6青銅
よそ行きのちょっとおしゃれをした少女の一群。物陰から様子を伺う影がある。
「わたしは、デパートに行きたいの!!ちゃっちゃと済ませて買い物よ。」
「七海様、焦ってはいけません。どんな力があるかを確かめてからでないと、とんでもない目に会うかもしれませんよ。」
黒い服の少女は青い服の幼女の手綱を操らねばならない。ほかっとくと何するかわからない。
「なーんでよ。弱そうじゃない。」
「深雪様の安否が不明な上、相手が敵だった場合、実力が七海さまを上回る事が予想されます。その場合仇討も叶いません。」
「そのために真琴、真尋がいるんじゃないの。」
二人の黒服少女は田目兄弟。男の娘二人の名前は見た目からは、予想もつかない。
二人が女装している事情は知らないが、内偵の最中らしい。
七海は普段、セミロングより短め、短めのボトムと軽めのトップスの組み合わせの恰好で、いかにもな田舎幼女なのだが、町に降りてくるときに髪をちょんちょんとチョンマゲにして、青のフレアスカート肩を出したホルターネックにカーディガンを合わせ、フリルやリボンのアクセントを着けて、ニーハイ、ストラップシューズでめかし込んできた。
少年二人は、おかっぱで黒を基調にした大きな白いエリとソデ口のあるパフスリーブのワンピースを着ていた。名前を聞かなければ、クール系女子中学生。これでも立派についてるんだぜ。信じられるか?間違いを起こしかねない。
「深雪様の守護を破って金板を奪ったのですから、相当の腕があると思っていいでしょう。しかしあのような普通の高校生が深雪様を倒すとは思えないですが。」
源太郎が右から話す。
「深雪お姉ちゃんがあんなの負けるはずはない!!きっとズルしたのよ。」
「深雪様が油断したとは思えない。彼らからは邪気が感じられない。
浩二郎が左から話す。
七海は金属板に念じていた。
「青龍からの感覚は、饕餮と玄武に違和感があるの。」
青龍の金板はマサキが洞の前で拾った綺麗な金属光沢と似ていた。
「饕餮は雑音があるし、玄武は人形を得ているみたいだから、あの女は玄武のはずだけど、なんか違うの。」
「建物の中に入っていきました。気づかれない様に付けますよ。」
はっきり言って、目立つ3人がバレないだろうか?いや無い。
マサキとひかりと金板は、新刊本を取る。金板はひかりの目を通じて本を読む。かなり高速に読み次の本へ移る。これが本棚の端から始まり、1冊1分もかからず読み、その隣を取る。を繰り返し始めた。
「ちょっとストーップ。」
マサキがひかりの手を遮り、本を読むのを止めた。
「このまま全部読むつもりか?時間が掛かりすぎるだろうが!!」
マサキは金板に対して言うと。
「何を言う。情報が枯渇している。まだ慣用句や世情は分からん。先ずはしらみつぶしだ。」
ひかりの声で金板が答える。
「今は金板か。ひかりはどうなった。」
「問題ない。しばらく体を借り受けている。意識はあるから心配ない。」
「いきなり始めるな。それに同じジャンルから読むな。分散しろ。」
「無作為にこの書庫を当たれと云うのか。それこそ時間の無駄だ。」
「先ずは、百科事典とか教科書とかがいいんじゃないか?専門書とか小説をいきなり読み出すより理解が速いと思うぞ。」
「教科書とはなんだ?百科事典とは何が書いてある?」
「うーん。教科書は学生が学校で習う内容が書いてあって、百科事典は概要とか解説を項目ごとにまとめてかいてある。」
「うむ。教本に索引か。目的の情報を得るための検索表を作るか。ではそうしよう。」
と言って、ひかりの体を借りた金板が教科書を探し始める。
『教科書なら、わたし小学校からのがあるし、妹のもあるからそれでよければ。』
ひかりが心の声をかけてきた。
「娘の記憶にあれば、わざわざ本から参照せずとも得られる。が、無いものは読まねばなるまい。しかしながらある程度の基礎は解析済みだ。教科書はあとにして、百科事典とやらを読む。」
マサキとひかりの様子を見ていた七海と少女風少年は、なんだか意味が解らないと本棚の陰から覗いていた。
「ふつうに図書館デートに見える。」
真琴と真尋が男女の交際について詳しいかは、存じないがそう見えたのだった。
「あれが玄武なの?隣にいる男はなに?饕餮の人形でもないみたいだし。でも饕餮は感じるの。」
「マサキ。先ほどから、偽金の気配がある。振り返らず後ろを見よ。」
金板がひかりの体で目配せをしてマサキを見つめた。じっと目を向けられる。
「……はっ!! 難しいことをいうなよ。でもなんか場違いな女の子がいるのは気になっていたんだ。」
見つめられて、戸惑っていたマサキは一瞬反応が遅れたが、目立つ美少女と幼女は気になっていた。