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愛のムチ

アドリアンとオーレリアンは基本的に真面目です。





 自分達の部屋に入ると、オーレリアンはベッドに向かった。さっさと寝ようとする。


「もう寝るのか?」


 背後から不満の声が上がった。

 振り返ると、アドリアンが頬を膨らませている。


(子供みたいだな)


 そう思ったが、12歳の自分たちはまだ十分子供であることを思い出す。

 今回の人生はなんだか濃い。

 もっとずっと長い時間を生きている気がした。


(まだたった12歳か)


 そんな風に思う。


「明日も仕事だろ」


 オーレリアンはアドリアンを諭した。もう寝ようと促す。


「……」


 アドリアンは不満なそうな顔はそのままで、だが、大人しく一緒にベッドに入る。

 横になった。

 キングサイズのベッドは十分に広い。12歳の少年2人くらい、余裕だ。


(別にベッドは一つでも構わないんだけど……)


 オーレリアンは心の中でぼやく。


(たまには一人になりたい)


 常にアドリアンが一緒なので、一人の時間というものがオーレリアンにはなかった。一人でぼーっと何も考えずに過ごす時間もたまにでいいから欲しい。

 だがそんなことをアドリアンに言えば、大騒ぎになるのはわかっていた。

 それを説得してまで、その時間が欲しいわけではない。

 そんなことをつらつらと考えていると、アドリアンが覆い被さってきた。

 抱きつかれる。


「重い」


 オーレリアンは文句を言った。

 だが、アドリアンは上から退かない。

 オーレリアンは諦めた。その背中にそっと手を回す。


「どうした?」


 優しく背中を撫でながら、問いかけた。


「学校、なんとかなると思うか?」


 アドリアンは聞き返す。


「……」


 オーレリアンは黙り込んだ。


「正直、難しいな」


 正直に答える。


「アドリアンはどう思う?」


 意見を聞いた。


「同じ」


 アドリアンはため息をつく。


「いろいろ考えたが、まったく出来る気がしない」


 首を横に振った。


「まず、財源がどうしようもない。継続することを前提に考えるなら、寄付とかそういうのに頼るわけにはいかない。かと言って、そこに回せるほど国の予算は潤沢ではない。会議にかければ、そこに回す金があるならこっちにまわせという意見が当然出るだろう。そもそも、どのくらいの予算が必要かも想像がつかない。国内全てにとなるとものすごい数だ。とても、そこに回せる予算はない」


 アドリアンの意見にうんうんとオーレリアンは同意した。


「場所の問題もある。ある程度の人数は集まるから、それなりに広い場所が必要だろう。それがなんとかなったとしても、今度は人材不足という問題が出てくる。誰が子供達に読み書きを教えるんだ? 冬の間しか稼動しないのに、教師は手配出来ないだろう」


 ざっと思いつく問題をアドリアンは口にした。


「そしてそれら全てが奇跡的に上手くいっても、冬の間で仕事がないとはいえ、親が子供達を学校へ通わせるかどうかはわからない。苦労して始動した学校に、生徒が集まらなかったら笑うに笑えない」


 オーレリアンはアドリアンの言葉の続きを引き受け、ため息をつく。


「酷すぎる無茶振りだ」


 愚痴った。


「わかっていて、母様は丸投げしているんだよな?」


 アドリアンは確認する。


「もちろん、そうだろう」


 オーレリアンは苦笑した。


「……愛がない」


 アドリアンはぼやく。


「逆だろ。愛のムチなんだよ」


 オーレリアンは何とも微妙な顔で呟いた。








獅子の子落としですね。

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