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26・イキリ序列将

 十人の挑戦者達は誰が俺と最初に戦うか揉めている。

 おいおい、順番を決めてなかったのかよ。


「誰でもいいじゃねぇか、どうせ直ぐに終わるんだ。その後でお前等で序列十位を決めればいいだけだろ。ふん、俺はその間、人間をぶち殺して暇潰しでもすっかな」


 何かとんでもない事を呟きながら、集まった村人に近付いて行く序列七位のゴンザレス。

 慌てて逃げ出す村人達。その中の一人が腰を抜かして動けなくなっていた。その村人に大きく振りかぶり拳を叩きつけるゴンザレス。

 しかしその拳は村人に届くことはなかった。


「あ~ん? お前の相手は俺じゃねぇだろ序列十位」


 ゴンザレスの拳は村人の前に立った俺の手の平に受け止められていたからだ。


「だから村人に手を出すな。馬鹿なのか?」


 俺がそう言うと舐めた顔から怒りの形相に一瞬で変わる。


「何だとてめぇ! ……くっくっく、そうだ、そうだよ。俺がこいつをぶっ殺すからよ、お前等十人の中で戦って勝った奴がこいつを倒したことにしろ。いいよな兄貴?」

「ふん、まぁ結果は同じだしな。好きにしろ」


 ゴンザレスが奴等の中で一番位の高いロダンに許可を求め、それを認めるロダン。

 三人の序列将の後ろにいる、俺に挑むはずだった十人は何も言わずにただニヤニヤ笑いながら頷いている。

 こいつ等皆、次の序列十位は自分だと思っているのかな? その自信は何処から来るのやら。

 しかしロダンの奴が結果は同じだって言ったぞ……俺、倒されるのが前提なんだな。

 ……確かに此奴らは俺よりもレベルが高い。え、何で分かるかって? いやだって今俺は、例の鑑定の眼鏡をかけているからな。視界に情報が入ってきて少々見にくいが、外見はちょっと知的に見えるだろ? え。そうでもない? 煩いよ!

 ちなみにアリスの上位鑑定程の性能はないが、残念がることはない。この眼鏡が普通の鑑定であってアリスの上位鑑定がチート級なだけなのだ。

 この眼鏡はグレーターゾンビの時に出会ったメリアの形見みたいな物だし、壊れないように外して収納バックに入れておこう。

 ちなみに此奴らのレベルだが、ロダンはレベル38、ハルクは34、序列の一つ下のゴンザレスもハルクと同じ34だった。レベルが同じでも強さも同じとは限らないしな。

 レベルは目安みたいなものだし、種族や職で強さにはバラつきが結構ある。ステータスも違うからな。そうじゃなきゃグスタブよりレベルの低かった俺が奴に勝てた訳がない。

 俺が思うにレベルはその種族や職の成長の度合いを示しているのではないかと思う。

 あくまで俺の予想なのだが。

 参考までに今の俺のレベルは30ある。

今日まで序列十位をかけて俺に挑んできた奴等は数も多かったが、レベルもそれなりにあったしな。今俺が序列十位のままここにいるって事は当然全員倒してきた訳だ。

 今回俺に挑戦する予定だった十人も、俺と同じレベル30前後くらいだった。

 ……そう言えばレベル30になっても進化は無かったな。同じレベルで二回ずつ進化があったし、次がもしあるとしたらレベル40か。

 レベル40の大台は冥将のアリスとかがいる世界のレベルだ。進化が可能なレベルの高さを考えると次の進化は難しいかな。


「何を余所見してやがる、ヒャッハー!」


 ゴンザレスが拳を握りパンチを打ち出す。

 む、意外と早いな。俺はそれを落ち着いて躱すが、奴は連続で蹴りも織り交ぜながら追撃を仕掛けてきた。

 無論当たってやる気はないので全て躱すが。

 しかし此奴は武器を使わないのか? いや単に格闘タイプの戦闘スタイルなんだろう。

 

「知ってるぜぇ~序列十位、お前のレベルは30程度で種族はゾンビ。その姿からして変異種のようだが所詮は弱小のゾンビ。俺に勝てる道理がねぇ!」

「……つまり調べたって事か。ストーカーかよ、嫌らしい」

「ば、馬鹿野郎、んな訳ねぇだろう! アリスが言ってたんだよ!」


 アリスお前かよ!

