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次元最強のガルム様  作者: 神無月 雄花
第1章 天界と人間界
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4「ガルムと花粉症」

ーーーある日の事ーーー


「ふぇっ……ふえっくし! な、なんなんだこれは……」


 朝起きたと同時に襲いかかってきた異変。

 その根端もわからず、ガルムはもがき苦しんでいた。

 昨日までなんともなかった体調も、今はなんだかだるみを帯びており、くしゃみや鼻水が止まらない。

 おまけに、目がとてつもないほど痒く”前もろくに見れやしない”といった状況である。

 そんな状況下で、ガルムは一つの後悔を思い浮かべていた。


「あぁ……なめていた。天界の奴らが言っていた”人間界には恐ろしい災厄がある”と言うのは本当だった。あの時もっとよく話を聞いていれば、こんなことにはならなかったのかも知れない。これは・・・最悪だ。」



*****



「うぅ……なんでこんなことに〜」


 気がついた頃には、時すでにお寿司七並べ山脈。

 事態は先刻よりも更にひどくなっていて、時間が経てば経つほどに力を増して襲ってくる気がする。

 目の前にいるはずのそんな見えない強敵に、私は手も足も出せず喚きちらかしていた。

 だが、そうぐずぐずしている暇など無い。

 早くこの災厄を止めなければ、この先の数え切れない年月にあったはずの、”癒やし”も”安住”も元も子もなくなってしまうかもしれないのだから。

 そう考えた私は、右手を天に突き上げ、この地獄を乗り越えるべく奮起し、四つん這いになりながら解決へと歩みを初めた。


「がんばるぞ〜! お〜!」


とはいっても、何事も闇雲に探してはあまり効果がないし、それで解決する確率も低いだろう。

 こういう時に頼りになる小野も、「おつかれさま」という感じではあるが、本日は”休日半日出勤”で午前中は仕事に出ている為、頼ろうとしてもここには居ない。

 天界に居た時、この話を一緒に聞いていた天界の友達(ネリア)に話を聞こうとは思ったが、もはや私は天界とは相反する身、それもまぁ難しいだろう。


「はぁ。・・・これは、早々から万事休す……。だな」


 行動してからというもの、颯爽として打つ手が見当たらない私は、水っぽい鼻水をすすりながら頭を抱えた。

 だがその時、家の玄関口にくっついているインターホンが、静んでいる部屋に音を鳴らした。

 小野が言っていた"勧誘"? という変な人が来たのかもしれないので、内鍵を締めたまま”ガチャッ”っとドアを開ける。

 しかし、その時私は絶句した。

 そう、「どちらさまですか?」と、常時使用認定済のその言葉を口にしようとした時、外から部屋に入ってきたあの強敵達が束となって私の顔面に直撃し、家全体に対しての襲撃を開始したのだ。

 体調が悪い中で朝から動き回っていた私に、もはや抵抗する力など残されていないことは明々白々。

 この時、私はただ叫ぶことしか出来なかった。

 そう、”やめてくれ”と。


「うわぁ! やめろおぉお!」


 大人、しかも神にもなって、近隣住民の迷惑を考えず叫びまくる。

 こんな醜態を晒して恥ずかしくないのかって言われたら、残念ながら私はそれに反論は出来ないだろう。


(まぁ、反発はするけど)


 というのは一旦置いておいて、今はとりあえず開きっぱなしのこのドアを閉めなければいけない。

 【でなければ死ぬ!】そう魂が伝えて来るのだ。


「うおおおおお!」


 こういった時に限って、なんだかいつもよりドアが重く感じる。

 まるで反対側から別の力で引っ張られているかのようだ。

 だが、そんなことで諦める私ではない! そうして私は、両手をドアノブの先端に引っ掛け、まるで綱引きをしているかの様に思いっきり引っ張った。

 そうして命がけの抵抗によってなのか、急にドアが軽くなり”ガチャン”と本日二度目にして、本日最大の音を立てながらドアを閉めることに成功した。


「ふぅ、これでひとまずは大丈・・・あ」


 危機を乗り越えた一時の喜びに浸ろうとしたその時、私は不意にも気がついてしまった。

 そう、これは「ドア開けた時相手の顔見てないし、なんならさっきの謎の力はドア開けようとしていたのではないか? というかそれならもう一度ドアを開けなければいけなくない?」と。

 ”絶望”その二文字が頭をよぎる。

 ここに来る以前までの私なら、ここで”逃げる”といったコマンドを使うことも可能だったであろう。

 だが、今は違う。

 もしここでそんなことをすれば、また小野に怒られるのは必至。

 そう、私には"もう一度立ち上がる道"しか残されていないのだ。


「くそ! これは止む終えない、ここはもう一度命がけで! うおおお!」


ーーそれから私は、先程と同じ展開を三回ほど繰り返した。



*****



「ガルム、何してるの……?」


 外から、なんだか聞き慣れた声が聞こえた気がする。

 先程の茶番的展開を終え、もう一度ドアを開けて外を確認してみると、そこには、ここに居るはずのない小野の姿があった。

 時刻は只今朝10時。予定よりも早く帰って来ている小野に、私は驚きを隠すことが出来なかった。


「……亡霊?」

「勝手に殺すなよ。」

「……幽体離脱?」

「とちくるってんな。」



*****



 あれから、何故帰ってきたのか話を聞いた所。

 どうやら会社が閉まっていたらしく、休日出勤という連絡も全て誤報だったらしい。

 そのため、憂鬱な気分になりながらも今こうして帰って来たというわけ、だそうだ。

 なんだか可愛そうな話だが、そんな場合では無いことを私は思い出す。


「そうだ小野! 気をつけろ……外には見えない強敵がいるぞ!」


 私は、小野を強敵から守るために警鐘を鳴らした。

 だがその言葉を聞いた後、何故か小野の疲れ切ったその頬に、柔らかな微笑みが現れた。

 そして、それは段々と大きくなり、今ではお腹を抱えて笑い出す始末だ。

 それに対し、私は不服の念を立てる。


 「何故だ。私は心配して言っているのに……。」


 そう思うと、なんだか腹が心の”もやもや”とともに煮えついて来たのがわかる。

 頬を膨らませ、ムスッとした表情を浮かべていたその時、小野は先程の笑いを謝ってから”この強敵の正体について”話をし始めた。


「ガルムって花粉症持ちなの? なんだか随分と辛そうだけど。」


 花粉……症? この世界の食べ物の名前とかだろうか?

