7青銅
「奴ら表に出たわ。行くわよ、真琴、真尋。」
七海は、バレない様に抜き足差し足で自動ドアまで移動した。ハッキリ言って目立つ。
マサキとひかりは、隣接した美術館と運動場の間にある雑木林に入っていた。
七海たちは雑木林の木に身を隠し、様子を伺っていたが、田目兄弟が左右に散り、七海は二人の背後へ回った。
二人は遊歩道を歩いて、適当な場所でベンチを見つけ腰かけた。
『あ奴ら付いてきたな。さて、如何な策略を仕掛けてくるか』
金板はマサキに意思を伝える。
「でもよ。動きがバレバレだぜ。特にあの女の子。」
『あれは戦力に入れなくて良いだろう。しかし他の雌の様な雄の思考を持つ者は侮れんな。』
「女子なのか男子なのかはっきりしろよ。女の子にしかみえんがなぁ。」
『あれは、ああゆう存在なのだろう。男でもなければ女でもない。』
七海は青龍の金板に念を送り、金糸を伸ばす。金糸は木々に入り込み支配下に置いていく。
マサキとひかり周辺の木、草、苔に至るまで支配していく。
『木気の者か。気配が変わった。』
「木を操る能力なのか?」
『木のみに非ず。植物に特定の適応性がある金糸であろうか。ワシは万物に干渉可能な故、金糸に接触すれば、浸蝕可能だ。現に近場の金糸は我が通信網にかかった。あとは浸蝕子を走らせれば無効化できる。』
「なんだ、簡単なのか。」
『問題は、物理干渉だ。体術に自信はあるか?』
「体育で剣道をやるくらいで、自信とかはないな。武道場に行ったときに柔道とかはふざけてやるけど、経験はない。」
『この娘は武道の心得があるのにか?雄のお前がか?』
「うるせー。そういう時代なんだよ。」
七海は最も近場の草木を変質させた。
「一気に行くわ。ハチの巣になりなさい。」
木の表皮から樹皮が飛び、葉は刃となって舞い、木の実が弾のようにはじける。木の枝はしなり、芽は高質化し、バラの棘、葉の先までもが武器になる。
マサキは、ベンチをひっくり返しひかりを抱えて伏せた。
「ズガガガガン」とベンチに植物のつぶてが当たる。ベンチはもろくも砕け散る。
「どう?青芽散弾の味は。ひとたまりもないでしょ?」
マサキたちはピクリとも動かない。
「こっちの側はベンチで防いだようだけど、あっち側はぐちゃぐちゃのはず。お姉ちゃんの敵はとったわ……」
「七海様!!油断なさらないで、奴ら生きています!!」
真琴が七海の-120°の位置で待機していた。その角度から見ると無傷なのだ。
「なんでよ。全部当たったでしょ?」
「七海様とは逆側は、全て手前で止まっています。」
発射された木のニードルは全て手前で地面に突き刺さっていた。
真琴の声を号令にして、マサキと陽は目の前のニードルのうち適当な長さの物を引っこ抜き、-120°、120°方向の真琴と真尋向かった。
マサキは、真琴に対し、一直線に襲い掛かる。ニードルを脇に槍の様に構えた。
ひかりは、真尋に人の半分くらいの長さのニードルを中段に構えた。
ひかりは真尋に上段切りを放つ。真尋はハンドスコップ(タクティカルスコップ)で防御した。ひかりと真尋は距離を取った。
マサキは槍を刺すように真琴を狙ったが、当たらない。逆に手持ちのつるはし(タクティカルハンマー)ではじかれてしまう。
「なーんでよ!!なんでぴんぴんしてるよ。ええい。もう一回よ。青芽散弾!!」
しーん。
「なんで!なんで?出なさいよ。えい!!えーい!!とりゃ!せいや!?」
ウンともスンともいわない。
『細工はさせてもらった。すでにハッキング済みだ。金糸の効果を無効化した。若干都合よく操作させてもらった。』
金板が七海に対し言葉をかける。
「なんて事したのよ。わたしの青龍になにしたのよ。」
『なに、前例があってな。同じコードだったのでな、少し遊ばせてもらった。』
「!?」
ひかりと真尋は、獲物の違いなのか腕の違いなのか、ひかりが優勢である。ひかりの小手が当たり真尋のスコップは地に落ちた。真尋の首にニードルを突き立てる。
一方、真琴のつるはしを避けるため槍先を右往左往しているマサキがいた。