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連絡

終わったと思ったら





 離宮に戻ったわたしをアントンやメアリは心配そうに出迎えてくれた。


「大丈夫ですか?」


 問われる。

 どうやら、噂はすでに耳に入っているらしい。


「凄いわね。もう噂が届いているの?」


 わたしは感心した。

 ネット社会だったわたしの前世と違い、この世界の情報伝達は決して早く無い。

 だが王宮に噂が広まるスピードは目を見張るものがあった。

 故意に噂を流している誰かがいるのかもしれないが、それは追求しないことにしている。

 そういう王宮の闇に触れそうなことはわたしの領分ではないと割り切っていた。

 そういうことは主役級の人に頑張ってもらいたい。

 今のところ害は無いのだからいいのではないかと思っていた。

 王宮で働く人が噂好きなのは仕方ないだろう。

 ミーハーでなければそもそも王宮で働こうなんて考えないに違いない。

 貴族相手に仕事をするのは、平民にはリスクが高かった。

 高慢な態度を取る貴族は一定数いる。

 そういう貴族と接するかもしれない仕事だ。


「マリアンヌ様のことを心配して、お針子たちが教えてくれました」


 メアリが噂を知っている理由を教えてくれる。

 お針子たちは噂を聞いて心配になったようだ。

 アントンやメアリに知らせに来たらしい。

 今日はメアリも留守番していた。

 レティシアと和解(?)したので、メアリは基本的に離宮の中でのみ側にいる。

 わたしはラインハルトと2人で第一王妃の離宮に向かった。

 使用人を連れて行くのは控える。

 ぞろぞろ引き連れて訪れるのは、招いた側がケンカを売られたように感じることにレティシアの時に気づいたからだ。

 もっとも、レティシアの場合はわかりやすくケンカを売っていたのだと思う。

 そんな自分が留守番の時に、わたしが倒れたという話を聞いてメアリはそうとう心配したようだ。

 やはりついて行くべきだったのではないかと、悔やんだらしい。


「大げさよ」


 わたしは苦く笑った。

 2人に心配は無用なことを話す。

 少しのぼせたのだと説明した。

 帰りはゆっくり歩いてきたから平気だろう。

 熱っぽくなかった。

 それを聞いて、アントンとメアリは安堵する。


「とりあえず、休んでください」


 部屋に通され、座らされた。

 ソファで寛ぐと、自分が思っているより疲れていることに気づく。

 どうやら、無意識に気を遣っていたようだ。

 相手は国王と第一王妃だ。

 気を遣わずにいられる訳がない。


「甘い物が食べたい」


 わたしはぽつりと呟いた。

 身体より頭が糖分を欲している。

 いろいろ考えすぎて、疲れた。


「何か用意させますか?」


 アントンに聞かれる。


「お願い」


 わたしは頼んだ。


(コンビニ行きたい)


 心の中で呟く。

 チルドの棚の前で、その日の食べたいものを自由に選べた前世を恋しく思った。

 この世界もお菓子はわりと種類がある。

 ケーキとかプリンとかムースとかゼリーとかなら普通にある。

 だが作り置きはしてないし、いつでも作れる訳ではない。

 食べたい時に食べたいものが食べられるわけではなかった。

 それがちょっと寂しい。

 でもそれは逆に、何が出てくるのか楽しみに待つことでもあった。

 何をどう捉えるかは本人次第だ。

 クロウが何を用意してくれるかワクワクしながら待っていると、バナナのクレープが出てきた。

 手軽にその場にあった材料で作ってくれたのだろう。


(クロウは有能ね)


 満足しながら、クレープを食べた。

 満腹になり、身も心も満たされる。

 おいしいものを食べると幸せな気分になった。

 のんびりまったりと過ごす。

 そこにアントンがなんとも微妙な顔でやってきた。


「マリアンヌ様。旦那様から、お手紙が届いています」


 手紙を差し出す。

 わたしは眉をしかめた。

 嫌な予感しかしない。

 さっき別れたばかりのラインハルトからの手紙なんて普通ではなかった。

 アントンが微妙な顔をしているのもそのせいだろう。


(受け取りたくないです)


 心の中で断った。

 だが、そんな訳にもいかない。

 渋々、わたしは手を伸ばした。


「……」


 黙って、手紙を開く。

 読んだ。

 アントンやメアリはじっとわたしの顔を見ている。


「はあ……」


 わたしはため息をついた。


「何かありましたか?」


 メアリが問う。


「夕食に、国王様がいらっしゃるわ。至急、クロウに伝えて」


 わたしは頼んだ。

 メアリはさっと厨房に向かう。


「こんなに急に、何事でしょう?」


 アントンは不安な顔をした。


「大丈夫。用件はだいたいわかっているわ」


 わたしは苦く笑った。

 さっき話さなかったあの件だろう。

 そのまま無かったことにされると思ったが、違ったようだ。


「何かあったのですか?」


 アントンはますます心配する。

 気持ちはわかるが、説明は出来なかった。


「大丈夫よ」


 もう一度、わたしは繰り返す。

 そのことで何かを察したアントンはそれ以上、尋ねなかった。





終わっていませんでした^^;

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