執務室
予算獲得頑張ります。
わたしは予算獲得のため、国王に会いに行った。
久しぶりに執務室に向かう。
すでに懐かしい感じがした。
もちろん、気のせいだ。
だが、無駄にどきどきする。
ちゃんと前もって連絡を入れ、時間を取ってもらった。
今日のことはもちろんラインハルトも知っている。
わたしは自分の行動をラインハルトに報告することにしていた。
何が良くて何が悪いのか、わたしでは判断できないことがいろいろある。
王族として行動するのは意外と難しかった。
わたしを1人で行かせるのは心配らしく、ついていくとラインハルトは言い出す。
わたしはなんとかそれを押しとどめた。
子供でもないのに、保護者つきはさすがに恥ずかしい。
だが1人で会いに行ったら、国王に意外な顔をされた。
「ラインハルトは一緒ではないのですね」
そんなことを言われる。
わたしは少しむっとした。
ラインハルトが一緒でないと何も出来ないと言われている気がする。
その一言を聞いて、どきどきは治まった。
無駄に気合いが入る。
「子供ではないので、1人で話が出来ます」
わたしは口を尖らせた。
反論する。
「そういう意味ではないのですが……」
国王は苦く笑った。
だがそれ以上、その話は続けない。
「今日は予算の件ですね」
用件に入った。
「はい。プロジェクトのために米の料理やお菓子を作ります。試作品も含めて、その材料費はプロジェクトの予算で負担していただきたいと思っています」
わたしは簡潔に用件を告げる。
わたしとしては当然の主張だ。
「何故ですか?」
だが、予想外の反応が返ってくる。
国王に尋ねられた。
(何故って何故?)
逆にわたしが聞きたい。
プロジェクトのためにかかる費用をプロジェクトの予算から貰うことに質問される意味がわからなかった。
「プロジェクトにかかる経費です。プロジェクトの予算から出すのが当然だと思うのですが、違いますか?」
質問に質問で返す。
「なるほど」
国王は頷いた。
だがそれは納得したからではない。
わたしの言い分はわかったという顔だ。
「ですが、今までは離宮の食費で負担していましたよね?」
そう切り替えされる。
わたしもそれは想定していた。
「今まで、米を調理するのはわたしの趣味でした。わたしが自分で食べたいから頑張っていただけです。なので離宮の食費から予算を出すのは当然のことでした。しかしこれからは米を普及させるために米料理の開発に勤しむことになります。離宮の予算で負担するのは可笑しいですよね? 必要な経費は認めてください」
言い切る。
引くつもりはなかった。
国王は小さく頷く。
わたしの言い分に文句はないようだ。
「それはプロジェクトに必要なことだと、証明することが出来ますね?」
国王は確認する。
「はい」
わたしは頷いた。
「最終的に、貴族の食堂で試食を出すつもりでいます。もちろん、その費用も予算で出していただきますが」
さらりと試食を出す話もする。
しれっと試食の許可も貰ってしまおうと思った。
だが、そこはポンポコも甘くない。
「試食については、改めて許可を取ってください」
簡単には流されてくれなかった。
許可はくれない。
「わかりました」
わたしは頷いた。
「試食を配れるような目処がついたら、相談します」
約束する。
国王は頷いた。
今度は納得した頷きに見える。
「それと、基本的にはラインハルトに相談してから行動は起こしなさい」
国王に注意された。
「わたしが1人では不安ですか?」
わたしは苦く笑う。
「不安ですよ」
ずばり言われた。
「何をするかわからないので」
そう言われると、わたしも反論しにくい。
自分でも不安に思わない訳ではなかった。
自分としては変わったことをしているつもりはないのに、周りから見ると奇妙に見えることはよくある。
「今、足下を掬われるような危険は犯せないのはわかっていますね?」
釘を刺された。
「よくわかっています」
わたしは頷く。
わたしの行動を勝手に悪く言われるのは、まあいい。
よくはないが、許容範囲だ。
だが、わたしが本当に悪いことをするのは不味い。
予算を簡単にくれないのも、後から誰かに予算の件を追求されるのを想定してのことかもしれない。
納得できる理由がなければ、出さないつもりだったのだろう。
「今まで以上に自分の行動には気をつけなさい」
国王にそう言われる。
「はい」
わたしは大きく頷いた。
簡単にくれないのは意地悪ではありません。




