月光
夜目が覚めて、月の光を温かなものと信じてしまいそうなくらい、さびしく、苦しかったことがあります。その光の下に行けば、少しは温もるかもしれないと、窓際まで転がって、丸まっていたことがあります。
寒さに目覚め、温もりを 探せど、翳の色濃くて
月の光の落ち来たる 窓辺に寄りて、身を晒し
淡き光を浴びれども
気づけば可笑し、この身より 夢が凍えるここちして
褪めたこころは、不思議にも 哀しさ、ひとつ湧きいでぬ
注ぐ光は儚なくて
優しく降れど、冷たくて
この身を浸す熱もなく こころひとつも温もらず
苦しき胸を守るごと からだを丸め蹲る
わが姿のみ映しだし
沈みし部屋のひと隅に 闇をつくりてゆくばかり
月の光の優しさは 失くした人の笑みに似て
縋る、その手を見いだせず 想いも、いまは伝わらず
ただ、そこにあり、我が上に
その光のみ、惜しみなく 降らせてくれもするけれど
月に濡れても、我が頬に 涙ひとつも落ちはせぬ