↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
99/651

視線の悪意

王宮は少しも平穏無事ではない





 朝の挨拶は直ぐに終わった。

 本当に一言二言、言葉を交わすだけらしい。

 考えてみれば、執務前の僅かな時間に3人の王子から4回、挨拶を受けるのだ。

 ゆっくり話す時間があるはずもない。

 何か話があれば、この時に昼食や夕食に誘われるそうだ。


 わたしはラインハルトの隣で、一緒に頭を下げる。

 それで終了だと思っていると、国王に声を掛けられた。


「それではマリアンヌ。また、昼食の時に」


 そう言われる。


「はい」


 わたしはただ頷いた。

 正直、何て答えるのが正解なのかわからない。

 余計なことは口にしないことにした。


(何を言っても、悪く取られそうだしね)


 そんな被害妄想もわたしにはある。


 執務室を出ると、ラインハルトはわたしを離宮まで送ると言った。


「一人で帰れるので大丈夫ですよ」


 わたしは遠慮する。

 ラインハルトの執務室は王の執務室の隣にあった。

 わたしを送ったら、また戻ってこなければならない。

 それは時間の無駄だろう。

 だが、ラインハルトは譲らなかった。


「少しでも長く私が一緒にいたいのです。送らせてください」


 そんなことを言う。

 それは半分は本当かもしれない。

 だが、半分は嘘だと思った。

 わたしのことを心配しているのがわかる。


(そんなに危ないのだろうか?)


 わたしにはいまいち実感がなかった。

 だが、素直に甘えることにする。

 離宮に続くドアのところまで、送ってもらった。

 別れる時、ラインハルトの手がわたしの頬に触れる。

 撫でられた。

 優しい眼差しに見つめられる。


「ではまた、昼前に迎えに来ます」


 囁いた。

 チュッと触れるだけのキスをして、離れる。

 わたしは微笑んだ。


「いってらっしゃい」


 手を軽く振って、見送る。

 ラインハルトは嬉しそうな顔をした。

 それが可愛らしくてにこにこしていると、メアリが寄ってくる。


「おかえりなさいませ」


 声を掛けられた。

 ラインハルトがいなくなったタイミングで現れたので、どこかで見ていたのだろう。


「仲がよろしいですね」


 誉められた。


「それが面白くない人はたくさんいるみたいだけどね」


 わたしは答える。

 離宮の入口にいても、視線を感じた。

 誰かに見られている。

 それは好意的な視線とは思えなかった。






 昼少し前、ラインハルトは約束通りわたしを迎えに来た。

 二人一緒に王宮の食堂に向かう。

 食堂は二つあって、王と王以外の王族用にわかれていた。


(何故、二つ必要なのだろう?)


 わたしは首を傾げる。

 昼食くらい一緒に食べればいいのにと思った。

 そもそも、王宮の食堂で食事を取る王族は多くない。

 今はフェンディだけだと聞いた。

 三人の王子には離宮があり、食事は基本、離宮に戻って家族と食べることになっている。

 ラインハルトも昨日は父王に招かれたので王宮で食べたが、普段は離宮に戻ってわたしと一緒に食事を取るらしい。

 第二王子も自分の離宮に戻って、息子と二人で食事をしているそうだ。

 そんな話を聞いたら、食事に招き難くなる。

 明日の昼食は息子さんと二人でよろしければご飯を食べにいらしてくださいと招いてみた。

 返事は今日中に届くだろう。


 ちなみにフェンディが離宮で食事を取らないのは、妃同士の仲が悪いからだ。

 どちらかに顔を出すと角が立つらしい。

 そのため、どちらにも顔を出さないと決めていた。

 一緒に食事を取るのは、妃か子供の誕生日の時だけだという。

 それが一番、問題が起こらないそうだ。

 苦労をしながら、結婚生活を続けているフェンディをちょっと見直す。

 例えそれが、本当の恋人を隠すためのフェイクだとしても。


 トントントン。


 ラインハルトは王専用の食堂のドアをノックした。

 音もなく、ドアは開く。


「お待ちしておりました」


 執事服を着た人に出迎えられた。

 どこか、アントンに似ている。

 後で聞いたら、アントンの父親だった。


 わたしとラインハルトは席に着く。

 タイミングを見計らったように国王がやって来た。

 和やかに食事が始まる。

 交わされた会話は、当たり障りのない世間話ばかりだ。

 その理由はわかっている。

 食事中はずっと、給仕のために使用人が側にいた。

 迂闊な話が出来る状況ではない。

 そのことに、わたしは少しほっとした。

 食事を楽しむ余裕が出てくる。

 国王の世間話に付き合った。

 こんなに会話したのは、こっそりと会いに行ったあの時以来かもしれない。

 食事が終わりデザートを楽しみにしていると、王は自分の私室にお茶とデザートを運ばせた。

 そちらで食べようと言う。

 わたしはちらりとラインハルトを見た。

 ラインハルトも同じことを考えたらしくて、わたしを見る。


(とうとう来たっ)


 わたしは心の中でそう思った。

 何の目的もなく、国王がわたしを招くはずがない。

 顔を見合わせて、わたしたちは苦く笑った。

 だがもちろん、断ることなんて出来るはずがない。


 わたしはラインハルトと一緒に、王の私室に向かう。

 ソファを勧められ、腰掛けた。

 ラインハルトはわたしの隣に座る。

 守るように、ぴったりとくっついてきた。

 わたしの腰を抱く。


「仲良しだな」


 それを見て、国王は微笑んだ。


「はい」


 ラインハルトはただ、頷く。

 素直に肯定した。


「昨日は起きられなかったそうだが、今日は大丈夫なのか?」


 国王はわたしを見る。

 意味深な顔が憎らしかった。


(ポンポコめ~)


 わたしは心の中で毒づく。

 だがもちろん、口には出さない。

 実際には無言で頷いた。

 余計なことは言わない。


「それは何よりだ。たくさん可愛がられて、私に早く孫の顔を見せて欲しい」


 国王は懇願した。


「……頑張ります」


 それ以外答えようがなくて、そう返事する。

 だが、国王が言いたいのは、本当はこんなことではないだろう。

 本題を口にするのを、私とラインハルトは待った。



眠くて頭が回りません^^;

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] アントン父は侍従長とのことで、そうなると「侍従服」? そういうものがあるのか知りませんが、一人称の物語なら本人がそう思ったのなら「執事服」でいいですしねぇ ふと、アントン父ってここらで見た…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。