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閑話: 王家の事情(前編)


評価&ブクマ、ありがとうございます。

王家の方の話です。







 三男として生まれたラインハルトは、小さな頃から父王の期待を背負っていた。

 2人の兄とはそれぞれ母が違う。

 父王には妃が3人いて、それぞれが独立した離宮を宛がわれていた。


 ラインハルトの母は正妃として最初に嫁いだが、なかなか子宝に恵まれなかった。父は側室を拒んだが、状況がそれを許さなかった。結局、受け入れる。そして後から嫁いだ2人の妃が先に懐妊した。

 次々に男の子が生まれ、側室だった2人は男子を産んだ順に第一夫人、第二夫人に納まった。ラインハルトの母が男子を産んだのは最後で、一番下の第三夫人に落ちる。


 だがラインハルトが知る限り、母はその順番を気にしている様子はなかった。

 父王が愛していたのは間違いなく母だ。母の生前、父王はほとんど母の離宮に通って来ていた。

 ラインハルト自身も父王に可愛がられて育った記憶がある。

 父王に母の他にも妻がいて、自分の他にも息子がいるなんて、母が生きていた頃は気づかなかった。それほど、父王はラインハルトの側にいた。


 ラインハルトが事実を知ったのは、病弱だった母が死んだ後だ。

 母の死にショックを受けた父王は一月ほど、離宮から足が遠のく。

 母の死を受け入れられないようだ。母のいない離宮に来ることが耐えられなかったらしい。


 その間、第一夫人の離宮に通っていることを侍女達の噂話でラインハルトは知る。

 侍女達にたぶん悪意はなかった。

 小さなラインハルトはまだ理解していないと思ったのだろう。噂話に興じる。

 しかしラインハルトは賢く、しっかりした子供だった。大人達が思う以上に、物事を理解している。

 理解した上で、黙って侍女達の話に聞き耳を立てていた。

 自分の立場を理解する。


 父には母の他にも妻がいた。最初に男の子を生んだのが第一夫人で、彼女は母の侍女だったらしい。母の推薦で、父が娶ったようだ。彼女の家系は多産で、子供が生まれやすいと母は考えたらしい。事実、彼女は直ぐに身篭り、男の子を生んだ。

 子供を産めないことで、母はかなり周囲から責められていたようだ。第一夫人はそんな母を助けるために、側室となったらしい。

 そんな彼女のことを知る古参の侍女がまだ離宮にはいた。おかげで詳しく、ラインハルトは事情を知る。


 第二夫人は貴族達が選んで父王に押し付けたそうだ。どんな人なのかはラインハルトは知らないが、その息子であるというマルクスのことは知っている。

 その名前を聞いて、びっくりした。あのマルクスだと思う。

 母のところには、たまにこっそりと遊びに来る男の子がいた。一人で窓から入ってくるマルクスを、母は何も言わず受け入れる。

 ラインハルトはそれが不思議だった。

 普通、窓から入ってくるのは侵入者だ。捕らえなければならない。

 だが母はマルクスはいいのだと許した。たまに自分のところに逃げてくるのだと説明する。

 その意味がラインハルトにはずっとわからなかったが、気の強い第二夫人から逃げていたらしい。

 ラインハルトはマルクスのことを誰にも言ってはいけないと口止めされていた。侍女達も薄々気づいていたが、気づかないふりをしていたようだ。関わると厄介なことになるから、知らないということにしたらしい。

 マルクスは第二夫人の子で、ラインハルトの兄だ。

 マルクスは何かとラインハルトの世話を焼いてくれたが、あれは兄だったからなのだと気づく。

 父の足が遠のいている間に、ラインハルトはラインハルトなりに情報を収集した。


 母の死から一月ほど経った頃、ようやく少し立ち直った父はラインハルトのところにやってきた。お前の側近だとルイスを連れてくる。

 少しだけ年上のルイスは、これから四六時中ラインハルトの側にいると言われた。

 母がいない分、ルイスを頼れということらしい。

 ルイスはまだ子供だったが、ちゃんとしていた。

 ラインハルトは了承する。一人ではいろいろ大変だと感じていた。






 その後、ラインハルトとルイスとは一蓮托生の人生を歩んでいた。

 ラインハルトはいやおうなく、王宮の煩わしい諸々に巻き込まれる。

 第二夫人は第一夫人を目の敵にしていた。寵愛を受ける第一夫人が妬ましいらしい。

 マルクスはいつもフェンディと競わされて大変そうだった。

 母の侍女だった第一夫人に強力な後ろ盾はなく、貴族たちの支持を受けている第二夫人の方が力は持っている。

 だが父の愛情はラインハルトに一番に向けられた。3人の息子の中で、明らかに贔屓されている。


 母が死んだ後、父王の寵愛は第一夫人に移った。だが父が自分の後を継がせたいのは、ラインハルトのようだ。

 それが事態をややこしくする。

 王宮にはいつも愛憎が渦巻いていた。

 それをラインハルトは冷めた目で眺める。愛なんて目に見えないもので右往左往するのは愚かだと思った。





ラインハルトは冷めた子に育ちそうです。

当初、ラインハルトの母は一歳になる前になくなったことにしていたのですが、それだけとちょっと都合が悪いので5歳に変更しました。ただし、ほぼ寝込んでいたのでラインハルトはあまり会えていません。そんな妻を心配して、王は通ってきていたのです。

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