11赤銅
マサキはひかりを誘えず寂しくその日を迎えるかに見えた、が、花火大会は順延になった。
意気地なしにも天は情けをかけた。島での勝負によっては花火大会への勝利が待っている。
マサキは島に妹のひとみを連れていく予定だ。海水浴に行くと言うと妹に連れてけとゴネられて、親には日帰りならいいと一緒に連れてけと押し付けられた。
移動費は各自持ちで宿泊はしない予定だが、船代、島の民宿で着替えする部屋を借りたり荷物を置く関係上、ひかりの優待券は非常にありがたい。
出発の日は朝8時に駅前に集合となっていた。それぞれの移動手段によりバラバラと集まり始める。電車やバスの利用者は時刻表頼みなので、比較的早めに着いた。
駅南部からは、ひかりと中学からの友達の山田久美子がやって来た。
御手洗鮎美は十九条明日香とともにマサキと同じ電車で到着した。
そして纐纈水鳥はというと、駅北側から現れた。同じクラスの一柳美幸と不破浩二と武藤を誘っていた。一人だけ3人誘ってきた。
「東條君は、彼女連れ?子供よね?ロリコン?」
みどりはマサキがひとみと並んで立っているのを見て、眉を八の字にして言うのである。
「こいつは、俺の妹のひとみだよ。小五に見えるかもしれないが中学だからロリコンじゃない。」
「お兄ちゃん! 小五がなんだって?ひとみ、毎日制服着て学校行ってるでしょ?」
「そうだっけ?朝時間が合わないからな。」
「朝練もないのに?」
「朝の小テストで忙しいんだよ。」
「そうそう。小テストが始業前にあって、朝っぱらから暗記よ。」
みどりが同意の言葉をかえし、皆一同にうなずく。
「高校って忙しいのね。」
「他の高校の奴に聞くと、こんなのウチだけみたいだぞ。」
不破浩二は伊奈波市内の高校でなく、郊外校に入ってきたので、市内の連中が行く高校の話をよく聞く。
「稲葉はもっといいとこ入れたんじゃないか。正直入るとこ間違えた感があるな。」
不破は稲葉なので稲葉というあだ名で呼ばれていた。なぜなら稲葉だから。
「私の近所の高校は、中学と制服がスカートのリボンと襟カバーだけの違いで、行けたらよかったのになぁ。」
ひかりはご近所の高校には成績がちょっと足りなかった。
「じゃあ、同じ高校いくのやめよ。」
ひとみはマサキたちの高校事情を察した。
「ひとみちゃん?しばらくしたら事情が変わるかもしれないよ。制服だって可愛くなるかも知れないし。」
明日香が言う。一応明日香はひとみと話した事は無いが見たことがある。
「で、みんな揃ったみたいだし、電車に乗りましょう。どうせあと1時間か2時間は移動だもの。」
島への接続まで考慮された、直通の特急列車の時間に合わせて集合していた。
島へは、特急で最寄りの港まで行き、そこから高速船で島に向かう。
電車の中では、わいわいとお菓子を食べたりおしゃべりしたり、ゲームをしたりして、過ごし、20~30分の船旅をへて島にたどり着く。
「うーん。」
マサキたちは、港に着くと今まで狭い空間にあった手足を伸ばし、塩のにおいをかいだ。
「やっと着いた。ちょっと休みたいね。」
「お父さんが使っている民宿はこっちよ。居間でくつろげるから、もう少し我慢してね。」
ひかりがバックを抱え、みんなを先導した。




