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103・四王会議(1)

ここから本編後のお話です。

不定期更新になります。

 ダン達と冒険を再開して一年、色々な場所を回ったが今現在俺達は死者の迷宮に来ていた。

 ダン達が冒険者の最高峰プラチナランクに手が届きそうになった為、レベル上げの為に迷宮に来ていたのだ。

 ついでにアルにダン達の武具を作ってもらった。結果ちょっと武器が強すぎて過剰気味だが、その内に武器に見合った強さを身に付けるだろう。

 ダン以外の三人が少々泣き言を溢すようになったので、ここらで一旦レベル上げは終了しようかと話していた時だ。


「おおいセシリィ! 大変だ冥王城に来てくれ!」


 迷宮にあるアルの元研究室で休んでいた俺達の所に大慌てで乗り込んで来たアリス。

 アリスは金の鍵を所持していない為、迷宮の30階層にある転移の魔法陣は使えない。

 どうやらアルの作った転移の魔道具でここまで来たようだ。

 お一人様限定で転移範囲も狭く、冥王国内の決まった場所にしか飛べないものではあるが、中々便利な魔道具だ。アルは相変わらずいい仕事をするなぁ。

 いずれは転移範囲を広げたり転移人数も増やせるようにと、改良を続けてもらっている。。


 ダン達に気付いたアリスがコホンと咳ばらいをして……。


「冥王様、急ぎお伝えしたい事があります。至急城までお戻り下さい」


 と言い直した。

 ダン達は口を開け唖然としていた。

 アリスとダン達はかなり前に一度だけ、俺がアリスと最初に会った時に一緒に魔の森で会ったきりだしな。彼女に驚くのも無理はない。


「え……冥王様って?」

「あれ言ってなかったか? 俺冥王になったんだ。今は長い休暇中なんだよ」

「「「「ええええええっ?!」」」」


 あ~、唖然としてたのはそっちの方か。マジで言うの忘れてた。

 ダン、キース、リッカ、ハンナの声が揃って部屋に響き渡った。


「冥王国で内戦が起こり、冥王が代替わりしたとは聞いていたけど……」

「ああ、その新冥王はアルグレイド王国の停戦を受け入れたと聞く。まさかその新たな冥王がセシリィ殿とは……」


 驚いたのか呆れたのか分からない顔をして、ダンとキースが溜息まじりでそう語る。


「じゃ、じゃあ私達は敵の総大将と一年も楽しく旅をしていたの?」

「あははっ、それだけじゃないわ。レベル上げにも付き合ってもらったわよ!」


 顔を引きつらせながらリッカとハンナもそう言葉を口にする。

 ダン達四人が「でもセシリィだからなぁ、何でもアリか」と何故か納得したように頷くのを俺は不本意に思いながら、ダン達を占領地の町に送る。ダン達の事はクレアに任せて冥王城に戻った俺。

 ちなみに赤の冥将の城と新冥王城とはアルが転移装置を設置してくれたので、一瞬で移動が可能だ。

 ここの転移装置は城と城間のみの一ルートだけなのだが、人数は十人程飛べる優れものである。場所的に魔素が豊富で転送の魔法陣も城内なので大きなものが使える為、ハンディタイプの転移装置よりは簡単に設置できたそうだ。

 まぁそれはともかく、真新しい冥王城の玉座に座った俺に跪いて報告を上げるアリス。

 気持ちは玉座に座るのがアリスで跪くのが俺のイメージだが、今の俺の立場が冥王でアリスが冥将なので仕方がない。

 何が言いたいのかと言うと落ち着かない。玉座って柄じゃないんだよ!


