13赤銅
水着の少女たちがやって来ると、周りの空気が華やかになる。
もともと海釣りや観光地であるため、家族連れや夏休みのバイトに来ている大学生など、金銭的なハードルを越えた人たちがやって来ていた。中高生の集団は珍しい部類に入る。
「うーん。海もきれいだし、景色もいい。」
みどりが胸を張り、手を額に遠くを見るためにかざす。
「もうすぐお昼だけどひと泳ぎしますか。」
マサキがストレッチをしながらいうと。
「あっ。私たちはいいから、男子は泳ぎに行っていいよ。」
「なんで?」
「え?海に泳ぎに来たんじゃないし。」
「泳ぎに来たんじゃないの?」
「だって髪が濡れるし、水着に塩水がかかるし、それにねえ。」
女の子はややこしい。妹のひとみはまだそこら辺が分からないらしく、マサキと準備体操している。
「泳ぐと気持ちいいと思うんだけど、ねえお兄ちゃん。」
「髪が乱れちゃうと、後が困っちゃう。まだお昼前だし、もうちょっとあとがいいの。」
みゆきとみどりは運動部ではないので、ショートでもなく、スポーティーにポニーテールとか髪をまとめる技術に熟練しているわけでもなく、普通にメイクなしで表に出る気はない。
「遊びでがっつり泳ぎたくない。プールじゃないから波が嫌。」
鮎美は競泳水着でなくビキニなので本気で泳いだら、水の抵抗でスッパは確定だ。ボール遊びとかの定番はあるとして、水に潜るということはしない。
「私は泳ぐよ。ひとみちゃん。海まではしるよ。レディー GO!!」
「ちょっとまってよ。私が先なのに~」
明日香は普段のユニホーム同様に、ビーチバレーでもするようなスポーツ仕様で臨んでいた。
明日香はスクール水着の幼女とともに海に飛び込んだ。
ひかりと久美子をはじめみんな基本的におとなしくしていたが、水遊びはしたい。せっかくなので明日香の勢いに便乗して海に入っていった。
「水辺は戦場なのよ。いかにアピールするかなのよ。水に入るのは戦術上必要な時だけよ。」
みどりは、取り残されながらも負け惜しみの様に言った。
「あんたもいい人見つかるよ。アイツはどうなんだい。」
天野ゆかりはマサキを差して言うと。
「あれはだめよ。意中の人がいるもの。」
目をくばせて言い返した。
「ふーん。でも告白もしてないみたいね。あたしが誘惑しちゃおうかしら。」
大きっくて綺麗な胸と、少女から女になった色気がその言葉に力を与えていた。
「色気で傾かせても、友達ではいられないから……」
「あたし、火遊びしちゃおうかな……」
ゆかりはTシャツを脱ぎ走り出して、一直線にマサキに飛びついた。みどりはちょっと引いてしまった。
日も頂点を少し過ぎ、お腹も空いた。
「屋台とかあるかな。」
「うちでランチを用意してるから。」
「え?でもお金が……」
「大丈夫。料金のうちよ。とれたて海鮮料理をたのしんでね。」
民宿には、懐石料理とは言わないが、お造りや、お吸い物、サザエのつぼ焼きや、果てはふぐまであった。
「こんな豪華でいいの?」
「いつもお世話になっておりますので。」
マサキたちは、おもてなしに舌鼓を打ったあと、少々くつろいでいた。
「昼からどうする?」
「泳ぎ続けられんし、スイカ割もすぐおわるしな。釣りもありか。」
「イルカに触れるわよ。ちょっと離れるけど。」
「イルカさんにさわりたい。」
「どうやってそこに行くの?」
「自転車くらい貸してあげるわ。」
「水着が濡れちゃったから、悪いわ。」
「観光のためだから、そんなの盛り込み済みよ。」
マサキたちはイルカ体験のため、レンタルサイクルで水着のまま移動していた。
女性陣も太ももまぶしく追走して、イルカ体験よりも男子からの見栄えを気にしていた。
イルカの浜につくと、子供が多かった。家族連れがメインになっているのだろうか。
イカダを組んだいけすでイルカショーが行われ、砂浜ではイルカの説明を受けた後、イルカに触れるため3人一組で水に入っていった。
