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閑話: 転生会4

マリアンヌはけっこううっかりさんです。





 ラインハルトが転生会の話を持ち出すまで、マリアンヌはすっかり忘れていた。


(そうだった。転生会の問題は何一つ、片付いていなかった)


 唐突に思い出す。

 ラインハルトは子供達が寄宿学校に入る5年の間になんとかしようとしている。マリアンヌもそれが現実的だと思っていた。


(オーレリアンに賢王時代の側近リストでも作ってもらおうかしら)


 せっかく本人がいるのに、活用しないのは勿体無い。

 8代も代が変わると、側近や重臣の顔ぶれも当然代わっていた。それが転生会の実体をなおさら掴み難くしている。リストがあればかなり助かるだろう。


(問題はそのリストの入手先をどう誤魔化すかよね)


 マリアンヌはちらりとラインハルトを見た。

 ラインハルトはオーレリアンが賢王の生まれ変わりであることを知らない。

 言うかどうか迷った挙句、結局、話さないことにした。そのまま時は過ぎている。


(知らない方が楽なことってあると思うのよね)


 マリアンヌはそう考えていた。


 何度も転生を繰り返しているオーレリアンが、賢王の後に生まれ変わったのは今回で2回目だ。前回は最後まで、誰にも自分が賢王だったことは話さずに終わったらしい。

 今回も、母であるマリアンヌが転生者でなければ話すつもりはなかった。

 基本的に、オーレリアンに自分が転生者であることを話すつもりは無い。

 それを知っているから、マリアンヌも秘密にしようと思っていた。


(オーレリアンが賢王だと知ったら、ラインハルト様はどうするのだろう? オーレリアンを国王にしようと考えるのだろうか?)


 マリアンヌはそのパターンを考えてみる。


 オーレリアンが外見も賢王の時のままだったら、ある意味、簡単だったのかもしれない。賢王の生まれ変わりとして即位すれば、転生会の気持ちも収まっただろう。

 賢王の生まれ変わりが現れたら、それで転生会の目的は達成される。

 もともと、アドリアンかオーレリアンのどちらかが国王になる可能性は高い。オーレリアンに頑張ってもらえば問題は解決するのかもしれない。

 しかし、見た目的にはアドリアンの方が賢王の面影を色濃く受け継いでいた。

 転生会が賢王の生まれ変わりとして受け入れるなら、アドリアンの方だろう。


「自分は生まれ変わるなんて、賢王も厄介な言葉を残して死んでくれたわね」


 マリアンヌはぼやいた。心の声が口からこぼれる。

 ラインハルトはマリアンヌを見た。


「そうだね」


 頷く。

 マリアンヌはラインハルトを見た。


「ラインハルト様は本当に賢王が生まれ変わって、現れると思いますか?」


 尋ねる。


「どうだろうね」


 ラインハルトは首を傾げた。


「マリアンヌのように前世の記憶を持つ人間がいるのだから、現れないとは言い切れない。だが、現れるのならとっくに現れてもいい気がする。本人に、それを打ち明ける気持ちがないのかもしれない」


 答える。

 なかなか鋭いところをついてきた。


「現れたら、困りますか?」


 マリアンヌは尋ねる。


「そうだね。少し、厄介な状況になるかな」


 ラインハルトは考え込んで、答えた。


「アドリアンは賢王の肖像画によく似ている。アドリアンが賢王の生まれ変わりとして即位すれば、転生会も納得し、問題も解決する気もするな」


 小さく笑う。

 半分冗談なのはマリアンヌにもわかっていた。


「そうですね」


 相槌を打つ。

 だが、マリアンヌの方はわりと本気でそれを考えていた。ここで後顧の憂いを断ちたい。転生会の問題を終わらせたかった。


「賢王の生まれ変わりとして立てるなら、やはりアドリアンの方ですよね」


 一人、納得する。


(やはり、オーレリアンのことは黙っていよう)


 そう決めた。

 余計なことを知っても、ラインハルトは悩むだけだろう。


(知らないままですむなら、その方がいい気がする)


 そう思った。









夫を思ってのことです。

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