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閑話: 主役

評価&ブクマ、ありがとうございます。

シエルの気持ちです。






 物心ついた時には、シエルの世界は姉が全てだった。


 兄弟であり、親であり、家族であり。全てがマリアンヌで、マリアンヌの全ても自分のものだと信じて疑わなかった。

 だが、年を経て違うことを知る。どんなに欲しても、姉は姉だ。

 自分だけのものにはならない。いつか誰かが姉の夫となり、自分からマリアンヌを奪っていくだろう。

 それがとても、とても、とても、シエルは嫌だ。


 マリアンヌ本人には嫁に行く気はない。一人で暮らすつもりで準備をしていた。その準備は徹底していて、姉の本気を感じる。

 だが、その気がなくたってどう転ぶかわからないのが人生だ。運命とは、本人の意思に関係のないところで動き出す。


 だからシエルは、姉に近づくものは徹底的に排除するつもりでいた。

 しかし今のところ、要注意なのはハワードくらいだ。十年以上、社交界に顔を出していないマリアンヌのことを覚えている人はそもそも少ない。

 それにはマリアンヌが取り立てて美人というわけでもないことも関係していた。

 マリアンヌはそこそこ可愛い。だが、あくまでそこそこだ。

 貴族というのは系統的に美男美女が多い。そういう貴族の中にいると普通すぎて、マリアンヌは埋もれてしまう。本人もそのことは自覚していた。

 そのせいなのか、自分は美人ではないからその他大勢なのだとよく口にする。

 マリアンヌはたまにわけがわからないことを言った。自分は主役ではないと主張する。何を言いたいのか、シエルにはよくわからないが本人は納得していた。


(誰もが自分の人生の主役なのに、どうしてそんなことをいうのだろう?)


 シエルには不思議でならない。マリアンヌはなぜか自己評価が低かった。


 確かにマリアンヌはすごい美人ではない。だが、それを補うものをたくさん持っていた。でも本人はそう思っていない。


(もっと自分に自信を持ってくれたらいいのに)


 シエルはそう思う。だが具体的にどうすればいいのかはわからなかった。

 そんな時、お妃様レースの話をパーティで聞く。

 順次、独身の令嬢のところに招待状が届くそうだが、ランスロー家にはまだ届いていなかった。


「それはなんですか?」


 話したくてウズウズしている相手に、シエルは水を向ける。

 よく聞いてくれたとばかりに、相手は話し始めた。

 第三王子の妃を選ぶレースが開催されるという。


(そのレースに勝ち残れば、姉さんの自己評価も上がるんじゃないかな?)


 一瞬、シエルはそう考えた。だが、うっかり優勝して妃に選ばれるのは困る。

 即座にないなと否定した。

 だが話を聞いていくと、商品は選べるらしい。妃にならない代わりに、賞金を貰うことも出来るそうだ。


 その日の社交界はその話題で持ちきりだった。

 令嬢たちが盛り上がるのはもちろん、その親や兄弟もなにやら盛り上がっている。

 第三王子は国王のお気に入りだ。おそらく、次の国王は第三王子だろうと言われている。

 その妃になるということは、将来は王妃になるかもしれない。


(そんな責任の重いこと、姉さんがやりたがるわけがない)


 シエルはそう考えた。

 賞金にマリアンヌが揺れるなんて、思っていない。まだまだ姉を理解していなかった。







お妃様レースに、貴族達は盛り上がっています。

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