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家族会議3

話し合いは続いています。アドリアン視点です。





 アドリアンは話の流れに困惑した。

 家族会議の結果は外に持ち出さないと母は言うけれど、安心は出来ない。決まったことが実現するよう、母は努力をする人だ。そして努力に見合う以上の成果を出す。

 母は男性に生まれれば存分にその能力を発揮して、一廉の人物になれただろう。尤も、本人はそんなこと少しも望んでいないだろうが。

 ここで決まったことは、数年後には現実になる気がする。そして明らかに今、自分が将来国王になる路線で話が進んでいた。


「……」


 アドリアンは何とも複雑な顔をする。


 アドリアンが自分の母と弟が普通とは違うことに気づいたのは、1歳になるかならないかの頃だ。

 2人はよく、2人だけで秘密の話し合いをしていた。その時は、オーレリアンもとてもしっかりとした口調で話す。

 それをずっと、アドリアンは不思議に思っていた。全てを記憶しているアドリアンは、2人の会話も全部覚えている。その時は意味がわからなくても、後から理解することもあった。


 アドリアンは自分より弟の方がしっかりしていることに、生まれて数ヶ月で気づいた。自分はオーレリアンを真似ればいいのだと、察する。

 そういう意味では、元々アドリアンは頭のいい子だった。理解が早い。オーレリアンを真似ることによって、普通より早いスピードで成長した。

 そしてある日、母と弟の抱える秘密が、自分が思っている以上に大事であることを知る。

 特に、オーレリアンの秘密は決して、誰にも打ち明けてはならない種類のものだった。


 アドリアンにも秘密はある。全てを覚えていることが、普通ではないことをアドリアンは知らなかった。最初にそのことに気づいたのは母だ。

 母は何とも悲しげな顔をする。全てを覚えているのは、大変だろうと心配された。

 だが、アドリアンには心配される意味がわからなかった。その頃のアドリアンにとって、世界のほとんどは離宮の中だ。記憶のほとんどは母とオーレリアンのことになる。2人に関することで、忘れたい記憶なんてない。むしろ、何一つ忘れずに覚えておけるのは嬉しかった。

 母の心配を理解したのは、寄宿学校に入ってからだ。

 そこにはいろんな人間がいる。悪意を持って接してくる人間もいた。

 忘れてしまえは許せることも、忘れられないから許せない。忘れられないということは大変なことなのだと、身に染みた。同時に、自分が今まで、母に守られていたことをひしひしと感じる。

 それでも、寄宿学校では貴重な経験をした。離宮で暮らしていたら、知らなかったこと、わからなかったことをたくさん知る。

 その中で一番大きいのは、オーレリアンの存在の大きさに気づいたことだろう。

 オーレリアンとは小さな頃から常に一緒にいた。離れることはほとんどない。だが学校では、一緒に居られない時間も当然ある。そうやって強制的に引き離されて初めて、自分はオーレリアンが居なければ駄目なことを知った。

 依存だと言われようが、甘えだと責められようが、構わない。自分にはオーレリアンが必要だ。

 アドリアンは考えた。どうすれば、オーレリアンの側にいることが出来るのか。どうすれば、引き離されないのか。

 そして、オーレリアンを王にして自分がそれを支えればいいという結論に達した。


「私は王になりたくない。オーレリアンを王にして、その側近としてずっと側にいて支えたい」


 自分の希望をアドリアンは口にする。

 母は情が深い人だ。息子の希望を蔑ろにしないことは知っている。


「それは、逆でもいいんじゃないか?」


 そう言ったのはオーレリアンだ。


「え?」


 アドリアンはオーレリアンを見る。


「アドリアンが王になり、私が側近として側に居て、支えよう。……それでは駄目なのか?」


 オーレリアンもアドリアンを見た。


「駄目ではないけど……。本当に離れない? 約束できる?」


 アドリアンは疑った。自分はオーレリアンが居なければ駄目だ。だがオーレリアンは自分が居なくても大丈夫なことを知っている。

 だから、アドリアンは王という位にオーレリアンを縛り付けるつもりでいた。そうすれば、どこにも行けない。


「アドリアンは私がいないと駄目なことくらいはもう知っている」


 オーレリアンは困った顔で笑った。


「アドリアンが望む限り、側にいると約束するよ」


 指切りする?と小指を差し出す。


「……」


 アドリアンは考え込んだ。さすがに簡単には決断出来ない。国王になるという言葉の重さは知っていた。


「王になったら、オーレリアンに側にいろと命令も出来るわね」


 マリアンヌはぼそっと呟く。


「!?」


 弾かれたように、アドリアンは母を見た。


「国王も悪くないかもよ」


 マリアンヌは笑う。それは悪魔の囁きだ。


「それなら、まあ……」


 アドリアンは頷く。断る理由がなくなった。もともと、自分かオーレリアンのどちらかが国王になるのだろうとは覚悟していた。


「では、アドリアンを次の皇太子にする方向で動きましょう」


 マリアンヌは微笑む。

 結局、母の思惑通りにことが進んでいる気がアドリアンはした。








大人びていても、まだ12歳です。意外とチョロい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] アドリアンがちょろ‥‥、いや、かわいい! 小さい子に大人がよくやるやつ(笑)
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