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カインプロジェクト(全年齢版)  作者: 五十鈴川飛鳥
1/17

1金板

 女子学生と男子学生がにらみ合っている。痴話げんかだろうか。


「おい!!ちょっと待てって!! 話し合おう。何が気にさわる事があったのか?」


「……」

 女子学生の様子がおかしい。目に光がなく、まるで死んでいるようだ。


「おい!加納!!返事しろよ!?」


「ぐぐぐう……うるうるる……」


 言葉まで怪しい。


 女学生 加納(ひかり)が襲い掛かる。
















 東條征輝(マサキ)は今年高校生になったばかりだ。


 入学から数か月、友達をつくり、部活に入ったり、いろいろあって初夏が訪れる。




 征輝(マサキ)は課外授業のため山の研修施設に来ていた。

 学校行事なので学年全員参加しており、高校一年生の夏休み前までに親睦を深める目的である。


「おーい男子ぃ。遊んでないでご飯炊いてよ~」

 女子がもう使い古されたフレーズを使って注意をする。


 大体男子高校生は基本、まだまだだ。いや多分還暦過ぎてもの間違いだが、勢いと無謀さが違う。


 薪拾いの寄り道のくだらない山の探索や、いたずらなどまあいろいろやるわけです。


「まてて、(ひかる)押すなよ押すなよ!!」

「がーんばれっ♪、がーんばれっ♪ 征輝もっと頑張ってくれ♪」

 歌っているやつは星川光。れっきとした男でしかも180cmはある巨漢である。が、恥ずかしい名前をしている。


 川のそばにある(ほら)に何かある。山の中には不釣り合いの金色の金属らしきものだ。


 竹の竿を途中で調達して、竿を握って片方をもう一人の同級生、武藤に持ってもらっている。こいつもいい体しているが、身長は人なみでラグビー部に所属している。ラグビー部には星川もかなり勧誘を受けたが断っていた。ま、おちゃらけた性格なので当然と言えば当然である。3人の中で軽量な征輝が適任だったので、ひろう係になったのだ。


