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建国祭

いよいよお祭りです。





 市井には数日前から噂が流れていた。




「恒例の王族方への謁見の時、今回は変わったものが見られるらしいぞ」


 酒場で、男はそんなことを口にする。

 男の主は大商人で、仕事で城へ出入りしていた。その時、大広間まで続く廊下に見慣れないものがあることに気づく。肖像画が飾ってあった。肖像画の下には一つ一つ説明書きがついている。一目でそれが歴代の国王の肖像画だとわかった。たまたま通りかかった使用人を捕まえて話を聞くと、建国祭の謁見に並んだ人々が退屈しないよう王家秘蔵の歴代の肖像画が飾られてあるのだと教えられる。長時間並ぶのは暇だろうと、皇太子が発案したらしい。それを聞いて、商人はいたく感動した。自分の家の使用人たちにその話をする。男はその話を聞いた中の1人だ。


「変わったもの?」


 男と同じテーブルにいた別の男が問う。


「歴代の国王様の肖像画だそうだ。王家が秘蔵しているそれが大広間へ続く廊下に飾ってあるらしい」


 男は自慢げに話す。王宮について知っていることが誇らしかった。


「それはつまり、謁見の列に並べば、オレたちもそれを見られるってことか?」


 別のテーブルに座っていた男が、男の話を聞いて確認する。


「そうなるな。皇太子様が、謁見のために並ぶオレ達が退屈だろうと、王家秘蔵の絵を飾ることを提案してくれたらしいぞ」


 男の話に酒場中が耳を傾けていた。

 実は皇太子の評判は市井ではかなりいい。マリアンヌが手を出したあれやこれやは大抵、皇太子の功績として市井には伝わっていた。自分達の生活をちょっと便利にするようなものを流行らせてくれる皇太子は人気が高い。それで潤う商人も少なくなかった。


 こうして、肖像画のことは市井にあっという間に広まる。肖像画見たさに、当日は例年以上の人が謁見に訪れた。

 建国祭はいつも以上の賑わいをみせていた。






 清々しく晴れた青空をマリアンヌは見上げた。天気がよくてほっとする。雨天だったら、いろいろ考え直さなければいけなかった。さすがに、肖像画が傷むようなことは放置出来ない。


「環境破壊と無縁の世界では天気も穏やかね」


 独り言を漏らした。


「何の話だ?」


 聞きとめたラインハルトは尋ねる。

 2人は午後からの謁見のために、諸々の準備に追われていた。アドリアンとオーレリアンはすでに国王の横で謁見の儀に参加している。午前も午後も通して参加する二人が実は体力的に一番苦しいだろう。

 12歳の子供に少し酷かなとマリアンヌは思った。だが、大広間に市民が出入りする時は休める。ずっと立ちっ放しになるわけではないので、頑張ってもらおうと気持ちを切り替えた。


「ちゃんとやれているかしら?」


 マリアンヌは心配を口にする。


「大丈夫だろう」


 ラインハルトは微笑んだ。


「あの子たちは賢い」


 ラインハルトの言葉に、マリアンヌは頷く。


「私としては妊婦の君の方が心配だよ」


 そっとラインハルトの手がマリアンヌの腹部に触れた。


「不調を感じたら、直ぐに休んでくれて構わない。謁見は私とアドリアンたちだけでも大丈夫だから」


 気遣う。


「ええ。何もなければお言葉に甘えて休むんだけど……。今回はアドリアンを見た人々の反応が見たいから」


 少し無理をして、マリアンヌは参加できるところまで参加するつもりでいた。


「わたしに会いに来るつもりだったシエルをランスローに押し留めてまでセッティングしたんだから。上手く噂になってくれないと困るわ」


 苦く笑う。

 賢王の肖像画は20代の頃のものだ。12歳のアドリアンより、シエルの方が年齢的には近い。シエルの方が肖像画に似ていると噂になるのをマリアンヌは恐れた。

 そのため、建国祭に来るつもりだったシエルに今回は王都に来るのを見合わせるように頼む。領地に篭ってもらっていた。

 姉に会うつもり満々だったシエルには文句を言われる。


「気苦労ばかりかけているな」


 ラインハルトは申し訳ない顔をした。


「まあ、平穏無事な人生とは言い難いわね」


 マリアンヌは苦笑する。


「でも後悔はしていないわよ」


 自分で選んだことなので、何があっても悔いることはないだろう。


「私の妻は素敵な人だね」


 ラインハルトは甘い雰囲気を醸し出した。


「ごほん」


 わざとらしい咳払いが響く。


「そういうの、夜に寝室でやってください」


 ルイスは冷めた目で2人を見た。

 部屋にいたのは2人だけではない。公務中なので、ルイスも一緒だ。


「すまない」


 ラインハルトは苦笑した。









ルイスは元気です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ルイスはハイライトが仕事を放棄し、焦点の合わない虚ろな眼を開き、ぶつぶつとつぶやいていたのでしょう 「イエイエ 殿下 イツモノ事デゴザイマス  殿下ノ臣ハ 何モ聞イテオリマセン 何モ見テオリ…
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