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心配性

意外と焼き餅やきです。





 ラインハルトが仕事に出かけるのを見送ってから、マリアンヌは公爵やハワードを迎えるつもりでいた。

 だが、ハワードたちが離宮にやってくることを聞いたラインハルトは時間になっても出かけようとしない。


「時間ですよ、ラインハルト様」


 マリアンヌは急かした。ラインハルトがいたら、公爵はともかくハワードが緊張するだろう。ただでさえ国王との謁見で緊張しているだろうに、さらに緊張させるのは可哀想だ。

 ラインハルトを送り出そうとする。

 だが、ラインハルトは動こうとしなかった。


「今日は遅く出る」


 そう答える。すでにアントンを使いに出して、ルイスには連絡済らしい。


「え?」


 マリアンヌは驚いた。

 何のためにかは聞くまでもない。公爵とハワードが離宮に来るからだろう。


「何か心配なのですか?」


 マリアンヌは尋ねた。


「心配などしていないよ」


 ラインハルトは答える。


「マリアンヌと子供達が世話になったのだから、私も挨拶くらいしておくべきだろう?」


 にこやかに微笑んだ。


(嘘っぽい)


 マリアンヌは心の中で突っ込む。

 だがその時、アントンと一緒にルイスがやって来た。部屋のドアをノックして、入ってくる。


「遅くなるとはどういうことでしょう?」


 にこやかに微笑みながらラインハルトに問いかけた。直接、理由を尋ねに来たらしい。


(こわっ)


 その場にいた誰もがそっとルイスから目を逸らした。関わりたくないことを態度で示す。ラインハルトは孤立無援だ。


「用事が出来た」


 ラインハルトは答える。


「それは聞きました。その用事が何なのかを聞きに来たのです」


 ルイスは追求する手を緩めるつもりはなかった。

 ラインハルトは渋々、口を開く。


「マリアンヌが父上に報告に行く前に公爵たちと打ち合わせするそうだ。心配なのでその話し合いに参加しようと思う」


 言い訳した。


「違うでしょう? ハワードがいるのが気になっているのではないですか?」


 ルイスは問い詰める。


「え? 浮気を疑われているんですか?」


 マリアンヌは驚いた。そんな風に思われているなんて夢にも思っていなかった。


「そんな暇、あるわけないでしょう?」


 苦く笑う。思い過ごしにも程があると思った。


「……」


 ラインハルトは気まずい顔をする。黙り込んだ。

 そんなラインハルトにルイスは同情したらしい。


「仕方ないですね」


 ため息を吐いた。


「無理やり引っ張って行っても使い物にならないでしょうから、いいですよ」


 遅れるのを了承する。


「その代わり、話し合いには私も同席します」


 話し合いの行方が気になるルイスはそう言った。


「公爵たちはいつ来るんですか?」


 マリアンヌに尋ねる。


「もう直ぐ来るはずです」


 マリアンヌは答えた。






 ルーズベルトはハワードと待ち合わせて、王宮に向かった。

 マリアンヌに呼ばれていることを告げると、離宮に案内される。離宮の中は執事に案内され、マリアンヌたちが待つ部屋に入った。


「!?」


 待っていた顔ぶれを見て、びっくりする。マリアンヌと子供達だけだと思っていたのに、皇太子とその側近もいた。


「何かありましたか?」


 思わず、心配して尋ねる。


「何もありませんよ」


 食い気味にマリアンヌは答えた。ルーズベルトとハワードの2人を安心させるように微笑む。

 ルーズベルトはちらりと隣にいるハワードを見た。ハワードは目に見えて緊張している。当然だろう。地方の貴族が離宮に通されることだけでも珍しい。その上、皇太子とその側近までいるのだ。場には不思議な緊張感があった。


「だだの過保護な保護者です。気にしないでください」


 マリアンヌはハワードを励ますように見る。


「そうですか」


 ルーズベルトは頷いた。納得する。

 そして、皇太子とその側近を交えての話し合いが始まった。




ルイスも意外と心配性です。

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