 しかし中身は別として女の外観の俺に向って野郎とは、何処見て言ってやがんだ。まぁいいけどさ。


「ふん、中々やるじゃねぇか、少しばかし本気を出してやるぜ!」


 奴はそう言うと本当にギアが一段上がったようで、攻撃速度が明らかに上がった。

 流石は序列七位、完全に回避するのは難しい。

 何とか受け流せる攻撃は受け流し、ガードせねばならない所はガードを固める。

 有効打を与えられないゴンザレスが苛立ちの表情を浮かべる。


「くそっくそっ、な、何故だ、 あ、当たらねぇ!」


 大丈夫だ、たまにちゃんと当たっているぞ。ガードしているからダメージは殆どないけど。


「少しばかりじゃなくて、ちゃんと本気出した方がいいんじゃないのか?」


 ちょっと煽った俺に対し、もっとムキになってくるかと思ったが、意外にもゴンザレスは一旦距離を取る為に間合いの外へ下がった。


「ふん、今更後悔しても遅いからな、はあああああっ!」


 気合と共にゴンザレスが一気に間合いを詰める。


「食らいやがれ、ハイパーインパクト!」


 漫画やアニメである様な必殺技を叫びながら超高速で拳を突き出してくるゴンザレス。

 冒険者時代に、この技を何度か見た事がある。

 ゴンザレスの放った技は格闘スキルを保持している者が習得可能な、まごうことなき必殺技だ。

 格闘主体と言っても、手にはナックルのような武器を装備している。

 つまりこれも武器技という事だ。

 くそっ、いいな。俺は戦闘系のスキルを持ってないから、羨ましい。

 武器技のヤバさは身に染みている。

 実は先程まではゴンザレスに合わせて素手で相手をしていたのだが、間合いを取ったゴンザレスに嫌な予感を感じて、俺も腰から剣を抜いて攻撃に備えていた。

 発動した技の速度が一気に上がり、目にも止まらぬ速度で襲い掛かってくる。


「チッ!」


 とても避けることのできないスピードだ。剣の鍔の辺りの丈夫な場所で何とか受けるが、盛大に吹っ飛ばされた。

 とは言え、着地にはちゃんと成功したし、不格好に転がるなんて事にはならなかった。

 でも受けた剣が壊れるかと思ったぞ。手も少し痺れてる? 流石は序列将、弱い筈はないな。


「くっ、防がれただと?!」


 自信の一撃だったのか、武器技を防御されて驚きに目を見開くゴンザレス。

 こんな攻撃を何度もされたら敵わないが、必殺技でもある武器技は何度も使用はできない筈だ。

 一撃必殺の奥の手を防がれて引き下がるような男ではないようで、しつこく攻撃を仕掛けてくるが、技の切れが明らかに落ちてきている。


「どうした、まさか疲れたのか?」

「はぁはぁ、う、うるせえぇ! そんなわきゃねぇだろ!」


 暫く早い動きの攻撃が続いていたが次第に速度が落ち始め、遂には最初の手を抜いているスピードより遅くなってしまった。ハァハァゼイゼイ肩で息をしている。


「何時まで準備運動してるんだ? 早く本気を出せよ、出さないならこっちから行くぞ?」


 武器技まで出したんだ、とっくに本気にはなっていると思うが、敢えてそう挑発してみた。 

 いやだって、こいつは散々偉そうな口をきいていたし村人も殺したしな。こんな奴を少しくらい馬鹿にしたって罰は当たらないだろう?


「おいお前、剣をよこせ!」


 俺に向かってではない。俺に挑戦するつもりだった十人の中の一人にゴンザレスはそう命令した。

 声をかけられた男は一瞬驚いたようだが、渋々剣を手渡した。


「舐めやがって、ぶっ殺してやる!」


 剣も使えるなら最初から用意しとけばいいのに。

 俺も短剣を構え直す。

 長年愛用していた、死者の迷宮で手に入れた剣はグスタブとの戦闘で折れてしまったしな。あの強力な聖剣が使えたらいいんだが、あれは握ると手が火傷したようになるんだよな。進化して変異種となってもやはりゾンビはゾンビ、聖なる武器とは相性が悪いのだろう。

 そもそも聖剣は城にあって今手元にはない。アリスが管理している事になっているから勝手に持ち出せないしな。

 俺が持っている短剣は悪いものではないが、業物という訳でもない。一般に支給されている短剣である。さっきの一撃でよく壊れなかったものだ。

 曲がりなりにも序列十位なのだからいい剣を持てって? いや持ちたいけどこれ以上の武器が欲しいなら、自分で調達しろと言われたのだ。けちくさい軍である。

 おっとそんな事より今は戦闘中だ、集中集中。

 ゴンザレスの振るう剣筋は疲れている為か、それとも剣はあまり得意ではなかったのか、お世辞にも上手いとは言えないものだった。

 俺は首を傾げる。

 やれやれ、何をしたいんだ、こいつは?

 いや分かってるよ俺を倒したいのは、でもそんな技量で俺を倒せるわけがないだろう? まだ先程の格闘の方がマシだ。自分でわかっているのだろうか? 確かに剣の分だけリーチは長くなったけどな。

 俺は切りかかる剣を受け流し隙のできた奴の身体に剣を滑り込ませる。

 序列七位だけあって反射神経の良いゴンザレスだ、俺の剣を受け流そうとするが格闘の時とは勝手が違うらしく反応が遅れた。

 格闘時に手に付けていた金属製のナックルを付けたままだったので剣を上手く扱えなかったのもあったのだろう。


「あがっ?!」


 俺の剣はゴンザレスの剣をすり抜け奴の身体に到達し、そのまま奴の身体を引き裂いた。


「……何で俺が……倒れて……い……る……」


 身体が真っ二つになって地面に転がっているのを理解せぬまま、ゴンザレスは息を引き取った。

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