「もうすぐ順番だよ。」
「イルカに触るなんて初めてだよ。」
東條兄弟と明日香の組、ひかりと久美子と稲葉の組、みゆきと鮎美と武藤の組が続く。
「あんたは行かないの?」
ゆかりがみどりの隣で腕を組んでいた。
「だってあぶれちゃったもの。」
「3人でなくても、あたしが付き合ってあげるって。」
「子供じゃないし。」
「子供でなくてもいいのよ。」
「別に興味ないし……」
みどりはひとり、イルカのショーを見に行った
「wwwwwwwww、獲物いっぱいwwwwwwwww、女、子供wwwwwwwww」
「男がいっぱいいる。美味しそうだわ。」
なにやらカリのような頭と触手が何本か生えているタコのような造形の物体と、女の様だがぬめっとした感じで、乳しぼりするようなウツボの様な管を持った、やっぱり人間ではなさそうな物体が居た。
「女子供は苗床と搾精肉壺にするためになるべく無傷で拘束するのよ。」
「wwwwwwwww、おれのうででまきとってwwwwwwwwwしるをいれるwwwwwwwww」
「ウイルスは後よ。改造には時間が掛かるから、邪魔の入らない安定した環境じゃないとすぐ流れるから。」
「wwwwwwwww、もう我慢できないwwwwwwwww」
「ちょっと待ちなさい!!ああもう!!」
水中をうねうねと身をくねらせ、タコのような物体(仮にペニーウナギと言おう。)がイルカの浜に近づく。
マサキの順番がおわり、ひかりたちの順番のときに触手が海から生えてきた。
『…マサキ、ひかり、鬼の……る。早く離れろ、……気がある。早……れろ』
金板の饕餮は浜のカバンの中にあり、通信が遠かった。
久美子の足に触手が絡みつき、足から股に伸びていき胸から口へ、4ピース上着の中を脈打つようにまさぐり始めた。
「久美子ちゃん!!」
ひかりは金板の察知により避ける事ができたが、タンキニのパーカー状になったポケットにある波留(ひかりの精神がある)を守りながら、水の中はどうしても鈍くなってしまう。
「い…や…たすけ……」
久美子は苦悶の表情を浮かべ、助けを求める。
「仕方ないわね。」
乳しぼりするようなウツボ(仮にぱっくり魚と言おう。)が、稲葉に触手を高速で接触させ先を脈打たせる。
「うっ!!」
稲葉はそのまま水の上に倒れ果ててしまった。
「稲葉!!」
鮎美が、急いで稲葉を救いに行った。
「wwwwwwwww女wwwwwwwww」
そこにペニーウナギの触手が迫った。
「鳥よ。」
そこに、上空を飛んでいたトンビが急降下し、爪が触手をつかんで上昇した。
「いてぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ペニーウナギが叫ぶ。
いつの間にか、少し離れた桟橋にうみねこや、カラス、トンビなどが群れをなして留まり、黒髪ツインテの赤いビキニ少女の上空でトンビが飛び回る。
「あいつは、鳥使いの……ヤルことやって退散よ。」
ぱっくり魚は、ライフセーバーの男たちの精気を吸い取りながら、撤退の方向を探していた。
「…あっ…ん…」
久美子だけでなく、周りのメスなら主婦でもロリでもなんでもあり。哺乳類ならいいらしくイルカでさえ、触手が襲っていた。
「久美子ちゃん!!」
ひかりは、水から飛びあがりたかったが、人間離れした能力を見られてしまう。そんなとき、目の前にイルカがやって来て、少し潜り、足場の様になった。
「手伝ってくれるの?」
ひかりはイルカに乗せてもらい、鼻先をつま先で挟むとそのままイルカはジャンプした。そのジャンプにあわせ、ひかりは上空へ飛ぶ。
「てぇぇぇい!!」
ひかりは、ペニーウナギの触手に稲妻キックをかました。
「みんな行って。」
ひかり稲妻キックが当たると、うみねこがペニーウナギに襲い掛かる。腕をあげた少女のたわわな胸が揺れる。赤いビキニに包まれた胸の間には赤色の板が挟まっていた。
