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第11話


 天使の赤ちゃんの涙のしずくは、不思議なことに果てしなく広い海に見る見るうちに浸透してゆきます。海全体に広がってゆく純粋な慈しみのエネルギーは小さな魂たちを癒す力を秘めていました。


 動かなくなった有機物から放り出されて途方に暮れていた小さな魂たちは、穏やかな安らぎに包まれると次々に宙に浮かび上がります。


 赤ちゃんの手から柔らかな光が広がって魂たちを包みこみます。その光は地球全体を覆うようにどんどん広がってゆきます。純粋な愛のエネルギーがこの小さな星を包みこみます。


 どんなに小さくとも一つ一つの魂がかけがえのない存在です。


 天使の赤ちゃんはちっちゃな魂たちが天国に戻っていくのをいつまでも見守っていました。


 赤ちゃんにはわかっていました。

 

 いつの日か生命いのちは進化して有性生殖が始まります。そうすれば魂たちは新しい命に宿って天国からこの星に戻って来ることもできるのです。


 また会えるのです。


 生命いのちの誕生とともに苦しみや死や争いが生まれたこの星を、愛と慈しみが包んでいます。


 手のひらサイズの愛らしい天使の赤ちゃんは、いつもあなたのそばに寄り添って翼をパタパタしてどこへでもついて行きます。


 あなたが悲しいとき苦しいときはそっと小さな手を差しのべてくれます。


 あなたが寂しいときはそっと懐にもぐりこんできます。


 あなたが幸せなときは安心しきって肩の上で眠っています。


(完)


読んでくださってありがとうございます。

 


 

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