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次元最強のガルム様  作者: 神無月 雄花
第1章 天界と人間界
18/21

9「みんなでババ抜き/小野のイメチェン」①

 5月中旬(がつちゅうじゅん)のなんとも()えない(あつ)さが(ただよ)(なか)


「ガルちゃん……真剣勝負(しんけんしょうぶ)ですっ!」


「ふん、(わたし)(いど)むとはなんと(おろ)かしい……。だがネリアよ。いいぞ、その勝負(しょうぶ)()った!」


 (わたし)たちは、ババ()きをしていたーー


 約14畳くらいのリビングの床。

 今日はネリアたちが遊びに来た。

 とはいえ家に遊ぶものなどあるはずがなく、適当に100均で買ってきたトランプで遊んでいる。

 しかし、近頃の乙女が揃いも揃ってババ抜きとは、なんとも夢に見ない光景だ。

 

 だが、たかがババ抜きと侮ってはいけない。


 勝負というものは戦い終わってからが本番。

 勝利した時の優越感、もとい負けた時の劣等感。

 1度味わってしまえば、もう知らぬ頃には戻れない。

 そんな中毒性が、身体を支配するからだ。


「ーーやったっ、これで5連勝目だっ!」


「おかしい……なんでガルムばっかり勝つんだよ! 日頃の徳は絶対私の方が高いはずなのに〜!」


「うわぁ、嫌だね嫌だね〜。嫉妬しても無駄だって、私の溢れ出るオーラは世界1だからね! メルティ、悔しかったら私を信仰して見るところから始めてみれば?」


 メルティは悔しそうにカードを投げ捨てる。

 これみよがしに調子に乗り始めたガルムは、言葉巧みに挑発を続けた。

 楽しんでもらっている分には別に構わないが、正直見ていて結構うざい。


「当分、ガルムのおやつは骨にでもしようかな」


 私がそうボソッと言うと、彼女は目を輝かせながら瞬時にこちらを向いた。

 まぁ、それは置いておくとしても。


 今日の彼女は”なにかがおかしい”。


 運というか、引きの強さが尋常ではないのだ。

 それは、あのネリアさえもが首を捻らすほどに。


 なにか(トリック)があるのか?


 私は、彼女の様子を探るようにして考える。

 第1に”神の力”というものについては、私が制限しているため考えにくい。

 それに、もし使っているのなら他の神(かのじょたち)が察知できていることだろう。


 じゃあ、本当になんでだ?


「はっはっは〜! 最近の私は真面目に動いたり、バイトしたりでいい感じのことしかして無いからな〜。メルティとは違って、神としての格ってのが出ちゃうのかな〜」


「ぐぬぬぅ……」


 今ガルムの言っていたこと。

 考えたことも無かったけど、そういうのもあるのか。

 たしかに、信仰数というか”徳ポイント的なのを貯めたら力が出る”というのは、アニメなどでたまに聞く設定だ。


 そう、忘れてはいけないが彼女らは神。

 この世の法則なんて通じないほうが普通なのだ。


ーーでも、それって私に勝ち目なくない?


