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流れを変える

メリーアンの中身は常識のあるマリアンヌです。





 見合いは大方の予想通り、全て失敗(?)に終わった。

 アドリアンは結局、誰も選ばない。


 見合いした令嬢のほとんどはちゃんとしていた。娘を勝手気ままなわがままに育てるほど、貴族達は愚かではない。娘の言動一つで家が大変なことになる可能性だってあることを貴族達は自覚していた。ほとんどの貴族はどこに出しても恥ずかしくないよう、娘をきちんと教育している。

 むしろいい子過ぎるから、マリアンヌとしてはもっと幸せな結婚をして欲しいと、他人事ながら願ってしまった。愛のない結婚生活になる可能性が非情に高い結婚をあえて選ぶ必要はないと思う。

 どうしようもなくアドリアンに惚れているとかいう場合は違うかもしれないが、母親から見ても性格的に破綻しているアドリアンにそこまで入れあげているお嬢さんはいなかった。


 何はともあれ、ノルマのようになっていた見合いを全て終えて、マリアンヌはほっと一息つく。肉体的にはともかく、精神的にはけっこう疲れていた。

 だがこれで、お妃様レースの準備に打ち込める。一歩、前進した気がした。


 それに無駄に思えた見合いは、全てが無駄ではなかった。意外なところで意外な効果を生み出す。


 見合いの場はほとんどメリーアンが社交の経験を積む場と化していた。

 メリーアンはそれを最大限、生かす。

 王族の姫として、十分すぎる教養とファッションセンスを見せ付けた。

 9歳の少女が妙齢の令嬢達よりずっと輝く。

 それは反感を買うのでは?とマリアンヌは少し心配した。だが、杞憂だったらしい。

 そんなメリーアンの姿は、かなり好意的に受け止められた。

 皇太子の姫は令嬢としてちゃんとしているという評判が流れる。

 マリアンヌの悪評は今でも時々、聞こえてくることがあった。わりと身に覚えのない話も多いのだが、全てが嘘でもない。否定がしづらく、結果的に放置することになった。

 そのため、マリアンヌを悪女だと思っている貴族は少なくない。

 それは自分がちゃんと社交を頑張らなかった結果でもあるので、マリアンヌは誰も責められなかった。妊娠、出産、子育てのループを理由に逃げてきたツケが廻ってきている。

 だがそれは娘の評判にも影響した。

 王子である息子達の評判はマリアンヌのことではあまり左右されない。本人達に実績もあるし、何かと表に出る機会が多いので人となりもそれなりに伝わる。アドリアンもオーレリアンもやる気のない社交は駄目だが、仕事ならちゃんとコミュニケーションが取れた。

 それほど悪い評判は立たない。

 だが、姫であるメリーアンは違った。王族の娘は公の場に出ることが少ない。親の、特に母親の評判がそのまま娘の評判に繋がることが多い。

 マリアンヌの悪評はメリーアンの評価を落としていた。メリーアンはいまいち敬遠される。関わるべきかそうでないのか、貴族達は慎重に見極めようとしていた。


 そんな自分の状況をメリーアンは自力で変える。

 見合いに参加した貴族のほとんどはメリーアンを気に入って帰った。

 その後、息子の嫁に……という話がまだ9歳なのにあちこちから出ている。結婚はまだ先でも、婚約者はいても可笑しくはなかった。

 誰の見合いだったのかと、ラインハルトはマリアンヌと苦笑し合う。






「ふふっ」


 寝ようとベッドに入ったところで、突然、思い出し笑いをした夫をマリアンヌは不思議そうに見た。


「何かいいことがありました?」


 問いかける。


「メリーアンは、マリアンヌには少しも似ていなくて。残念に思っていたんだ」


 突然、ラインハルトは打ち明けた。


「……はあ」


 何とも間の抜けた相槌をマリアンヌは打つ。そんなこと聞かされて、どんな顔をすればいいのかわからなかった。そしてそれは薄々気づいていたことでもある。たぶんラインハルトは子供達の中では一番エイドリアンを可愛がっている。いくつか理由はあるのだろうが、たぶん、その一つは母親似だからだ。


「だから一人娘だけれど、子供達の中で特別可愛いと思ったことはない。自分によく似た顔にはたいして興味を持てなかったし、いずれ嫁いでいなくなってしまう。深入りしたくないと、むしろ思っていた」


 淡々と語る内容は、わりと酷い。だがマリアンヌは黙って最後まで聞くことにした。


「でも、中身はマリアンヌに似ていた。意外なくらい。しかも、王族としての常識も備えた、マリアンヌ」


 ラインハルトは妻を指差す。


「外見が自分で、中身はマリアンヌで、王族の常識も持っていて。もしかして、うちの娘は最強なんじゃないだろうか?」


 真顔で語った。


「ははっ」


 マリアンヌも思わず、笑ってしまう。


「今頃、娘が可愛くなってきたの?」


 ラインハルトに尋ねる。


「……遅いだろうか?」


 ラインハルトは聞いた。質問に質問で返す。


「そんなこともないんじゃない」


 マリアンヌは答えた。


「娘を可愛がるのに、遅いなんてないでしょう。嫁に行っても時々は帰ってきてくれるよう、今から精一杯可愛がったらどう?」


 ラインハルトに提案する。


「ああ。そうするよ」


 ラインハルトは頷いた。マリアンヌに手を伸ばす。その手はいやらしく動いた。


「今からもう一人とかは無理です」


 マリアンヌは言われる前に断る。


「残念」


 笑いながら、でもラインハルトは手を止めなかった。









なんだかんだとバカップルです。

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