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賞金

評価&ブクマ、ありがとうございます。

貴族は戸籍で管理していますが、平民に戸籍はありません。課税のために家単位で登録はしていますが。←どうでもいい裏設定





 食後、マリアンヌは父の書斎で招待状を見せられた。自分の名前が宛名に書いてあることに、少なからず驚く。


「未婚か既婚か把握しているなら、年齢も把握していますよね?」


 マリアンヌは確認した。


「ああ。出生届は出しているからね」


 父は頷く。

 貴族には戸籍があり、王宮がそれを管理していた。基本的に庶子以外は出生時に届出をしている。今回の招待状はその戸籍を元に未婚の令嬢をピックアップしたのだろう。


「爵位不問はともかく、年齢も不問にするなんて。第三王子様はそこまでしないと妃が決まらないような方なんですか?」


 マリアンヌは失礼なことを口にした。自国の王子のことをマリアンヌは名前と年くらいしか知らない。

 マリアンヌは今まで、王都に行ったことがなかった。父は年に二回、建国祭と社交のシーズンに王都に滞在している。だが母が生きていた頃から父は一人で上京していた。子供達はもちろん、妻さえも王都に連れて行かない。

 その理由をマリアンヌが知ったのは母が死んでからだ。

 母は王都の貴族で、駆落ち同然で父のところに嫁に来たそうだ。そのせいで、母は実家から縁を切られている。葬儀の時さえ、母の親戚は一人も参列しなかった。


「まさか。聡明で優秀な方だよ。嫁が来ないのではなく、王子が誰も選ばないらしい」


 父は首を横に振る。


「面倒そうな人ね」


 マリアンヌは正直な感想を口にした。

 父はただ苦く笑う。


「それにしてもこのレース、賞金が破格ですよね?」


 マリアンヌは高額な賞金に引っかかりを覚えた。その理由を考える。


「それは出場意欲を煽るためじゃないか?」


 父は答えた。


「そんなことしなくても、独身の令嬢はみな参加するのではないですか?」


 マリアンヌは首を傾げる。

 王子様との結婚は貴族令嬢の夢だろう。マリアンヌは違うけど。


「そうでもない」


 父は否定した。


「最終的に、この辺の貴族の令嬢は参加しないだろうな」


 予想する。


「王族は3人、妃を持てる。その力関係は実家の支援がどのくらいあるかで決まるんだ。つまり、王子妃になれても実家からの支援がなければ、王宮では肩身の狭い思いをすることになる。それがわかっていて、娘をレースに参加させる親は少ないだろう」


 父の言葉に、マリアンヌは納得した。この辺の貴族では、十分な支援を娘にするのは難しい。


「でもそれは、妃を目指すからですよね?」


 マリアンヌはにこりと笑った。


「賞金が目当てなら、参加しない手はないんじゃないんですか?」


 招待状に書かれた賞金額を見る。


「まさか、参加するつもりなのか?」


 父は渋い顔をした。


「4位とか5位あたりを狙って、賞金を貰ってきます」


 マリアンヌは宣言する。


「生活資金はあるに越したことがありませんから」


 自立を考えているマリアンヌにとって、その額は魅力的だ。自給自足を目指しているが、それは簡単なことではない。ある程度の生活資金は確保したいと思っていた。しかし、マリアンヌには稼ぐ手段がない。この世界では女性がお金を稼ぐのは簡単なことではなかった。


「入賞する自信はあるんだな」


 父は苦笑する。


「優勝は無理でも、入賞なら出来る気がします。他の令嬢には負ける気がしません。賞金が目当てですから、1~3位はむしろ避けたいですけどね。賞金を選んでも、面倒そうだから」


 招待状をマリアンヌは隅から隅までまじまじと見た。


「そんな風に言うのではないかと思っていたよ」


 父は何とも微妙な顔をする。招待状を読んだ時から予感はあった。








賞金を取る気満々です。

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