからではないだろうか?

 ゾンビといえど二回も進化しているしな。


 上位種の性能なのか、もしくは熟練度が上がってきたのか、スケルトンナイトの大剣を搔い潜り、盾を回り込んで俺の攻撃がスケルトンナイトに当たるようになってきていた。

 つまり俺の方が押しているのだ。

 とは言え、スケルトンナイトの攻撃をまともに一撃でも食らえば、立場は逆転する。

 恐らく耐久力は奴の方が上だ。

 スケルトンナイトは俺の攻撃が当たっても下がる事はないが、スケルトンナイトの攻撃を受けると俺は、受け流すだけで身体が大きく弾き飛ばされる。

 もうこちらは手数で勝負である、それしかない。


 いくら攻撃しても怯まないスケルトンナイトにこれもう無理ゲーじゃない? などとつい考えてしまうが、頭を振りそんな弱気な思考を振り払う。

 いつの間にかスケルトンナイトは、攻めより守りに入る事が多くなってきている。

 確実に俺の方が有利になりつつある、ここで諦める手はないだろう。

 ガキンッという金属音を鳴らしてスケルトンナイトの盾が宙に舞う。

 渾身のメイスの打撃を受け続け、遂に盾を手放したスケルトンナイト。盾を持っていた手は変な方向に曲がっており、度重なるメイスの威力に耐えきれなくなったようだった。

 よぉぅし、チャーンス!

 ここぞとばかりに防御の薄くなったスケルトンナイトに連撃を放つ俺。

 俺の粘り勝ちだ……ついそんな言葉が頭を過った。

 倒す前にそんな事を思っちゃ駄目だよな、そう油断だよ。

 気付くとメイスを持つ手の肘から先が無くなっていた。

 スケルトンナイトの剣が下から振り上げられ、俺の腕をメイスごと切り落としたのだ。

 慢心してスケルトンナイトの最後の抵抗に対し、対応が遅れた結果がこれだ。

 とは言えここで諦める訳にはいかない。

 俺は残った手に装備していた盾を投げつけ、念の為に装備していた剣を抜いて奴に切り付ける。

 スケルトンナイトは振り上げた剣を俺の頭めがけて振り下ろそうとしていた。

 間一髪、俺の剣が先にスケルトンナイトの頭を真っ二つにして、奴の動きはようやく止まった。

 ……やっばかったぁああああ!

 もう一瞬遅ければスケルトンナイトの剣が先に俺の頭を直撃していたかもしれない。そうしたら今そこに倒れているのはスケルトンナイトではなく、俺だっただろう。

 猛省しつつ、取れた手を傷口に押し当てる。

 お、やっぱりくっ付いたな、流石はゾンビ。

 俺は手をグー、パーと閉じたり開いたりして動きを確かめる。

 ハイゾンビの時より早くくっ付くな、いい事だ。


 もう動かないだろうなと、ビクビクしながら倒したスケルトンナイトを尻目に部屋の奥に進む。

 奥には……ヒャッホウ、宝箱じゃん! やったね。

 俺は宝箱に近付き、そっと手をかけようとした。

 待て俺、このパターンって罠とかあるんじゃないのか?

 いや、でも俺ゾンビだし、毒矢とか毒ガスが出て来ても大丈夫なんじゃないか……でもなぁ。ゾンビとかでも倒される罠だったら嫌だし。

 用心しつつスケルトンソルジャーの一体が持っていた長い槍を使い、そっと宝箱の蓋を持ち上げてみた。

 ……。

 ……大丈夫っぽいな。

 罠は無かったようだ。

 宝箱の中には鞘に収まった立派な剣があった。

 おおおっ、今まで錆びて刃も碌にないような剣を使っていた俺にとってはありがたい武器だ。

 手に取り抜いてみると、美しい刀身が目の前に映る。

 聖剣とか魔剣とかではないが、かなりの業物だろうと思う。

 そもそも聖剣だったら持てないだろうけどな、ゾンビだし。

 そして宝箱のさらに奥には下に続く階段が……。

 あ~、ゲームであったなこういうの。ボス部屋の主を倒したら階段があって上がったり下がったりするってのが……。

 え、まさかここってダンジョンなのか?

 分からん、分からんがそれっぽい造りだよな。

 この部屋以外は全て回ったので、隠し扉とかで隠されてない限りは道はここしかないと思う。

 行くしかないか。

 俺は新たに手に入れた剣を片手に階段を降りて行ったのだった。

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