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カインプロジェクト(全年齢版)  作者: 五十鈴川飛鳥
9/17

9青銅

「あーらら。やられちゃった。」

 黒髪ロングの清楚系少女が、ミニスカからのびる黒タイツミニスカの足を組みなおしながら、遠くの野球場のスタンドから様子を見ていた。


 黒スーツの男が手をバタバタさせながら走ってくる。

「あうあうあwwwwwwくさいっぱいこわいwwwwwwwもうむりwwwwwwww」


「なりはマシにしたのに役立たずね。監視もできないかわいそうな子。ま、いいけど精気を搾り取るだけ取ったら次を拾うし。」


「wwwwwwww」

 男が腰をカクカクさせながら近寄ってくる。



「寄らないでよ。わたしが飢えてさえいなければ、絶対やらせなかったわ。」

 黒髪ロングの清純系少女はギャルビッチがガワを被ったなにかだ。

 黒服の男は元はもっとマシだったのだが、理性がなくなっていた。






「うぅ、ぐっ……早く精気を補充しないと……」

 ブラウスからリボンからボタンも外れ着衣が乱れている。膝丈スカートは裾が破れ太ももが隙間から覗く。

 山間部に位置する地方都市のはずれの夜の河原の土手を一人の少女が歩いていた。人もめったに来ないところなんで、道端でおっさんと浮浪者が……


「wwwwwwww早く帰ってネトゲwwwwwwww」

 一人の男が駅から自宅に歩いていた。家もまばらで交通量もない




 少女がまるで山中に連れ込まれ、酷い事をされた挙句捨てられた様な姿で歩いてきていた。


「……どうしよう……関わらない方がいいのかな……」

 男はチラチラ少女を、あらわになった胸やふとももに目が行った。


 少女は男を見つけると、駆け足をしだした。

「精気だーーーーーーーーーーーーーー!!」

 少女は男に襲い掛かる。ちちしりふとももを押し付け、男の下半身を標的にした。


「わあぁぁぁぁぁぁなんだぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 男は逃げようとするが、すごい力で振りほどけない。


 少女は男の服を破りすて、目的のブツに手を掛けた。


「わーーーやめwwwwwww」

 いきなり襲い掛かれた恐怖と思わぬ事態に困惑した男のブツは、何故か萎える事無くいきり立つ。


 一方、おっさんと浮浪者は出し切った。スクラムしたりなんだかしてオールアウトだ。





「まったく精気だけは豚並みなんだから。使い終わったら(しもべ)にでもしてあげる」

 少女は男を足蹴にしてご褒美を与えながら蔑んだ目を向けていた。









「七海様!大丈夫ですか!?」

 七海は体温が下がっているが、外傷はない。


『我の手を放してしまったが、浸食は進行していない。うなじの瘤を取り除けば良いだろう』

 いつの間にか饕餮の金板が真琴と真尋に話しかけている。


「!!」 真琴と真尋は首筋に手をやり、確認すると特に何もなかった。


「なぜ?」


『ワシほどになると、チャンネルのある人間はわかる。チューニングもばっちりだ。』


「なんかフランクだぞ。なんでまた現代ぽくなった。」

 マサキが突っ込む。


『本のおかげもあるが、無線の情報網があってだな、膨大な情報を得られた。』


「インターネットはサブカル多めじゃないのか?」


『動画が重いから、有線に出来ないか?携帯もあればなお良し』


「ぜいたく言ってんじゃねー」



「そんな事どうでもいいから、七海様は無事なのか?」

 真琴と真尋がマサキと饕餮の金板のやり取りをさえぎり七海を抱えながら迫る。


『問題ないだろう。瘤を絞ればニュルニュルと出てくるだろう、粉瘤みたいに。』


 真尋が七海の瘤を恐る恐るつまむと、「ぴゅるっ」と白くてぬめっとした油とともに糸が出てきた。


『その糸をつまんで引っ張り出せば大事に至らない。一週間も安静にしていれば神経節もつながる。』


 糸をつまみ、徐々に引き抜く。ズルズルと長い糸が引きずりだされる。こんなに入っていたのかと思うくらい。



「これで全部なのか。引き出した糸はどうすればいい。」


『元の偽金に戻せば良いだろう。プログラムのエラーでもない。しかし安全のためアップデートした方が良いだろう』


「金板の改良は我々も行っている。アップデートの余地などない。」

 真琴は枯れた草木の中から青龍の金板をクレイドル納め、コミュニュケーターによるチェックを行っていた。


『確かに、それぞれの偽金板はバリエーションにより機能がオミットされている。その代わりに特色が与えられている。オミットされている基板に回路を構築すれば機能を拡張可能である。』


