家族会議
家族会議中です。
騒がしい子供達を寝かしつけた後、マリアンヌはみんなのところに戻った。
ラインハルトたちはお茶を飲んでいる。マリアンヌを待つ間、時間を潰していたようだ。
「マリアンヌにもお茶を」
戻ってきた妻を見て、ラインハルトがメイドに言う。この場合のメイドはメアリではない。メアリはマリアンヌを手伝って、子供たちを寝かしつけていた。
座ったマリアンヌにカップが差し出される。
「ありがとう」
マリアンヌは受け取って礼を言った。
「片付けは明日でいいから、今日はもう下がっていいわ」
メイドとメアリの両方に言う。
それを人払いだと、メアリは察した。聞かれたくない話があるらしい。
「はい」
もう1人メイドを引き連れて、メアリは部屋を出た。
マリアンヌは一口、紅茶を口に含む。ほっと小さく息を吐いた。
子供達を寝かしつけると、一仕事終えた感がある。
「毎日、大変ですね」
オーレリアンは母を気遣った。
「子育てが戦争だってこと、2人がいなくなって思い出したわ」
マリアンヌは苦く笑う。だがそれはそれで楽しんでいた。
母のそういうところをアドリアンもオーレリアンも知っている。
「それで、何があったの?」
真っ直ぐ、マリアンヌはオーレリアンを見た。
「ちょっと、失敗しました」
オーレリアンは反省する。落ち込みながら、状況を説明した。子供みたいにむきになったことに凹んでいる。
「凹むほどの失敗はしていないでしょう?」
マリアンヌはケラケラ笑った。
「オーレリアンにはそれくらい、子供っぽいところがあった方が可愛げがあっていいわよ」
そんなことを言う。
「それより、話し合う必要があるのは話の内容の方よね」
小さくため息を吐いた。
「そうだね」
オーレリアンは頷く。
「私はアドリアンが王位を継ぐのが一番いいと思っている」
はっきりと口にした。
「それは何故だい?」
ラインハルトが静かに問う。
「アドリアンが王位を継げば、転生会が納得する。アドリアンを生まれ変わった賢王だと信じるだろう。一度生まれ変わりが現れれば、そこでこの見えない呪縛も終わる。もう誰も賢王が現れるのを待たなくていい。だから、アドリアンが次の次の国王になるべきだ」
オーレリアンは答えた。その顔には責任感のようなものが溢れている。
それを見て、マリアンヌは切ない気持ちになった。オーレリアンは転生会のことを自分のせいだと思っている。自分の不用意な一言が、子孫達に迷惑をかけていると感じていた。
それをマリアンヌも否定は出来ない。だが、死んだ後のことまで責任を取らなくていいとも思っていた。
「でもそれはオーレリアンの考えよね? アドリアンはどう思っているの?」
マリアンヌはもう1人の息子に聞く。
自分に視線が集中するのを感じて、アドリアンは少なからず気まずい顔をした。
「私は……」
言葉に詰まる。一つ、深呼吸した。
「国王になるのはオーレリアンの方が相応しいと思っている」
躊躇いつつ、自分の考えを口にする。
「どうして?」
今度はマリアンヌが聞いた。
「オーレリアンの方が私より優秀だから」
アドリアンはオーレリアンを見る。実際、オーレリアンは優秀だ。だが、それだけではない。しかし本物の生まれ変わりだからとは言えなかった。それでも言いたいことはオーレリアンにもマリアンヌにも伝わる。
「……」
マリアンヌは考える顔をした。ラインハルトを見る。
「ラインハルト様はどう思っているんですか?」
夫にも聞いた。
家族会議の中身が国の行く末に関わるという面倒さ。




