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家族会議2

家族会議は続いています。




 ラインハルトは意見を求められた。

 妻と子供達の視線が自分に集中するのを感じて、ふっと笑う。


「?」


 そんな夫をマリアンヌは不思議そうに見た。


「ラインハルト様?」


 小さく首を傾げる。


「失礼」


 ラインハルトは謝った。


「やっと仲間に入れてもらえた気がして」


 そう続ける。

 マリアンヌと双子達がなにやらこそこそと密談していることに気づいたのは、子供達が二つか三つの頃だ。最初はまさかと思う。相手は小さな子供だ。話し合いなんて出来るはずがない。

 だが考えてみると、マリアンヌは昔からアドリアンとオーレリアンを大人のように扱っていた。本人の意思を尊重し、子供だからと親の勝手にはしない。そういう子育ての方針なのだと最初は思ったが、エイドリアンが生まれてそうではないことに気づいた。マリアンヌが特別扱いするのはアドリアンとオーレリアンだけだ。エイドリアンや他の子は普通に子供として扱っている。

 マリアンヌにとって、2人だけが特別なのだろう。そしてその理由を、たぶん自分に話すつもりはない。

 信頼されていないとはラインハルトは思っていなかった。愛されている自信もある。だが、言えない何かがあるのだろう。そして言わないことを決めたマリアンヌには聞いても無駄なことは知っていた。


(穏やかで当たりは柔らかいが、基本的には頑固だ)


 マリアンヌを見ながら、ラインハルトはそう思う。


「人聞きの悪い言い方ですね。仲間はずれになんて、していませんよ」


 マリアンヌは反論した。だが一瞬、ぎくっとしたことをラインハルトは見逃さない。自覚があるのだろう。


「それより、ラインハルト様の考えを聞かせてください」


 マリアンヌは話を進めるよう促した。

 そうだねと、ラインハルトは頷く。


「私はね、国王というのは必ずしも有能でなければいけないとは思っていない」


 ラインハルトはゆっくりと子供達の顔を見た。


「もちろん、有能な方がいいのは事実だろう。無能な王は周りが苦労する。だが、国王になるための資質として一番大事なのはそこではない。人の本質を見抜けるか、人の意見に耳を傾けることが出来るか、人を上手く使うことが出来るか。国王というのは優秀な人材を適材適所に配置することが出来れば、それで十分務まるんだよ」


 小さく笑う。


「確かにそうですね」


 困惑した顔をする子供達とは違って、マリアンヌは妙に納得した。


「国王がどんなに有能でも、実際に現場で仕事をするのは国王ではありません。国王は指示を出すだけで、それを実行するのは現場にいる人間ですもの。有能な人間はむしろ、現場に欲しいですね」


 やたらと実感がこもっている。


(何かあったのか?)


 そう思ったが、話がずれるのでラインハルトは何も聞かなかった。


「アドリアンとオーレリアンはどちらも有能だ。国王になるのに不足はない。だが人付き合いの上手さでは、オーレリアンよりアドリアンの方に分があると思う。アドリアンには社交性があって、オーレリアンはどちらかと言えば内向的だ」


 最後の一言に、アドリアンは反論したい顔をする。


「でも、それは……」


 何かを言いかけ、止めた。アドリアンの手をオーレリアンの手が握っている。止めたのはオーレリアンらしい。


「オーレリアンが国王になることを望むなら、これから社交性を身につけていけばいいだけの話だ。だが、本人はそれを望んでいないのだろう?」


 ラインハルトはオーレリアンを見る。


「望みません」


 きっぱりと、オーレリアンは言った。


「私だって、国王になることなど望んでいない」


 アドリアンは首を横に振る。


「アドリアン、落ち着きなさい」


 マリアンヌはアドリアンに声をかけた。


「ここは家族会議の場で、次期国王を決める重臣達の会議の場ではないのよ。ここで私達がどんな結論を出しても、それが実現するとは限らない。むきになる必要なんてないわ。わたしたちはだだ、家族として今後の方針を決めたいと思っているだけ。ここで決めたことをわたしもラインハルト様も外に持ち出すつもりはない。……そうですよね?」


 マリアンヌはラインハルトを見る。


「ああ。焦る必要はない。そもそも、父上が退任するのはまだまだ先だし、その次が私であることまでは決まっている。アドリアンたちに順番が廻ってくるのは、ずっと先の話だよ」


 ラインハルトも頷いた。


「……」


 アドリアンは黙り込む。だがその顔は不満でいっぱいだ。頬を膨らませている。

 それが子供らしく可愛くて、ラインハルトは目を細めた。









ラインハルトも、妻と双子がこそこそやっていることには気づいています。

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