閑話: 転生会1
転生会のこと、忘れていません。
マリアンヌの留守中、ルイスは転生会についての手がかりを掴もうとした。
しかし、何も掴めない。調べても予想以上に何もわからなかった。10日や二週間でなんとかなるようなことではないことだけがわかる。
主によい報告が出来ないことに敗北感を覚えながら、ルイスはラインハルトに事実を告げた。
「転生会については相変わらず、シッポさえ掴めません」
ため息をつく。
転生会について、手掛かりがつかめないのにはいくつか理由があった。
一つ目は誰が転生会の人間なのか、まったく予想がつかないことだ。
転生会は反王制組織ではない。今の国政に不満のある人間が集まっているわけではなかった。普通に自分達の身近にいる可能性も十分にある。転生会はもともと賢王の側近達から始まったとも言われていた。重臣の中にいる可能性も高い。
そのため、調査は慎重を期した。割ける人員も限られる。
そのことも合わせて、ラインハルトに報告した。
「簡単にどうこう出来る話ではないのだな」
ラインハルトは納得する。
「そうですね」
ルイスは頷いた。
「時間がかかると思います」
正直に言う。
「では、ちょうどいいかもしれない」
ラインハルトはぼそっと呟いた。
「何がですか?」
ルイスは尋ねる。
「アドリアンとオーレリアンを他国にある寄宿学校に入れることになった。しばらく、国を離れることになる」
ラインハルトは答えた。
「寄宿学校ですか?」
ルイスは困惑する。あまりに唐突な話に、驚いた。だが、話の出所はだいたい想像がつく。
「マリアンヌ様が言い出したことですね」
渋い顔で確認した。
「ああ、そうだ」
ラインハルトは頷く。
「あの子たちは将来、国王になる可能性が高い。他国に出て、他国の王族達と人脈を広げるのは悪いことではないだろう。それに転生会についてはっきりしない今、他国にいるなら良くも悪くも誰も手出し出来ない。あの子達にとっては一番いい環境かもしれない」
その言葉に、ルイスは身を小さくした。
「お役に立てず、不甲斐ないです」
恐縮する。
「いや、そもそも簡単な話ではなかったのだ。なんとかなることならば、とっくの昔に転生会はなくなっていただろう。手の打ちようがないから、今までずるずると存在しているのだ」
自分の甘さをラインハルトは反省した。
「寄宿学校を卒業するまで、5年はある。あの子たちが卒業するまでに何かしらシッポを掴むようにしよう」
長期目標に、切り替える。
「5年ですね」
ルイスは頷いた。そのくらい時間があれば、打てる手もたくさんある。今度こそ何とかしてみせようと誓った。
簡単にどうにかなる組織ではないようです。




