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107・合同訓練の為に獣王国へ来てみると、獣王がリア充だった件(2)

 永遠の森での合同訓練を開始して三日が過ぎた。

 最初は森の浅い所で慣らして、徐々に森の深い所へ潜っていく。

 アンはこちらの陣営なのにも関わらず、相変わらず獣王の所へ行って奴にベッタリだ。

 シーナとか言う獣人の女性と獣王をめぐってバチバチと対抗意識を燃やしていた。

 しかもシーナとかいう獣人女性は虎の獣人で、あの八獣士配下、第七部隊の隊長リアの姉なんだそうだ。


「我が姉の事を棚に上げて言うのも何なんっすけど……シーナさんも剛の者っすよね~」

「ああ、同感だ。まさか俺様のねぇちゃんと同じ趣味の奴がいたとは驚きだぜ……」


 獣王のリア充っぷりを砂を吐きながら見ているロロとリア。

 お互いに同じように思う所があるみたいだな。しかしいつの間にそんなに仲良くなったんだ、お前達。

 リアの方は同じ境遇のロロとは争う気は無かったようだが、別の奴と揉めているんだけどな。主にうちの面白い狼獣人の男と。


 永遠の森での合同訓練という名の討伐が行なわれていく。

 まぁ実際にお互いの部隊同士で模擬戦もしているが、それ以外は隊を率いて森の魔物と戦い、隊の練度を上げる為に森の奥深くまで足を踏み入れていた。


「かっかっかっ、オラオラ、そんなもんか獣王の兵士はよぅ!」

「ああ? 何だとてめぇ! 上等だ。余裕過ぎて手を抜いてただけだボケェ! 本気で行くぜ、ついてこれるものならついて来やがれ!」


 アインとリアの部隊がお互いをライバル視して永遠の森の魔物を狩っていく。

 あの二部隊がヒートアップし過ぎて、他の参加部隊はちょっと引いている。物理的にも気持ち的にも。


 白熱しすぎて予定してたラインを越して森の奥に突っ込んで行くアイン隊とリア隊。


「あいつ等の様な奴等がいるから訓練が必要なのだ。なぁ冥王」


 司令官らしい立派な言葉を吐いている獣王だが、美女二名をはべらかす姿を見たら、威厳も何もあったものではない。

 そもそも規律で見れば褒められたものじゃないぞ獣王。


「そうだな。お仕置き……厳罰が必要だな、あれは」


 獣王の様子をスルーして、そう答える俺。

 ……立派な台詞も美女とイチャイチャしながら言っても説得力はないよなぁ。


 森の奥に進撃して行くと、案の定かなり強い魔物が現れ二部隊に襲い掛かる。

 それでもこの二部隊、合同で参加した部隊の中でも上位の部隊なので、苦戦しながらも魔物を薙ぎ倒していく。


「ふん、やるじゃねか!」

「おめぇもな!」


 競い合うのは悪い事ではないが暴走しすぎだ。アインとリアはいいが部隊の兵士の方は限界そうだ。

 こりゃ隊を預かる隊長としても、鍛え直さないといけないな……と考えていたところ、二部隊の正面から巨大な何かが現れた。


「むっ、いかんな」


 獣王がそう呟く。

 熱くなりすぎて突出し過ぎたアインとリアの部隊に、巨大な魔物が襲い掛かって来た。


「あれは……地竜か?」

「ああ、だが只の地竜ではないな。かなりレベルが高い、あのまま成長すればいずれ上位竜である土龍に進化しそうな個体だ」


 竜の上位である龍に進化したらちょっと面倒な事になる。

 この世界で最強の竜種である古龍種に、最下層ではあるが仲間入りしてしまう程だ。

 ちなみに四王の一角である竜王は、竜でありながら上位である龍と同格以上の強さがあるという。

 まぁそうなると、当然竜王と同格である俺と獣王も土龍になる前の地竜程度なら何とかなる筈だ。


「うおおおっ、マジでやべぇ! 撤退だ。このアイン様が殿をやる!」

「ちっ、俺様が竜を引き付ける、その間に下がれ!」


 ほぼ同時に撤退を指揮するアインとリア。


「さて、どうするかね冥王?」

「……命の危機があるくらいの試練を乗り越えれば強くはなるが……死んでは本末転倒だよな」

「同感だ。やれやれ」


 腰の剣に手をかけた獣王を見てアンとシーナが獣王から離れて頭を下げる。


「「お気をつけて獣王様」」


 揃って同じ言葉で送り出す美女二名。ハモった言葉にお互い睨み合うアンとシーナ。君達、男の趣味だけじゃなく、息もぴったりじゃないか。


「冥王様、いてら~」


 俺の横に控えていたロロが俺に声をかける。

 ……お前はもう少しちゃんと送り出せないのか、はぁ。