 私が「何を言っているのだ?」というような不思議そうな顔をしていると、小野は玄関の靴箱に置かれた謎の瓶を取り出して、それを飲むように示唆してきた。

 「なにこれ?」疑問に思いそう聞くと、それは体によく聞く薬だと言う。

 なんだか怪しいけど、飲んでみないと話しが進まなそうだったので飲んだ。

 そうして、瓶に入った一粒の薬を飲んだ時、今までの辛さが一気に引いていく感覚に陥った。


「なんだこれ! すごいな!」


 私がそう感激の言葉を述べていると、今度はなんだか安堵したかのような表情を見せる小野が私の目に写った。

 とはいえ、なんでこんな薬を飲んだからといって、先程までの強敵達は身を引いたのだろうか?

 試しに小野に聞いてみることにした。


「この薬はなんなの?」


「あ〜そっか、ガルムは花粉症知らないのか」


「さっきも言ってたけどなにそれ? 食べ物? それなら私が美味しくいただくのですが・・・」


「食べ物じゃないよ。花粉症ってのはね、”花粉が体の中に入ってアレルギー反応が起こる病気”のことだよ。」


「病気!?」


 驚いた。先程までの攻撃だと思っていたものは、すべてこの世界の植物がもたらすものだったなんて。

 ”人間界の植物も中々やるな”と、少し感慨深い気持ちになった。

 だが、何かがおかしい。

 もとより私は”神”であり、加護とか魔力とかで身を守られているため、いくら未知の人間界だとはいえ病気などにはならないはずだ。

 なら、なぜ今回は花粉症というものになった?

 私がそう考えこんでいると、また小野が話しかけてきた。


「神様って、そう言う病気とか、ウイルスとかに耐性あるんじゃないの?」


「いや、それなんだがな。実際にそういった物はあるし、私にも何でだかわからないんだよ」


「へ〜でもそれってさ、ガルムが人間っぽくなってきたってことなんじゃないの?」


「またまたそんなご冗談を〜」


「だよね〜。っていうか、これからの花粉症対策を考えないと!」


「・・・あ」


 今、小野に言われるまで完全に忘れていた。

 神でもかかる最強の病「花粉症」、もはやかかったならそれはしかたがない。

 それよりも、これからをどう乗り切るかが大切なわけで、どうして〜なんて考えている暇などなかったのだ。

 そういえば、先程小野は「植物の花粉が〜」とか言っていたな。

 とか考えていたその時、私の頭に衝撃の稲妻が走り、人間界を救えるかもしれないとびっきりの案を思いついた。


「そうだ小野! この世界から”花粉”をなくせばいいんだ!」


 私の思いついた名案。

 それは、題して「次元を操る力で、人間界から花粉を消しちゃおう作戦」だ。これは人類には出来ない”私だけ”の特権。

 小野は、この名案がすごすぎて声も出ていない様だ。

 あぁ、なんて気持ちが良いのだろうか、いつも馬鹿にされていた私が小野を黙らせるこの快感。

 滾る、滾るぞぉ〜。

 と越に浸っていたその時、「なにいってんだ」とばかりに、先程とは違った稲妻が頭を駆け巡る。

 そう、小野が私にげんこつを下して来たのだ。

 「痛い〜」と思って”暴力反対”の文句を言おうと前を向いたが、その瞬間に反発する気は失せてしまった。

 なぜなら、小野が真摯な目でこちらに訴えて来ていたからだ。

 「本当にそんなこと思ってるの?」と。

 私とて、その意思が伝わって来て尚、反発するようなひどい輩じゃない。


「ごめん、私が悪かったよ。」


 そう素直に謝ると、小野は安堵の表情を浮かべながら私の頭を撫でた。


「でも、結局花粉症対策はどうするの?」


「それは後々考えるとして、花粉症が来たってことは春になったってことだよ!」


「後々って……てか春って何か食べられるの?」


「春を食べるか〜また難しいことを言うね。あっ! そういえば、”つくし”とか”菜の花”とかは食べられるって聞くよ。美味しそうだよね〜」


「いや草しかないやん」


「・・・・・え?」



*****



 特にすることもなく気晴らしに外を歩いていた時、道端に生えていた一本の”槍”? が目に入った。

 初めて見るはずのその草が、何故か見覚えがあるのがなんだか不思議だ。

 気になって軽くつんつんしてみても、少しばかりしなってもとに戻ってくる。

 辺りを見渡すとそこら辺にたくさん生えていたため、少しだけ摘んで、私はそれを小野に見せる事にした。


「小野〜これなに?」


「つくしだよ。前に話したやつ」


「あぁ、あれか! 確か食べられるんだっけ」


「そうだよ。私も食べたことないけど、天ぷらとかにすると美味しいらしいから……食べてみる?」


「うん、いただきま〜す」


「え!?」


「ん〜。まぁまぁいけるな」


「生で!?」

すいません、投稿遅れました!

あと来週はお花見会です!

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