「ぎぃぁーくぁwせdrftgyふじこlp」
ペニーウナギはうみねこの集中攻撃によって、つつかれ引き裂かれ、ぼとぼとと断片になっていく。
久美子は海に落ちてった。
マサキは当初、早く水辺から離れようとしていたが、ひかりが取り残されていたため、近づく機会を見計らっていた。
海で早く泳ぐには水中より上で水を掻くバタフライが好ましい。マサキは上半身が強くおあつらえ向きだった。
ひかりはイルカにかっさらわれてしまった、久美子を救わないといけない。うみねこがペニーウナギの相手をしている隙に久美子を抱きしめた。久美子の体は柔らかかった。ぬるぬるの体液まみれで、20cmくらいの肉棒になったブツがいやらしく絡んで劣情を覚えてしまった。
「ぐふふふふふ。おれがお前のからだつかうwwwwwwwww」
肉棒はペニーウナギの頭の部分で、一番いいところから顔をのぞかせていた。マサキのブツに同化しようと。
「お願い!!」
海の中から海鵜がペニーウナギを加え、浮かびあがると少女の元へ飛び去った。
少女は海鵜のくちばしからブツを手に取る。
「ブチっ」
ブツを握りつぶし、手が血まみれになった。
「まずひとつ」
ペニーウナギは群生しているので、至る所でメスを襲っていた。
「あぁぁん」
ゆかりが、みどりが苦しそうな声をあげ、ペニーウナギに蝕まれていた。
そこにぱっくり魚が男を襲っては精気をため、ペニーウナギを産んでいた。生と死の天国気分で地獄イキである。
「フギン、ムニン。あと5体ね。あそこに行くわよ。」
少女の傍らには二羽のカラスが控えていた。
ひかりがイルカにのって、いけすの地獄(極楽)にいるゆかりとみどりの元へ急ぐ。
イルカの浜には、数人の襲われた男女が保護され、避難をしていた。マサキもその一人で、ひかりを助けに行きたいが力がない。
「金板、どういうことだ。」
『生命を組み替えて都合のいい鬼を作り出したものがいる。おそらく白金』
「どうすればいい。」
『あれの正体を看破すればいい。正体は水鏡を通じてみる。正体を看破したのち形代を持って禁ずる。』
「で、方法は?」
『道を極めるか、仙術を極めるかだ。』
「俺にはできんだろ。」
『火の気の者がいる。あそこの子供がそうだ。』
鳥使いの少女に目をやる。
「子供ではないだろう。あれは。」
『お前の妹と歳は変わらぬぞ』
「あれでか?」
確かに童顔だが、かなりグラマーな体をしている。
『あれは、相当の力を持っておる。それに、殲滅する気でやっているから放っておいても始末してくれる。』
「でもよぉ。」
『お前ではアレに勝てん。ひかりに精気を送って力に変えろ。わしに念ずれば送ってやろう。』
「根こそぎじゃないだろうな。」
『息があるくらいには手加減してやる。』
「おい!でもまあいい。やってくれ。」
「あれ?お腹に異物感が……あったかい。なんか気持ちいいし、充実感が……」
ひかりにマサキの精気が送られている。
「渾沌以外の気配……饕餮……、七海がし損ねたあれがここにいるの?命運とは皮肉なものね。討滅対象は引き合うのかしら。」
少女は猛禽類を束ねる。
「目的は同じ様ね。先ずは渾沌の鬼をたたく。鳥よ、炎帝」
周囲の隼、トンビ、鷹が渦を巻いてぱっくり魚を上空から襲う。
渦の中はチベットの鳥葬のようについばまれ、肉がそぎ落とされていく。
「うっぁぁぁぁ……」
ぱっくり魚とペニーウナギが弱ったところに、ひかりが到着し、ペニーウナギが離したゆかりとみどりを抱えて桟橋へ向かう。少女は桟橋の元へ来ていた。
「もとは人。欲望と執着がために鬼となった者たち。その存在を禁じる。」
少女は、胸からカードを取り出し念ずる。
ひかりがまだ救っていない人たちとともに、その念と、鳥たちが作る結界の光の中浄化されていった。