「冥王様……四王会議の招集がかかっています」

「……マジか?」

「マジだ」


 驚いて地が出た俺。アリスも地で返す。

 堅苦しいのはやっぱり合わん。空気を察したアリスもいつもの調子で話す事にした様だ。


「あれじゃないのか? 代替わりしたのに挨拶もないってやつ」


 アリスがそう言葉を発した。


「え、そんなの必要なのか? ……必要か」

「私もこういうのはゴタゴタが落ち着くまでないと思っていたんだけどな、招集があるとしても二~三年は後かと考えていた」


 よくよく考えてみたら、前冥王のプロキオンは冥王国が俺のせいで大変な時に、無理矢理四王会議に連行されたらしいからな。

 こちらの都合もきかずに無茶を通す奴らだ、代替わりして二年で呼び出しならまだ余裕を見てくれた方かもしれない。

 とは言え行くの嫌だな~。行かないでいる方法ないかなぁ。

 俺の考えを読んだのか、アリスが溜息をついて俺に注意をする。


「行かないと、無理矢理連れ出しに来るぞ。大人しく会議に参加した方が身のためだ。ちなみに他の三王は前冥王より強い者ばかりだからな」

「お、おぅ……」


 思わす天を仰ぐとはこの事だ。

 上を向いても天井しか見えないけどな。


 <>


 俺達が住む広大な大陸の中心にそれはあった。

 移動速度が非常に早いダライアのような動物系のアンデッドに乗って行っても、十数日はかかると聞いて嫌になっていた上に、道中は道さえない所が殆どだ。

 さてどうするかと悩んでいたら、なんと竜が飛んできた。

 どうもその飛竜は竜王の配下竜らしい。俺達を会議場ならぬ会議城に送ってくれるそうだ。

 俺達と言うのは俺の外に付き添いが付くからだ。会議には王と従者として側近が参加するのが習わしらしい。


 高速で空を移動する飛竜に乗っても、たっぷり数時間かかる場所に会議場……城はあった。

 移動だけでぐったりである。まぁ疲れている主な原因は、これから行なわれる四王会議の事を考えていたからなのだが。


「私も会議は初めてだ。いつもアルデバランが冥王について行っていたからな。前回はアルデバランがいなかったから、近衛兵の誰かを連れて行ったみたいだけど」


 アリスが緊張した面持ちでそう話す。


「転移の魔法陣とかないのか? わざわざ飛竜に乗ってくる必要なくない?」


 俺が文句を垂らすとアリスが肩を竦めて返事を返す。


「転移阻害の結界が張られているらしいぞ。しかもかなりの広範囲にだ。昔から転移魔法を使わずに来るのが習わしらしい。今の竜王が気を利かせて飛竜を迎えに行かせているそうだ」

