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第9話
なかには二つに分かれても、二重にからみあって離れない有機物もありました。すると魂のかけらも分かれずに少しだけ大きくなります。
からみあった有機体は回りに膜を作ります。その回りに生きた有機物やアミノ酸が集まってきます。ちっちゃな有機物の命が集まり壁を作った一つの細胞になると、魂のかけらたちも一つに融合します。
細胞はやがて二つが四つに、四つが八つに増えてゆきました。
こうして魂のかけらが融合して成長するにつれて、かすかな意識も少しずつ目覚めてゆきます。気の遠くなるような時間がかかります。
けれども途中で動かなくなってしまう生命もたくさんいました。自分より大きな生命に食べられてしまうこともあります。
消えていく命は声にならない苦しみの叫びをあげます。
天使の赤ちゃんにはその声が聞こえたのです。
宙に浮いたまま海の中に小さな手を差しのべます。動かなくなった生命を両手にすくいあげました。
赤ちゃんは泣き出します。激しくしゃくりあげて止まりません。小さな胸は悲しみでいっぱいです。