閑話: 転生会5
子供達にもちゃんと話すことにしています。
マリアンヌは子供達を寝かしつけながら、転生会関係の話をした。ラインハルトと話したことを伝える。
「そういうわけで、あなた達が寄宿学校に入りこの国を離れている間に、転生会のことは何とかしようと思っています。それで、可能ならオーレリアンに賢王時代の側近リストを作って欲しいんだけど……。出来るかしら?」
オーレリアンに尋ねた。
「側近リスト?」
オーレリアンは少し考える。うーんと唸った。
「覚えているだけでいいなら」
苦く笑う。
「あまり覚えていない感じ?」
マリアンヌは笑った。
「何度も転生を繰り返しているから、誰がどの時かという記憶は曖昧で……」
オーレリアンは困った顔をする。
それを聞いて、マリアンヌは少し切なくなった。
自分が前世の記憶を覚えているのは一度だけだ。しかも、こことはまったく世界が違う。
それでも、混濁する時があった。それが今の記憶なのか前の記憶なのか、わからなくて戸惑う。
オーレリアンは自分よりはるかに多くの記憶を有しているだろう。いくつも前世の記憶を持っている。それも、この世界の王族として生きた記憶だ。時代が違っても、大きな変化はないかもしれない。どの記憶がいつのものなのか、判別するのが難しいのは当然だ。
側近の名前は覚えていても、それがいつの時代かはわからないのだろう。
「無理だったら、無理だって言っていいのよ」
マリアンヌはそっとオーレリアンの頬に手を伸ばした。優しく撫でる。
「何回も転生していたら、側近も何人もいるわよね。それが賢王の時の側近なのか、判別出来なくて当然だわ。時代が変わっても、場所は同じですもの。どの記憶がどの時代のものかなんて、覚えているわけがないわよね」
マリアンヌの言葉に、オーレリアンは小さく頷いた。
「正直、どの側近が賢王時代の側近なのかわからない。リストを作るのは難しい」
オーレリアンは首を横に振る。
「わかった。無理はしなくていいのよ」
マリアンヌは微笑んだ。
「記憶がたくさんあるのは、大変ね」
オーレリアンを心配する。そしてその心配はアドリアンにも当てはまると気づいた。アドリアンは全てを覚えている。それは心に負担をかけているのではないだろうか。
「アドリアンは大丈夫?」
マリアンヌは声をかける。アドリアンを見た。
「何が?」
アドリアンは首を傾げた。何を心配されているのか、わからない。
「何もかも覚えているアドリアンも大変でしょう? 辛くはない?」
マリアンヌは問うた。
「うーん」
アドリアンは考え込む。
「母様やオーレリアンとの記憶がほとんどだから、大丈夫。覚えておきたい記憶ばかりだよ」
にこっと笑った。
「ああ、それは私も同じだ」
オーレリアンも微笑む。
「母様とアドリアンのことは、きっと他の記憶には埋もれないと思う」
真っ直ぐ、マリアンヌを見た。
「この先、何度転生を繰り返しても。母様とアドリアンがいるこの時代は特別だ。他の記憶とは一緒にならない」
そういう自信がオーレリアンにはある。
自分に前世の記憶があることを初めて話せた相手でもあり、理解してくれた相手だ。
その言葉に、マリアンヌはちょっと泣きそうになる。
「アドリアンとオーレリアンのお母さんになれて、わたしは幸せね」
心からそう思った。
リスト作りは無理そうです。




