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呼び出し 3

 わりと仲良しです。






 自分に無茶振りしてきた相手を国王はまじまじと見つめた。

 マリアンヌは何処にでもいそうな女だ。そこそこ可愛らしい顔立ちはしているが、美人というほどではない。華やかさも持ち合わせておらず、どちらかといえば地味な方だ。


 “良くも悪くも普通”


 初めて見た時、そう思った。だが何故か自慢の息子はマリアンヌが気に入ったらしい。

 自分より10歳近く年上の、いき遅れた令嬢を選んだ気持ちが国王には理解できなかった。

 頭も良く、容姿端麗な息子は相手を選び放題だったはずだ。何故よりによってこんなハズレを選んだのかと不思議に思う。

 そう思うのは周囲も同様で、もともと男爵令嬢だったマリアンヌには風当たりが強かった。何をやっても悪い方に解釈される。


「私に無茶振りするのなんて、マリアンヌくらいですよ」


 国王はため息をついた。


「ちょっと可愛い孫達へのお手伝いを頼んだだけなのに、無茶振りなんて人聞きが悪いですわ、陛下」


 にこやかにマリアンヌは言い返す。


「また、悪女だなんだと言われますよ」


 国王は苦笑した。


「何をしても何もしなくても、そういう評価なのでそこはもう気にしていません。それに、今回の件は陛下が何も言わなければ、わたしが頼んだなんてばれない話ですよね?」


 マリアンヌは真っ直ぐ、国王を見た。

 国王はやれやれという顔をする。平穏無事な生活を送りたいなんて、よく言うと思った。

 自分から波風を立てている気がする。何もしなければいいのに、何もしないことが出来ないのがマリアンヌだ。


「平穏無事な生活を送りたいなら、何故、ラインハルトと結婚したんです?」


 聞いてみる。

 前から不思議に思っていた。ラインハルトがべた惚れして口説き落としたのは知っているが、本気で嫌ならマリアンヌには逃げ切ることが出来ただろう。

 そういう知恵とそれを実行に移す行動力を彼女は持っていた。

 普通の令嬢のように流されたりはしない。


「自分でも不思議に思っています」


 マリアンヌは頷いた。


「王族なんて、面倒でしかないのに」


 ぼやく。


「はっきり言いますね」


 国王は苦笑した。


「でも陛下もそう思っているのでしょう?」


 マリアンヌは尋ねる。真っ直ぐ、射抜くような目は心の中まで見透かしそうだ。


「そうですね。面倒ですね」


 国王は認める。

 王子になんて、生まれたくなかった。もっと楽な人生が世の中にはあるだろう。権力には責任がついて廻る。国王は楽な仕事ではなかった。


「面倒なことになるとはわかっていたのに、逃げられなかったんですよ。……愛ですかね?」


 少し考えて、マリアンヌは国王に聞く。


「なんで私に聞くんですか?」


 国王は困った。


「ラインハルト様が他の人のものになるとか、自分以外にも妃を娶るとか、我慢出来ないんです。そういうのを一言で表すなら愛だと思うのですが、わりとドロドロした感情なので愛と呼べるほど綺麗なものではないんですよね」


 ううーんとマリアンヌは考え込む。


「愛が綺麗なものとは限らないんじゃないですか」


 国王は真面目に答えた。


「……」


 マリアンヌは少し驚いた顔をする。


「何です?」


 国王は小首を傾げた。


「真面目な答えが返って来ると思わなかったので、少し驚きました」


 マリアンヌは笑う。

 国王は顔をしかめた。


「……ラインハルトは、あなたのどこを好きになったんでしょうね?」


 ため息を吐く。


「不思議ですよね」


 マリアンヌは大きく頷いた。


「もっと相応しい令嬢はたくさんいたのに。いき遅れの年上を選ぶなんて物好きだと思っています」


 ずばり言う。

 マリアンヌの自分の評価はわりと辛い。


「まあ、そういうところでしょうね」


 国王は小さく笑った。

 それを聞いて、マリアンヌは微笑む。


「誉めていただいたみたいで、ありがとうございます」


 礼を言った。


「アドリアンとオーレリアンのこと、よろしくお願いしますね」


 さらっと頼み込む。

 その件を忘れてはいなかった。


「……善処しましょう」


 国王は約束する。

 マリアンヌは満足な顔をした。





 狸さんとはいい関係を築けていると思っています。

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