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予想外(中)

こんなに長くなるはずではありませんでした。





 ローキャスターの予想は見事に裏切られた。

 第三王子は優勝者を娶る。

 しかも、結婚に乗り気だったのはむしろ第三王子の方だったらしい。

 最終日に表彰式に行った娘から詳しい話を聞いた。

 優勝したのは男爵家の令嬢だ。

 地味で目立たない上に王子よりかなり年上らしい。

 そんな女が妃になることに、レイアーは憤慨していた。

 選ばれたのが、誰でも納得するような綺麗で華やかな女性であれば、まだ納得できたらしい。

 自分の負けを認められた。

 だが壇上にいた令嬢は地味でどちらかといえば目立たない女性だ。

 こんな女に負けたのかと思うと、腹立たしくなったと言う。

 怒りながら、レイアーは泣き出した。

 何より許せないのは、王子が彼女との結婚を強く望んでいたことらしい。

 王子が優勝者と渋々結婚するなら、仕方がないと思えた。

 そういうルールなのだから。

 自分にもまだチャンスはあると夢見ることも出来た。

 しかし今日の王子の態度は、そんな希望は少しも持てないものだった。

 あんな地味な娘が選ばれて、自分が選ばれないのは納得出来ないとレイアーは泣き続ける。

 抽選で落ちなかったらあそこにいたのは自分かもしれないと言われると、抽選に作為的なものを感じていたローキャスターはやるせない気持ちになった。

 決勝はともかく、予選は裏で操作されていた気がする。

 あまりに都合よく、王子にとって残って欲しくない人間が落とされていた。

 だがもちろん、証拠はどこにもない。

 今さら、手の打ちようがなかった。






 お妃様レースの翌日、ローキャスターは同じ派閥の者たちと集まった。

 情報交換と今後の対策を練る。

 そこで妃になるマリアンヌの詳しい情報を掴んだ。

 彼女の素性を知って、驚く。

 王妃になる前に逃げた大公家の令嬢の娘だった。

 母親である大公家の令嬢はもうとっくに亡くなったらしい。

 彼女は王都の華と呼ばれるほど美しい女性だったが、その娘は母親には少しも似ていないそうだ。

 娘が地味で目立たない女だと評していたことを思い出す。

 そんな女を何故王子が受け入れたのか、情報交換の場はその話で持ちきりになる。


「やはり、大公家が裏で何か糸を引いているのではないか?」


 誰かがそんなことを言った。


「しかし、そんなことをしなくても大公家はすでにがっちり第三王子を掴んでいるだろう。今さら、妃までねじ込む必要はあるまい」


 誰かがそれに反論する。


 誰も答えを知らない議論ほど無駄なことはない。

 それぞれが自分の意見を口にするだけで、建設的な話は何一つ出なかった。


「だがこの結婚、本当に決まるのか? 何でも、国王様は反対しているらしいぞ」


 思いもしない情報がもたらされ、場は一気に盛り上がる。

 国王がマリアンヌとの面会を拒んでいるらしいとその貴族は言った。

 国王に面会し、許可をもらえなければ婚約は成立しない。

 だが第三王子が一人で国王に面会を申し入れても、それさえも国王は拒んでいるそうだ。

 集まった貴族たちはこのまま婚約が不成立に終わることを願う。

 もちろん、ローキャスターもその一人だ。

 第三王子が結婚しなければ、自分たちが推す第二王子にもまだ可能性は残る。






 しかし、その願いは届かなかった。

 結局、国王は第三王子の婚約を認める。

 わが子可愛さで絆されたのだと、貴族たちは思った。

 国王の第三王子への溺愛ぶりは有名だ。

 第二王子派閥の貴族たちはがっかりする。

 それでも現実を受け止めようとした。

 変わり身が早いのも貴族社会を生き抜くための手段の一つだ。

 昨日の敵は今日の友なんて話も珍しくはない。

 だが第二王子派閥の波乱はこれで終わりではなかった。

 むしろ、ここから始まったと言えよう。






 翌日、辺境地の実家に帰った令嬢を追いかけて第三王子が城を離れたことが伝わった。

 しばらく、城を留守にするらしい。

 そんなことはいまだかつてなかった。

 国王に期待されている第三王子は、他の王子たちよりずっと多くの仕事を任されている。

 ただでさえそれはお妃様レースの開催によって滞っていた。

 それがさらに滞ることになる。

 緊急の案件は国王や第一王子が代わって決済するそうだが、国務に大きな支障が出るのは明らかだ。

 そんな怠慢を許していいのかという意見が第二王子派閥の中に生まれる。

 第三王子を追い落とすチャンスだと、それを捉える者がいない訳ではなかった。

 だがその声は形になる前に消える。

 自分たちの推す第二王子もまた、第三王子と一緒にランスローに向かったことがわかったからだ。

 そのことは第二王子派閥に大きな動揺を生む。

 何故第二王子がそんなことをしたのか誰にもわからなかった。

 いろんな憶測が生まれる。

 それが噂として広まった。

 そのほとんどはマリアンヌの悪評に繋がる。

 無意識に、貴族たちはマリアンヌの影響力を恐れていた。

 あの聡明な第三王子が仕事を放棄してまで追いかけたのだ。

 マリアンヌを危険視する貴族は少なくない。

 女に骨抜きにされた愚王の話はたくさん伝わっていた。

 ラインハルトがそうなるとは誰も思っていないが、可能性はゼロではない。

 貴族の不安がマリアンヌの悪評に拍車をかけた。

 ローキャスターも当然、警戒する。

 嫌な予感がした。

 そしてその予感は的中してしまう。

 ランスローからラインハルトより一足先に戻ってきたマルクスは、ランスローに居を構えることを国王に願い出た。

 1年の半分を辺境地で過ごすらしい。

 それは実質、次期国王の権利を放棄したのも同然だ。

 1年の半分も王宮を留守にしていたら、王族としての勤めは満足に果たせない。

 それはマリアンヌの入れ知恵で、第二王子を王位継承者から外す謀略だという噂があっという間に広まった。

 ローキャスターはその噂を聞いた側の人間だ。

 噂の真偽はわからない。

 だが事実はどうでも良かった。

 そういう噂が出ることに問題がある。

 早い段階でマリアンヌを潰しておかなければ大変なことになる予感がした。




ラインハルトと会わせるつもりがまったく出会えない。

さすがに次で終わります。

これ、書いているのにはもちろん理由があるんですがその理由はまだ全然出てこない。

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