「……ありがたいような、ありがたくないような……」

「……だな」


 そんな会話をしながら案内をしてくれたエルフの女性に部屋に通される。

 エルフかぁ、誰かの配下なんだろうけど、今はそれを気にしている場合ではない。

 部屋に入るとそこは天井が高く、とんでもなく広い場所だった。

 部屋の中央に席があり、そこに既に三名の大男が座っていた。


「俺を待たすとはいい度胸だな、新たな冥王」


 椅子の肘掛けに手を置き、拳部分を顔に当てていた全身黒ずくめの青年がギロリと俺を睨んでそう言い放った。


「そう言うな魔王。冥王は初めての会議だ、大目に見ようではないか」


 それを諫めたのが筋肉質の壮年から中年に見える大男。眼帯をしておりオールバックのナイスミドルだが、その頭の上に生える兎の耳が実にアンバランスだ。


「獣王のいう通りじゃ、ほれ可愛い奴らではないか。前の骸骨コンビよりはよっぽど華やかでいいと儂は思うぞ」


 そう言って俺達の肩を持ってくれた白髪に白い髭の爺さん。頭に細い角があり背中には翼が生えている。年の割に筋肉質でよく見ると鱗の様なものがある。


「チッ、エロ爺が。竜王は甘いんだよ」


 むぅ、竜王が飛竜を出してくれなかったら何時着くのか分からなかったな。そもそもここまで来れる気がしない。

 俺は各王が座るテーブルに近付き、頭を下げる。

 本当は王と言う同等の立場だが、前冥王のプロキオンより強いって話だしな。舐められるが下手に出る事にした。まぁ俺の性格的に偉そうにする事ができないって事もあるが。

 少なくとも魔王以外は友好的な感じだし、大丈夫だと思いたい。


「遅れて申し訳ございません。新たな冥王となりましたセシリィと申します」


 顔を上げ竜王の爺さんに再度会釈をしながら礼を言うことにする。


「竜王様、飛竜の手配ありがとうございました。お陰で無事にここまで来れました」


 そう言ってニコッと微笑む俺。

 お礼は大事だ。あと怖いので敵になりたくないです、はい。


「お、おおおっ。聞いたか魔王。いい娘じゃのう。前の冥王とはえらい違いじゃ!」

「ふむ、礼を重んじるのは好感が持てるな。なぁ魔王」


 どうやら竜王と獣王は敵対するような事はないようだ。良かった。


「ふん、まぁ生意気じゃないだけマシか」

「そうは言っても魔王、お主も初めてここに来た時は緊張でガチガチだったではないか。今の冥王の方が緊張してないだけ何倍もマシじゃぞ?」

「てめこの、余計な事言うんじゃねぇ爺!」


 ほぅ、そうなのか。

 しかし見た目通りに竜王が一番年上なのかな。分からんけど。


「まぁ落ち着け。ではそろそろ会議を始めようではないか。冥王、席に着くがいい」


 丸いテーブルに四人の王が座る。

 そして各王の後ろには従者が一人ずつ控えている。

 竜王の後ろにはやはり筋肉質の表情を崩さない中年の大男。竜王と同じ様に角と翼があるので竜人なんだろう。

 獣王の後ろには獣王を一回りだけ小さくしたやはり筋肉質の男。獣王と違うのは兎の耳じゃなくて猫の耳ってところだ……笑っちゃいけない、いけないのだ。

 魔王の後ろには耳の長い褐色の女性。背が高く鍛えられた身体をしている。魔王も見た感じ体格が良さそうだし、この中では俺とアリスが凄く弱そうに見える。

 いや多分王同士、従者同士だと一番弱いんだろうけど。


「本日はどうするかね」

「冥王は初めてだから草原ステージでいいんじゃないか」

「そうだな。そこが一番妥当だな。いいか冥王?」


 獣王が確認を求めてくる。

 一体何の確認だ?


「は、はぁ」


 なので曖昧な返事を返したら、どうもYesと判断されたらしい。


「では、ゲームスタートじゃ!」


 竜王がそう言うとテーブルが光り、次の瞬間俺は、いや俺達王四名は草の生い茂る広い大地に居た。


 突然の事で呆けていた俺に大剣が襲いかかる。

 咄嗟に避けたが、突然の事だったので地面に転がってしまった。


「ほう、避けやがったか、ボンクラではない様だな。躱されるとは思わなかったぜ!」


 魔王が大剣片手に襲い掛かってきやがったのだ。

 慌てて立ち上がり、収納鞄からブラックロウを取り出し再度攻撃を仕掛けてきた魔王の剣を受ける。ガラ空きになった奴の腹部に蹴りを入れて、その反動で魔王から離れる事ができた。


「ぐっ、こいつ見た目に反してやりやがる。そうじゃなくちゃな!」


 何だか分からないがやられっぱなしの訳にはいかない。

 俺が魔王に向って剣を構えた所で、魔王の背後に片手剣を持った獣王が襲いかかった。

 魔王はそれを受け流し俺と獣王との間合いを取る。

 獣王が助けてくれたのか? そう思ったのだが、そうではなかった。

 獣王は俺に向かって突きを放つ。流石獣の王、凄ぇ速さだ。なんとか避けきったが、もう一度避けろと言われても難しいかもしれない。


「ほほぅやりおるな。今回の冥王は接近戦が得意なようだ」


 嬉しそうに獣王がニヤリと笑う。

 視界の角でいつの間にか魔王を大槍で吹き飛ばしている竜王の姿が映る。

 竜王は一瞬で目の前に現れ、獣王に槍を横薙ぎに振り抜く。獣王は片手剣を盾にしていたが威力を殺しきれずにかなり遠くへ弾き飛ばされた。

 竜王はそのまま槍を回転させ俺に武器を振るう。

 それをなんとか躱し、空いた横腹に一撃を入れるが、固い音を響かせて鎧の様な鱗に弾かれてしまった。


「おおっ、やるのぅ。前の冥王の様に魔法でこそこそ逃げるような奴ではなくて儂は嬉しいぞ!」


 竜王は喜んでくれるが俺は嬉しくない。

 何故なら攻撃を防がれた後、直ぐに槍で弾き飛ばされたからだ。

 草原をゴロゴロ転がりやっと止まった所で顔を上げる。遠くで三王が剣や槍で攻撃し合っていた。

 転がってる最中、草原ステージってこの事だったんだなと、草の上をゴロゴロ回転しながら考えていた。

 いかん現実逃避をしている場合ではない。

 状況を把握しなければ。

 ……会議って何だよ?! 会話は肉体言語ってやつなのか?!

 前冥王プロキオンが嫌がる筈だよな、こいつ等全員脳筋じゃねぇか!

 そんな俺の心の叫びは誰にも届かず、三馬鹿……もとい、三王の気が済むまで戦闘は続いたのだった。


 再びテーブルに着いた俺達。


「まぁ一日目はこんなもんじゃろう」


 まだまだ元気な竜王はそう言うが、一日目と言うか戦闘は時間にして三日続いていたぞ。

 暫しインターバルらしい。つまりまだやるって事だ。

 いつの間にかアリス達従者も戻って来た。

 アリスが疲れた顔をしている所を見ると、アリスも同じ様な事をしてたのかもしれない。

 ボソリと「次はセシリアに代わってもらう」と呟いていたから、多分合っていると思う。



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[一言] 四王会議と書いて脳筋会談って読みそう
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