 部下を撤退させたアインとリアに地竜の攻撃が襲い掛かっていた。


「ぐはっ、おのれ、トカゲ風情が……ぐぁはっ!」


 強気の台詞の割にやられ放題のアイン。


「ぐっ、あっやばっ!」


 地竜の足が傷を負って動けないリアを襲う。


「おい、馬鹿避けろ!」


 アインが手を伸ばすが明らかに遠く、間に合いそうにない。仮に間に合ってもアインも踏み潰されてしまうだろう。


「っつ!」


 地竜の巨大で重い足が踏み下ろされるが、それがリアに届く事はなかった。


「あ、あれ……俺様生きてる?」

「そうだな。良かったな、生きていて」


 結界に守られたリアが呟いた独り言に俺が答えてやると、驚いた顔で俺を見上げるリア。


「かっかっかっ、流石冥王様だ、どうだ驚いたか!」


 なんでアインがドヤ顔で自慢しているんだよ。まぁいいけど。


「お、お前……何で……」

「部下を逃がす為に頑張ったな……だが、予定していたラインを超えて森の奥に進むのは感心しないな」

「……そ、それは……すまなかったよ」


 おっ、意外だ。素直に謝れるじゃないか。

 屈みこんでいるリアの頭をヨシヨシと撫でる。おおっ流石獣人、モフモフだ。

 よし、その素直さとモフモフに免じ回復魔法エクストラヒールをかけてやろう。


「頭を触るな……え、傷が……」

「痛みはないか?」

「あ、ああ……うん」


 アインは無事に安全圏外まで下がったし、リアも俺が守ったのでもう大丈夫だろう。後は……。


「自分が相手をする」


 獣王があっという間に地竜の前に躍り出る。

 地竜は威嚇の為に口を大きく開いたが、そのまま動きを止めてしまった。

 獣王の持っていた片手剣が地竜をたった一太刀で仕留めたのだ。


「パネェ……」


 アインが口を開けたままそう呟いた。


「やっぱ獣王様は凄ぇや……」


 リアも獣王の姿に見入ってそう呟いていた。


 さて、結構怪我人も出たな。仕方がない。


「エリアヒール」


 魔力マシマシのエリアヒールは部隊全体を包み、怪我人を癒していく。

 傷の深い者にはエクストラヒールをかけ、身体を欠損した者にはリカバーをかける。

 ……アルティメイトゾンビとしてレベルが上がったら、ちゃんとリカバーの魔法も覚えた俺だった。神聖魔法特性は進化してもちゃんと受け継がれていたのだった。


「おおっ……獣王様も凄いが、別の意味であんたも凄いな冥王……様」


 少し照れた顔でそう俺に話しかけるリア。


「おおっデレたっすね」

「ん……意味が分かんないんだけど?」


 ロロ、いい加減な事を言うな。そしてその言葉を理解しなくてもいいぞリア。


「ふむ、気合を入れて行ったのに不完全燃焼だな……ちょっと付き合え冥王」

「ええ~」


 嫌そうな顔をする俺を、誰もいない広い場所まで引きずって行く獣王。


「なに、ちょっとした運動だ。自分につき合えるのはこの場では貴様しかいないからな」

「せっかく治した兵をまた怪我させるのもな……そもそも獣王の相手をしたら兵が全滅するか。仕方がない」


 俺は収納鞄からブラックロウを取り出す。


「おいおい、あいつ……冥王……様大丈夫かよ?」


 意外にもリアが俺の事を心配してくれているようだ。


「あっはっはっ、へーきなんじゃないっすか」


 ロロ、お前はもっと俺の心配をしろ。


「かっかっかっ、冥王様が獣王如きに遅れを取る訳がないだろう!」

「な、何ぃ~! いくら冥王……様が強くても獣王様にかなう訳……」


 リアの話の途中で俺と獣王との模擬戦が始まる。

 獣王の愛剣とブラックロウが衝突したカン高い金属音を皮切りに、激しい攻防が繰り広げられた。

 まぁ俺と獣王にしたら四王会議でいつもやってる模擬戦なんだけどな。

 始めて見た奴等にはかなり衝撃的に見えたようで、誰も一言も発しないで俺と獣王との戦闘を凝視していた。


「ふむ、純粋に剣技だけの戦いとなると冥王と剣を交えるのが一番楽しいな」

「俺、戦闘を楽しむ趣味なんてないんだけどな」

「はははっ、冗談はその容姿だけにしたまえ冥王」

「その言葉、そっくり貴方に返しますよ獣王」


 ああ、本当にガチ筋肉質の大男がうさ耳なんてツッコミ所しかないじゃないか。


 獣王との模擬戦以降、獣王国軍の参加部隊の中で俺を馬鹿にする者は誰もいなくなった。

 それどころか獣王と同じくらいに畏怖されている気がするなぁ。俺、怖くないよ?