「馬鹿な。饕餮の金板よ。ならばなぜ今までしなかったのですか?」


『封印を受けていた立場なので口出しもないが、必要ないからな。ひかりに施した玄武同化と魂の転移にも回路の追加で対処した。』


「玄武は、この娘の胎内か!」

 真琴と真尋がひかりを睨み、七海に振り返る。そして……


「饕餮の金板よ。七海様は?」


『問題ない。年端も行かない子供を生贄に捧げるなど珍しくもないが、よくも喰われないでその偽金をよく操っていた。


「青龍の巫女であらせられる七海様をむざむざと供物になどさせない。」

 真尋が七海を強く抱きしめた。



『我を解き放った娘は、どうやら白金(しろがね)のやつの供物になったようだ。少し離れた野球場から監視されていた。もうすでに立ち去ったが。』


「!!」

 皆、野球場の方を向く。しかし姿を見るには障害物が多すぎた。


『偽金を使って、ワシを外へ逃がしたまでは良いが、本人がああなっては、すでに手の施しようがない。』


「深雪様……なのか?」


『その童女と同じ錬丹を感じる。』


「……そうか。」



「その子は目が覚めないけどほんとに意思は、元のままなの?ねえ?」

 ひかりが饕餮の金板に自分の境遇に重ね、自らの意思もどうかもわからない不安を交え尋ねた。


易々(やすやす)と魂魄は肉体を離れない。たとえ凡人からは(しかばね)に見えようとも、内丹術を極め道胎(自らの複製胎児)を内蔵していれば真人、仙人に尸解(しかい)す。』


「人じゃないの?人には戻らないの?」


『人より、真人、仙人は優れている。なぜ人に戻らねばならない。』


「仙人になるって?どんなもん?天女みたいなもん?……陽天女様っていい。」

 マサキは天女姿の(ひかり)を想像した。


「天女はいいけど……そうなると私は……」


『永遠の寿命、天を駆け、雷を操る。神に比肩する存在となる。』


「うーん。想像がつかない」

 ひかりは首を傾げ、ショートヘアを揺らした。15歳のわりに幼げに。


「では、普段から内丹を練っておられた。女仙に尸解する可能性が深雪様にもある。」

 真琴に希望が湧いた。


『奴が中にいる以上渾沌に支配されている。道胎があっても消え去っているだろう。神人の力を借り自らの精子と卵子で自家受精分身(クローン)を妊娠させその胎児に意思を移さぬかぎり割り込む隙も無い。その元の意思も玉に保存もしておらんから相当のダメージを負っているだろう。再び云うが手遅れだ。』


「……はあ?」


「よくわかりません。」

 マサキがそう思うのも無理はない。


『気にするな神人の遊び(チート)の世界だ。ここではない次元が2倍体3倍体の存在が、我が世界に介入する際に仮想現実バーチャルリアリティーに投影する。気まぐれな連中に(かかわ)るな。』


「バーチャルなのか?この世界?」


『神人がこの世界を見るために神人の視点で変換しているだけで、この世界は現実のものだ。ワシも実は奴らの投影ディバイスに過ぎない。奴らの次元が多いから自由にできるパラメータが多い。奴らから見ればゲーム世界に見えるかも知れんがな。』


「……お前……質量のあるホログラフとか?」


『違うな、気力場(きりきば)(サイコメトリック・フォース・フィールド)を操るための量子コンピュータであり、因果律を(つかさど)る。粒子の状態を確定する観測装置。奇跡を確定する装置だ。』


「いや、わからん。」

 マサキをはじめ、意味がわからない。


『よかろう。では、量子物理の講義を始めよう。』


「やめてください。しんでしまいます。」

 みんな、目が死んでいる。


『仕方がないのう。ではじっくり時間をかけて理解してもらう。』


「・・・・・・わかってないな。」



「それはそうと、青銅を見せてやると言っただろ?あのブロンズ像がそうだぞ。」


『さぞ金色に輝いているだろう なっ!!』

 ブロンズ像は緑色にくすんでいる。


『あれが錬丹金だと?ありえん。黄金色に維持されていなくてはならない。』


「お前もあんな感じだ。心配するな。」

 マサキがプラケースに納めた金板を取り出し言う。



『なんだと?無礼な。常に磨かれなくてはならん。ここ二千年ワシは黄金色

だったはずだ。』


「すみません。外気と水気で緑青が浮き出ています。」

 真尋が金板を直視せず謝罪した。



『ワシを磨き、黄金色を取り戻せ。』


「いやだよ、メンドクサイ。」

 マサキがばちっいものをつまむように金板をあつかう。


『貴様、許せん。ここへ直れ』


「仕方ないな。酸性洗剤で洗うか。」


『おい、やめろそれでは、表面が滑らかになってしまう。』




「我々は、七海様の治療のため失礼します。しかし、再び第二第三の使者があなた方を襲うでしょう。必ず饕餮と玄武を返してもらいます。」

 真琴と真尋が七海を抱えて立ち去った。あんまり面倒事には立ち会わない気だ。



「俺たちも帰るか。」

「そうね。」


「ぐー」

 ひかりのお腹がなった。


「わっ?あの、そうじゃなくて、そうでもないけど、お腹が空いちゃって。ごめんなさい……」


「別に気にしないよ。じゃあなんか食べに行く?」


「うん。」


「なにがいい?」


「焼肉。」


「え?」


「いや、やっぱりラーメン。」


「え?」


「ごめんなさい。いっぱいあって、いろいろな種類があるところ。」


「へ?」




 ひかりは、ランチの時間が終わるまでビュッフェ形式のお店で、食べ放題でこれでもかと食べに食べつくした。

 10人分とかではない。ガツガツとお店の食材がなくなるまでである。



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