 いくら私とて、負けてばかりじゃ何も面白くない。

 ”いずれは運が巡ってきて勝てる”と思ってトランプを選んだ節もあるのに、このままでは本末転倒もいいところだ。


「……ネリア、ちょっとこっちに来て」


 ガルムがこのまま勝ち続ける事を危惧した私は、とある作戦を考えた。

 それは、”ネリアたちの力を使ってガルムをボコボコにしよう”といったものである。


 小さな声でネリアに伝えると、さっそく神の力を使ってメルティにも伝わったようだ。

 私たち3人は互いにガルムの方を向き、悪魔のような笑顔を浮かべる。


「ーーえ……ちょっと。なに? こ、こわ。みなさん怖いですって……」


「あ、そうだ。次から罰ゲームつけようよ。内容は1番の人が最下位の人にって事で」


「はい、わかりました〜」


「わかったぞ〜」


 話し合いに入るすきもなく、勝手に決められていくことに戸惑いが隠しきれていない様子の彼女。

 右へ左へと首を動かし、まるで猫がおもちゃで遊んでいるようにキョドらせている。


「え……。あ」


「ガルムももちろんオッケーだよね? さっきまで余裕みたいなこと言ってたし」


 ガルムは両手を振って”やめてください”とばかりにアピールをしている。

 だが、この計画はもう止まらない。

 そうして全員にカードが配られ、彼女(ガルム)だけが絶対に勝てないババ抜き(ゲーム)が幕を上げた。


「ガルム……まさか負けたりしないよね? でも大丈夫だから安心して。もしもの時用に、”ちょっと特別な罰ゲーム”を考えてるだけだから」


「ーー特別な罰ゲームってなにっ!?」


 私が軽く脅すと、先程までの威勢はどこへ行ったのか、彼女は慎重にカードを引き始めた。

 しかし私たちは、彼女の手札はもちろんのこと次に引くカードすらもわかっている。

 そのため、序盤は順調に進んでき、彼女も落ち着きを取り戻していた。


 だが彼女は知らない。

 もう、嵐の前の静けさに呑まれていることをーー


 ちょっと進んでゲームも終盤。

 残り手札も2、3枚と少なくなってきた。

 作戦決行の合図はターゲット(ガルム)が調子に乗ったとき。


 楽しみで早まる鼓動。

 ドクン、ドクンと体が打ちつけられる。

 そして周ってきた私の番。

 彼女の状況を把握するために、ここはわざとペアにならないカードを引く。


「あ〜、なかなか揃わないって! このままじゃ罰ゲームかけられないじゃん……」


 なんともくさいセリフを織り交ぜて、更に調子に乗りやすい空気を作り出す。

 持っているカードの隙間から、彼女(ターゲット)の動向を確認すると。


「あっれ〜? 小野さん、もしかして負けそうなんですか〜? さっきまでスペシャル罰ゲームとかなんとか言ってたけど、もし私が勝っちゃたらどうしよっかな〜。あ、もちろんサービスはしますからね? まぁ……楽しい方とは限りませんが」


ーー作戦開始だ。


 ”ひっひっひ”と、いかにも悪役がしそうな笑い方をするガルム。

 しかし作戦が始動してしまった今。

 手札は1枚、また1枚と無くなっていく。


 高速で進むゲームに、彼女は選択の余地すらも無かった。

 いつしか笑い声も消え、手はわなわなとしはじめる。


 そして訪れた、ネリアとガルムのラストワンプレー。

 ババ以外を引かれたら負けの状況で彼女は戦慄とした表情を浮かべている。

 カード(ババを含む)をもっている手は、まるで天敵に狙われたうさぎのようにぷるぷると震えていて滑稽だ。


「ガルちゃん、勝負です!」


「ーーえ、あ。いや、やめ。……勘弁してくれませんか?」


「お覚悟です!」


 作戦のためならば裏方でさえもいとわないという精神。

 自分自身で言うのもなんだが、私ってこういうの結構向いてる方だと思う。


ーーというのは置いておいて。


「……さて。ガルム、”罰ゲーム”何がいい?」


 なるべくして1番になった私は、ガルムに相談を申しかける。

 もちろん、彼女の意向など聞くわけがないただの余興だ。

 このときの私は凄い笑顔だっただろう。

 それはもう、()()()にも負けない可愛らしい表情。


「あの〜、小野さん。できればその、優しい感じの特別なやつがいいんですけど……」


「じゃあ選んでいいよ。今日の夜ご飯で骨を食らうか、語尾にニャンをつけるか。まぁ、プライドが高いガルムにはどっちも選べないだろうけどねーー」


「語尾にニャンを付けさせて頂きますニャン!」

 

「まさかの即答!?」


 こんな醜態を晒してガルムは恥ずかしくないのだろうか。

 もし私だったら、発狂して1ヶ月は家出するだろう。


「きゃ〜! ガルちゃんかわいい〜!」


「ガルム似合ってるぞ〜」


 ネリアとメルティが目を光らせて迫る。

 頬を突かれたり耳を引っ張られたり、まるで子供の遊び道具だ。

 しかし、ガルムが抵抗しようという素振りを見せないのが不可解でならない。

 あの性格なら愚痴の1つくらいは言いそうな状況なのだが。


「ーーあ」


 私は理解してしまった、彼女が2人に遊ばれている理由が。


「ワタシはナニもシテイマセン……デスニャン。ワタシはアナタのジュウジュンなシモベ……デスニャン」


 そう、そこには、見るも無惨に成り果てている彼女の姿があったのだ。

 どうやらあまりの恥ずかしさに脳がショートしているようで、目はぐるぐるとまわり重心は安定していない。

 支えていないと今すぐにでも倒れそうなほど。 


「ふふっ」


 最初はここまでするつもりは無かった。

 けれど、望んでいた以上の姿が見れてどこか満足している私がいる。

 

「あ〜、やりすぎちゃったかな……」


「「ぜんっぜんだいじょぶだと思います()!」」


 突如2人から発せられた否定。

 私を顧みた表情は、とても真剣な眼差しでなんだかおもしろい。

 ガルムのことが好きなのはみんな変わらないんだろう。


ーーあぁ、私は今……幸せだ。

お久しぶりです。

ちまちまと書き続けてます。

頑張れます。



もしこのお話が面白いと思っていただけたり、続きが気になると思って頂けた方。

今後の活動の励みにもなりますので、

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