 一番態度が変わった奴というのが……。


「冥王様、俺様……じゃなかった私と手合わせをしてくれませんか」


 虎の獣人リアに妙に懐かれていた。


「冥王様の手を煩わせるまでもねぇ、このアイン様が相手をしてやらぁ!」

「てめぇはすっこんでろ! 俺様……私は冥王様と話をしてんだよ! あっち行ってやがれ、このクソ狼が!」

「ああん? なんだとこの馬鹿虎ぁ!」


 合同訓練も終盤になるとお互いの軍同士、随分と仲良くなったものだな。


「あれは仲が良いって言うんすっかねぇ~」


 ロロがそう言うが、そういう事にしておけ。


 さて、訓練が終わるとアンがとんでもない事を言いだした。

 まぁ予想はしていたが……。


「冥王様。私は獣王様の下へ行きます」


 「行きたいと思います」とか、「行かせて下さい」じゃなくて、「行きます」と言い切ったぞ、こいつ。

 でもこいつ冥王軍の上位幹部だしなぁ。


「アリス様からは了承を得ています。同時にアリス様に魔法で冥王国の最重要機密等は既に記憶から削除していただいておりますので、ご安心を」


 ア~リ~ス~。


「ロロ、後はこのおチビ……ゴホン、冥王様の事は頼みましたよ」

「はぁ~、やれやれ仕方がないっすねぇ」


 アンは獣王が受け入れるかどうかも分からないのに、よくそこまで準備をしてきたよな。

 後にロロに聞いた話によると、アンは何故かこう言う事には失敗しないタイプで、獣王が自分を受け入れてくれることを確信していたという。

 ロロ曰く「お姉ぇちゃんの根拠のない自信は何故か裏切られる事が殆ど無いっす。身内ながら恐ろしい人っす」だそうだ。

 俺がアンに対し立場が上なのに下手に出ていたのは、本能的に逆らっちゃいけないと感じていたのかもな。流石俺。

 獣王の方はと言うと来る者拒まずの精神らしく、むしろウェルカムの態度だ。むしろ美女に言い寄られて上機嫌だった。

 お前そんなだと、いずれハニートラップにかかって痛い目にあうぞ。

 ……え、既に何度もかかっている? 懲りない奴だな!


 まぁアンがあちらに行った代わりに、何故か虎の女獣人が俺の下へ来る事になったのだが……交換って事でいいのか? トレード? まぁ、ものは言いようだな。


「冥王様、不束者ですがよろしくお願いします!」

「ああ、よろしく頼む。期待しているぞリア」

「はい!」


 うむ、すっかり素直になって俺は嬉しいぞ。

 武官、文官両方の能力を持っていたアンを失うのは痛いが、武力だけならリアも十分に高い能力があるし、部隊を率いる統率力も高そうだ。

 まぁ冥王国はこれから戦争になる獣王国と違って、戦闘で活躍する機会は少ないだろうけど。


 そういや各冥将に有能配下を振り分けているので、俺の近衛隊が手薄なんだよな。リアには俺の近衛隊で働いてもらう事にするか。


「えっ本当ですか! 嬉しいです、頑張ります!」


 リアに伝えた所、破顔一笑して喜んでいた。

 何故かアインが対抗意識を燃やして「このアイン様が冥王様を守ってやるぜ!」とほざいていたが、当然却下した。

 アイン、お前はマーヤにもっとしごかれた方がいいぞ。


「あ~、お姉ぇちゃんが居なくなったら、仕事が増えるんすけどねぇ~。まぁ現冥王様になってから人員が増えて楽にはなったっすけど……はぁ」

「ロナウドに頼んで良い人材引っ張ってくるから、それまで頑張れ」


 青の冥将のロナウドは俺と始めて会った時に、人種を問わず優秀な者を雇うべきと進言した男だ。

 ロナウドなら直ぐにでも手を回してくれるだろう。アンは優秀だったし彼女の抜けた穴は大きいからな。


「マジっすか! これだから冥王様って好きなんっすよね!」


 全く現金なロロであった。

 お前が好きなのは俺ではなくて、扱い易い上官なんだろ、な?


 ロナウドは俺に進言した通りに種族を選ばず、有能な者を冥王軍に引き入れている。実に有言実行な男である。

 ……種族を選ばずで思い出したが、獣王国を離れる際に獣王を迎えに永遠の森まで来た親衛隊の者達の姿が、脳裏に蘇って来た。

 様々な獣人種の美女が数十名、獣王を迎えに来たのだ……しかも皆揃いも揃ってナイスバディでしかも体のラインがまる分りの薄着だ。

 何それ、どんなエロゲーって感じである。

 恐る恐るアンの様子を窺ってみると、不敵にニヤリと笑っていた。

 どうやら彼女達に対抗意識を燃やしているようだ。負けず嫌いと言うか、逞しい奴である。

 そんな獣王達に見送られ、冥王国への帰路につく俺達。

 美女達の中心で俺達を見送る獣王に爽やかな笑顔で別れを告げる俺だが、心の中では全く別の感情が渦巻いていたのだった。

 ……リア充め、爆発しろ!

読んで下さりありがとうございます。

完結した筈なのに連載のように投稿を続けてしまって、混乱させてしまっているようです。

指摘されてみれば確かに終わった話をいつまでも続けているのはよろしくないですよね……反省。

執筆中の話は急がずに出来上がったら投稿する形にさせてもらおうと思います。

恐らく来月中(今年中ともいう)に投稿できるかと思います。



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[一言] ハーレムの他の人物を蹴散らして次の四王会議までに獣王を女性不信にさせてたりしたら笑う
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