表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
487/651

会議

会議は面倒です。





 アルス王国は王制だ。国王には独裁権がある。国の重要なことを国王は一人で決めることが出来た。

 だが国を動かすためには細かな決め事が必要になる。

 実際には、国王が判断する事案よりその下の重臣達が決済する事案の方がずっと多かった。


 そんな重臣達を集めた会議が、月に一度くらい定期的に開かれている。何か問題があればその都度集められるが、何もない時でも通常業務として集まることになっていた。

 細かな決め事を承認したり、相談したりする。国王の手を煩わせるまでもないと判断される案件はたくさんあった。そういうのは定例会議でさくさくと決められていく。

 その会議には国王や皇太子も出席していた。

 だが基本的に会議の流れを見守るだけで、意見を出すことはほとんどない。

 そのせいか、会議はどこかまったりとした空気が漂っていた。

 だが、今回はちょっとピリピリしている。

 すでに、お妃様レースのことは噂になっていた。直接根回しを受けた者も、そうでない者も、ある程度は詳細を掴んでいる。

 ラインハルトもルイスも、噂が流れることを想定した上で動いていた。

 その方が、話が早い。

 むしろ、ある程度把握してもらっていないと困ると思った。

 この場に重臣として参加しておきながら、そんな噂の一つ耳に入らないようでは貴族として失格だ。情報収集を怠ったとしか言えないだろう。


 ラインハルトはその日の議題が全て終わるのを待っていた。最後に、お妃様レースについて、切り出そうとする。

 重臣達はちらちらとラインハルトの様子を窺っていた。お妃様レースのことを気にしている。

 レースに対し、それぞれがそれぞれの思惑を持っていた。


(王妃と言っても、この国の女性にはたいした権限は与えられない。それなのに、必死だな)


 ラインハルトは心の中でぼやく。

 重臣達の目はぎらぎらしていた。野心に燃えている。

 それは決して好ましいものではないが、これが普通なのだとも知っていた。

 むしろ、娘を皇太子の妻にしながら、それを利用しないマリアンヌの父親の方が珍しい。

 ラインハルトはふと、義理の父であるランスロー男爵のことを思い浮かべた。


 辺境地の男爵である彼はもちろん、この重臣達だけが集まる場にはいない。彼が王都に出てくることは滅多になかった。

 普段は領地にいて、領地経営に勤しんでいる。

 ランスロー領は比較的豊かな土地だ。気候が温暖で、農作物が豊富に取れる。食糧事情はかなり良かった。ただし、男爵家はそれほど豊かでもない。理由は簡単だ。ほかの領地に比べて、税率が低い。もっと高く取れるだろうが、男爵はそれをしなかった。その代わり、農民達に互助会などを作らせる。税金とは別に一定の割合で金を集め、農業に必要な公共事業などを自分達の手で行わせていた。

 農民達は何が必要か話し合い、どう改善すればいいのかを自分達で考える。

 他の領地に比べ、ランスロー領の農民達は生き生きしていた。やりがいを感じているらしい。


 ラインハルトは最初、そんなことをすれば領主なんて必要ないと平民達は思うのではないかと危惧した。自分達で全てやれると誤解するかもしれない。だが、実際は逆だった。彼らは自分達の自由が、男爵の庇護下にあるから実現していることをよく理解していた。他の領主では無理だとわかっているから、ランスロー家に忠誠を誓う。

 ランスロー領はとても領地経営が上手くいっていた。それにはマリアンヌもいろいろと絡んでいるらしい。だが、その話を妻がすることはなかった。自分が表に立って目立つことをとても嫌がる。ラインハルトも無理に聞き出すつもりはなかった。マリアンヌに嫌われたくはない。

 ラインハルトは口元に小さく笑みを浮かべた。妻のことを考えると、口元が緩んでしまう自覚はある。

 そんな自分を自分でもどうかと思った。だが、マリアンヌより愛しい存在はない。家族も国も民も、マリアンヌが大切にしているから守りたいと思った。


 そんなラインハルトの表情の変化に、重臣達は内心では戸惑う。

 何を企んでいるのだろうと、怯えた。妻のことを考えているだけだなんて思いもしない。


「それでは最後に、皇太子よりお知らせがあります」


 滞りなく会議が終わりそうな頃、ルイスの声が響いた。

 重臣達がざわりとする。来たかと、身構えた。


「来年、我が息子アドリアンの妃を選ぶお妃様レースを開催する。未婚で初婚の貴族女性になら、皆に参加資格がある。詳細は追って連絡するが、参加を希望するものは準備を進めてくれて構わない」


 ラインハルトは告知する。

 それは提案でも相談でもなかった。決定事項として、通達する。

 貴族達は戸惑った。


「お恐れながら……」


 一人の貴族が遠慮気味に口を開く。


「それはもう、開催が決まったことなのでしょうか?」


 誰もが心の中で思っていたことを口にした。


「予算やその他の面で詳細を決めるのはこれからになる。だが、開催するのは決定事項だ。国の行事として行うか、祭りの一環として行うかの違いだけだな」


 ラインハルトは言い切る。国から予算が出ないなら、祭りとして収益を出せばいいと言い出したのはマリアンヌだ。貴族達が面倒なことを言うなら、締め出せばいいと笑う。

 だが実際には、国の行事として行った方が後々面倒は少なかった。ラインハルトは貴族達も巻き込んでしまおうと思っている。そのための告知だ。締め出されたくなかったらぐだぐだ言うなと貴族達に警告する。それを読み取れない貴族はいないだろう。

 レースの開催に噛んでいた方が、自分の娘が有利になることを貴族達は知っていた。


「未来の皇太子妃を選ぶのですから、国として行うのが妥当でしょう」


 誰かがそう言う。締め出されたくないという思惑がそこには滲んでいた。


「反対する者はいないのか?」


 ラインハルトは確認する。

 誰も声を上げなかった。全員が根回しされている訳ではない。ルイスが話を持ちかけたのは1/3くらいだ。だが残りも、賛成した方が利があると思っている。


「そうか。では後日、改めて詳細を話し合うことにしよう」


 ラインハルトは話を締めた。


「陛下もよろしいでしょうか?」


 父に聞く。


「皆が良いなら、私は構わない」


 国王は返事をした。もちろん、事前に話しは聞いている。そもそも、最初にお妃様レースを強行した本人だ。反対なんて出来るわけがない。

 ラインハルトはそれを聞いて満足な顔をした。






賛成や反対を取るとあれこれ出てきて大変なので、いっそのこと全部飛ばしてしまいました。より自分に利があるよう、皆がいろいろ画策するので。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