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第4話
大海原をプカプカ漂っているうちに天使の赤ちゃんは小さな湾に流れつきます。
地球に来てからどのくらい時がたったのか、時間の感覚がない天使の赤ちゃんにはわかりません。
風がピタッと静まって海面は鏡のようにおだやかです。翼のお椀もピタッと動きをとめてしまいます。
赤ちゃんは左右を交互に見わたしてからコロンと寝返りをうちました。
お椀がくるりと回転して赤ちゃんはポチャンと海につかります。翼をたたむと身体がすっぽり海の中に沈んでしまいました。
でも天使の赤ちゃんはへっちゃらです。手と翼を使ってじょうずにバランスを取ります。つぶらな目を開いてあたりを一心にながめています。
澄みきった水にキラキラと太陽の光が射しこんで、真っ白な砂のうえに波の跡がきれいな筋を連ねてどこまでも続いていました。
天国には「空気」がなかったので、天使の赤ちゃんは宇宙でも水の中でも好きなだけ動き回れるのです。
天使の赤ちゃんは泳げるのです。