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言い訳

怒られたくはないのです。





 その後、国王は何事もなかったように普通に食事を楽しんだ。

 わたしも普通に食事を続ける。

 たが、シエルとラインハルトは明らかに食が進んでいなかった。

 顔色も悪い。

 わたしは申し訳ない気持ちで一杯になる。

 胃が痛そうな2人を見ていると、心が痛んだ。

 だがそんな空気の中で、国王はただ一人平然としている。

 さすがポンポコだと感心した。

 この程度では動じないらしい。

 なんとも微妙な感じで食事の時間は続く。

 国王は完食して満足な顔をした。

 食後のお茶までのんびりと楽しむ。


「美味しかったよ、マリアンヌ」


 感謝の言葉を口にした。


「それは良かったです」


 わたしは微笑む。


「また、食べに来てもいいかね?」


 国王はそんなことを言った。

 空気がぴしっと音を立てる。


(よくはないですよ)


 心の中では断った。

 だが、そんなこと言えるわけがない。

 わたしは苦く笑った。


「ただ、お食事をするだけでしたら」


 そう答える。

 義理の父が食事に来たいというのを断れる嫁はいないだろう。

 OKするしかなかった。


「でも、わたし達のところにばかり来られるのはややこしいことになりそうなので、いらっしゃるなら第一王子のところも第二王子のところも順番に回ってください」


 そう続ける。

 周りからいろいろ言われるのはわたしもご免だ。

 変に勘ぐられるのも面白くない。

 それなら、3人の王子のところを順番に回って欲しかった。


「なるほど。それは尤もだね」


 国王は頷く。

 検討する顔をした。

 納得して帰って行く。

 午後からも仕事があるラインハルトを一緒に連れて行った。

 ラインハルトは何か言いたげな顔をして、わたしを見る。

 だが、残るとは言えなかったようだ。

 なんとも微妙な顔をする。


(そんな顔をされても)


 わたしは困った。


「帰ってきたらちゃんと話しを聞くので、行ってらしてください」


 こそっと、ラインハルトの耳元に囁く。

 小さく手を振って見送った。

 ラインハルトは仕方ないと言う顔をしている。

 その顔がちょっと可愛くて、わたしは笑ってしまった。

 笑ったまま振り返ると、渋い顔をしていたシエルと目が合う。

 シエルは怒っていた。


「姉さん」


 静かな声が逆に怖い。


「……なんでしょう?」


 わたしは返事をした。






 わたしとシエルは部屋に移動した。

 わたしがソファに座るのを待って、シエルは話しを切り出す。


「どういうこと?」


 問われた。


「どの話のこと?」


 わたしは一応、確認する。


「東にフェンディ様がって話」


 シエルは答えた。

 状況を説明しろと迫る。

 わたしはマルクス様のランスロー滞在が思わぬ波紋を広げていることを話した。

 西側の貴族たちが喜ぶ一方、東側の地域の貴族は不満を燻らせている。

 見捨てられたように感じているらしい。

 それを解消するにはもう一人の王子であるフェンディが東側に滞在すればいいのではないかと思ったと言った。

 シエルはなんとも微妙な顔をする。


「はあぁぁぁ」


 大きなため息を目の前で吐かれた。


「それは姉さんが考えなければいけないこと?」


 至極尤もな質問をされる。


「……違います」


 わたしは答えた。

 自分でもそれはわかっている。

 余計なお節介を焼いた自覚はあった。

 こういうことを考えるのは、国王や王子たちの役目だ。

 主役の人が頑張ることであって、その他大勢のわたしの領分ではない。

 だが、放っておくことは出来なかった。

 マルクスのことは、まったくわたしに責任がないわけではない。


「余計なことに口を出して、恨みを買ったらばかばかしいでしょう?」


 シエルに諭される。


「わかっています」


 わたしは頷いた。

 だが、ちょうどいいとも思ってしまったのだ。

 このままでは、フェンディは妃たちと離婚してしまうかもしれない。

 2人の妃に振り回されることに、フェンディはかなりうんざりしていた。

 最近では、妃たちの要望は聞きもせずに無視しているらしい。

 ミカエルと一緒に暮らしたいと思っていることも知っていた。


 ミカエルは穏やかで気遣いの出来る人だ。

 一緒に料理の研究をして、しみじみとそれを感じる。

 ミステリアスで誰もを魅了する魔性の人と言われているそうだが、見た目は確かにそうだが中身は違う。

 どちらかといえば純朴な田舎貴族だ。

 気遣いも出来る。

 そんなミカエルといると居心地が良いというフェンディの気持ちはよくわかった。

 わたしもミカエルと過ごす時間は心地良い。

 2人の妃と比べたら、ミカエルを選ぶのは当然とも思えた。


 フェンディは3人まで妃を持てる。

 3人目の妃の代わりにミカエルを囲っても、文句を言う人はいないだろう。

 だがフェンディがそれをしないのには、しないなりの理由があると私は勘ぐっていた。

 2人の妃がミカエルに危害を加えることを危惧しているのだろう。

 2人の妃は気が強い。

 ミカエルがフェンディの愛情を独占していると知れば、暴挙に出ない保障はなかった。

 今、第一妃と第二妃の間がそれなりに平和なのは、どちらも王子に愛されていないのを自覚しているからだ。

 どちらか片方が愛されていたら、もっとドロドロとした関係になっていただろう。

 等しく愛されていないのがわかっているから、必要以上の嫉妬が生まれないのだ。

 本人たちが多少張り合うくらいで、周囲への実害はあまりない。

 そこにミカエルが現れたら、2人とも心穏やかではいられないのはわかりきっていた。

 排除の動きに出ることは十分に予想される。

 だからその前に、フェンディは妃たち方を追い出すつもりのようだ。

 ミカエルのことだけを考えたら、それがいい。

 だがそうなった場合、子供たちは傷つくだろう。

 今のままでなんとなく上手くいっているなら、問題が起こらない限りこのままでいいではないかとわたしは思ってしまう。

 少なくとも、子供たちが大人になるまでは現状維持でいて欲しかった。


 それには、フェンディのローレライ滞在は都合がいい。

 ローレライに半年滞在することになれば、フェンディはそこでミカエルと暮らすことが出来る。

 1年の半分は王宮に戻るとしても、それ以外の時間を2人で仲良く暮らせるなら、フェンディは妃たちを追い出そうとはしないだろう。

 2人の妃に愛情はないかもしれないが、情が全くないわけではないと思う。

 何もなかったら、フェンディはもっと早く妃たちを追い出していたはずだ。


 妃たちの目にミカエルが触れることがなければ、問題は起こらない。

 何かしようとしても、遠く離れているからミカエルは安全だ。

 現状を変える理由は何もない。

 誰も傷つかないのは無理だとしても、傷は浅くてすむのではないかとわたしは思った。


 だがそれを、シエルには説明出来ない。

 フェンディとミカエルのことを勝手に話すわけにはいかなかった。


「フェンディ様はいろいろあって、王宮から離れたいと思っているようなので、ちょうどいいと思ってしまったの」


 わたしは言える範囲で言い訳を口にする。


「それは姉さんが考えなくていいことだよ。姉さんはもっと、自分とお腹の赤ちゃんのことだけ考えて」


 シエルは頼むように言った。


「そうします」


 わたしは頷く。

 だがシエルは全く信用していない顔をしていた。




お節介な自覚はあります。><

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