「もう少しだ。」

 征輝が手を伸ばすと、ズルっと武藤の足元が滑った。


 ざぱーん!! 小川にマサキが落ちた。この辺も王道をいく展開である。

「さすが征輝。期待を裏切らない。」

 星川が笑いを浮かべながら言う。


「くそう。つめてー。パンツは無事か?」

 征輝はジャージに手を突っ込んで確認する。まあ無駄な確認なんですが。


「それよりその金の板、早く取れよ。どうせ濡れるんだし。」

 武藤は上半身ががずぶ濡れの状態でマサキに指図する。

「まだ水が冷たい。全身ぐしょぐしょだ。」

 マサキが、金の板を確認すると、若干の腐食が見られる。

「金じゃないみたいだ。」

「やっぱりこんなところに金の延べ棒なんて落ちてないか。」

 武藤は上半身ずぶ濡れ、下半身は泥だらけで言う。

「マサキがもうちょっとがんばって無傷でとれば、ボーナスがあったかも知れないのに。」

 光クンはふざけている。



「表はツルツルで裏面はグルグル模様が掘ってある。何かの工芸品か、出土品か?」

 金色の板は、コミックサイズくらいの大きさで、鏡面の部分とラーメン鉢の模様のようなものが刻まれている面があった。


「もう一枚あるぞ。うっわきたねえ、腐ってる、これは青銅か?」

 やはり、文様が刻まれているようだが、腐食でまともに見えない。

 マサキは汚い方はそこら辺に捨てて綺麗な方だけジャージのポケットに入れた。


「とりあえず、火のあるところに行こうぜ。服を乾かさないとな。」

 武藤は、シャツを脱いで絞りながら、マサキに言った。


「初夏とは言え、寒くなってきた。とっとと焚き火で乾かそう。」



 炊事をしている女子の所へ戻ると、それはそれは罵倒のあらし。


「あんたら!!何してんのよ。仕事しなさいよ。」

水鳥(みどり)ちゃん。東條君と武藤君。びしょぬれだよ。寒そうだよ。」

 天使と悪魔が居た。天使は加納(ひかり)で悪魔は纐纈水鳥(こうけつみどり)だ。


「とりあえず、火に当たらしてもらうよ。ジャージがびったびただ。」

 征輝と武藤はジャージを脱いで火にかざし、半裸状態でいた。


 みどりは嫌な顔して言う。

「あんたらのストリップは見たくないから死んでくれない?」


「みどりちゃん。寒そうなんだから上着とかかけてあげないと。」

 と、ひかりは自分のジャージをぬいで渡そうとしていた。


「俺たちの事はほっといて、料理を作ってくれ、あったかい食べ物があればいい。」

 マサキは、そんな気遣いはいらないと拒否する。


「そう……でも羽織るものでも……毛布とか持ってこようか?」


「大丈夫。俺たちはいけてる。」

 武藤は強がりを言い放つ。


 カラーン、カラカラ


 マサキのポケットから金色の板が地面に落ちる。キャンプ場の炊事場はコンクリートで舗装されているため、金属音が響く。


「なにこれ?」


 ひかりがその板をみて手を伸ばす。マサキも拾おうと手を伸ばすとひかりの方が先に金板ふれ、マサキは光の手に上から被さる様に触れた。


「あ……」


「ごめん……」


「いいよ。でもこの板はなに?」


「さっき川で拾ったんだ。きれいだったから。そしたら川にハマったってわけだ。もう一枚あったけどそっちは緑色で汚かったから捨ててきた。」


「何かしらね、この文様。何かの儀式に使うのかな?神社か遺跡か何かの装飾品じゃない?川から流れてきたのかな?」


「上流にそんなものあったっけ、もう一枚の方もそんなもんか。」


「さあ……でもバチが当たりそうだし、社会の宇野先生に預かってもらいましょう。」


「なんか価値があるものだったらどうする?」


「その時は、第一発見者として、教科書にのるわ。」


「そんなより金が欲しい。博物館とかで発掘品とか見てあの人が~とか、これは~とか言うやつは考古学マニアしかいない。」


「うん……」

 ひかりは妙に納得して料理に戻った。




 火に当たり、ジャージを乾してやっと正常にもどったころ。カレーが出来上がった。


「うーん。いまいち?」

「さっさと食え。」

「みんなと食べるご飯はおいしいね。」


 この班の最後の一人、一柳美幸が言う。この班の最後の良心である。


纐纈(こうけつ)さんよ、もう少し優しくできないか?モテない女になるぞ。」

「あんたからモテたいとは思わないけど!」


「せっかくかわいいのにさ、もうちょっとやさしさを感じさせればいいのに。」


「かわいいなんてありがとう。って、優しくなんてしないわよ。」


「早く食べて、次の課外授業の準備をしましょ。」


 カレーを食べ終わり、かたずけを終えみんな足早に宿舎に戻る。


 すぐに山のオリエンテーリングが始まる。


 マサキは宿舎から引き返しさっきの緑色の板を、川の泥の中から拾い出しビニール袋に入れ持ち帰った。ひかりの言った通り価値があったらめっけもんだと。




「ぶぇーっつくしゅ!かぜでもひいたかな?」

 マサキは豪快にくしゃみをした。

 マサキたちの班はオリエンテーリングを実施していた。


「さすがに6月でも水遊びは早かったのよ。男子ってばかねー。」

 みどりが罵る。


「女子がいじめるよ。☆衛門なんか出してよ。」

 武藤が星川にボケを振る。


「しょうがないな~。ほれ青大将~」

 おもむろに藪から蛇をひきだしてきたのだ。


「キャーーーーーーーーーーー」

 女子たちは逃げ出した。



 さすがに班が離散しては、活動にならないので、男子は女子を探すことになった。

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