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どうやら異世界に来たようです


田舎から上京してからはや3年。10代の頃思い描いていた大人には28歳になっても未だなれずにいる。

(毎日オシャレなカフェでランチ決めてるOLになっているはずだったのにな…)

今日のお昼もコンビニの安いおにぎりとスープだけである。もっと立派な大人になっている予定は予定だけだった。今日も仕事が終わり満員電車に押し込められながら帰宅する。

終点が最寄駅なので座れるのは最寄駅近くなってからなのだが、今日は運良くすぐに目の前の座席が空いた。終点まで乗るので降り過ごす事はないと少し寝ようと目を閉じた。

それが、大聖寺朱里(だいしょうじあかり)の2019年の最後の姿だった。


「おい、お客さん終点だよ。さっさと降りてくれ」

野太い男の声に起こされた朱里は、すみませんと急いで電車を降りると目の前の光景に驚いた。そこはいつものホームではなく趣のある煉瓦造りのホームだった。

(え…ここどこ?)

まだ寝ぼけているのかと頬を抓ってみたが目の前にある光景は変わらなかった。痛みだけ残った頬を摩っているとヒソヒソと声が聞こえてくる気がして周りを見回した。


「妙な格好の女がいたもんだ」

「見たことのない洋服ね?」


皆朱里を見ながら話しているようだった。そんなに変な格好をしていただろうかと自分の服をチェックしてみたがいたって普通のオフィスカジュアルなスーツだ。

一体なんなのだとこそこそ話す人を改めて見た時ようやく違和感に気がついた。

友人が好んでいたファッションに似ている。着物と洋服を上手く合わせて着こなしている。

和服だけの人もいれば、洋服(大正、昭和時代のような)を着ている人もいる。


(タイムスリップしたみたいな感じだ…明かに私だけアウェイだ)


そうこうしているとさっき乗っていた電車から大きな汽笛の音が聞こえてきた。

その音に振り向くとそこには蒸気機関車が真っ黒な煙を上げて線路を走って行った。

煙にゴホゴホとむせているとゾワっとした悪寒が走った。

気がつけば両脇を警備員のような人に囲まれてしまった。


「君、妙な服を着ているが、どこからきたんだい?」

「少々話を聞きたいので一緒についてきてくれるか?」


桜の紋章をつけているところからすると、ここが日本以外のところじゃなければおそらく警察官だろう。優しい声音とニコニコと人当たりの良さそうな顔であったが、何故か朱里にはこの2人は危険だと無意識に感じていた。


「私急いでいますので。」

「君の姿を先ほどから見ていたけれど急いでいるようにはとても見えなかったがね?」

「嘘はいけないよ?嘘はついては怒られてしまうと教えて貰わなかったかい?」

「「さぁ、こっちで話を聞かせてくれるかいヒトノコよ」」


そういうと2人はガシッと両腕を掴んで引きずるように壁の方へ進んでゆく。

これはやばいと思い大声で叫んだ。


「誰か!!助けてください!!」


ザワザワとしていた喧騒は一瞬だけ静かになった。

すると、遠くからこちらへ走ってくる何かが見えた。

2人に抵抗しているとそれが走ってくる姿をとらえた。

それは白くてとても大きな生き物だった。

2人もそれに気が付くと朱里の腕を離し怯えるように走り去ろうとする。

しかしその白くて大きなものは2人に襲いかかり大きな両手に潰されたかと思えば霧のように霧散した。

白くて大きなものはホワイトタイガーだ。

だが、規格外に大きすぎる…!

(背中までだけで多分3mぐらいあるんじゃ!?これだけ大きいと神々しさすらあるな)


「アンタ怪我はないか」


巨大過ぎるホワイトタイガーに目を奪われていると後ろから声をかけられた。

その男は警察官でちゃんと手帳も見せてくれた。名は西条親白(さいじょうちかきよ)

朱里は名乗り、助けてもらったお礼を言うと、最近はヒトノコ攫いが多いからなと言った。

誘拐のことだろうか。


「にしても大きな虎ですね…。さっきの人達ペチャンコにしてしまってましたけど大丈夫なんですかね?」

「アンタ、何に襲われてたかわかってなかったのか?」

「え…何にって、どういうことですか」

「わかってなかったのか。ありゃ、野良妖だ。ヤツらは人間を襲う。」

「のらあやかし?」

『契約者のいない妖怪のことよ』

「妖怪ってそんな漫画みたいな……っていま誰が喋りました!?」


西条に聞けば白虎を指差している。

「いやいや、虎が喋るわけ『あら、私が話せるのは可笑しいかしら?朱雀の。』

「本当に喋った!!」

「おい待て!白虎お前今こいつを朱雀って呼んだのか!?」


(朱雀って朱雀門とか四神の?)


何やら西条は白虎と話しているが朱里にはなんのことやら。

話が終わると、家まで送ってやるから少し署までついて来いと言われた。

家に返してもらえるなら(家に帰れるのか些か不安だが)とついていくことにした。


連れて行かれた先は〈帝都警察署〉

(帝都って…やっぱり私は異世界に来てたんだな…。なんとなくわかってたけど。なんとなくわかってたけど)

日本っぽいだけマシだろうと前向きに考えることにした。

歩いていると中庭についた。さらに奥の建物に〈水鏡(すいきょう)〉と書かれた看板がある部屋に通された。

中は少々湿っぽい。あまりこの場所を使用していないのか、部屋の隅の方は倉庫のようになっている。

適当に座ってくれといわれ近くのソファに座った。


「さて、聞きたいことはたくさんあるんだが、まずは大聖寺さんアンタ身体のどこかにアザはないか?」

「アザですか?ありますけど…なんで知ってるんです?」

「見せられるところにあるならそのアザ見せてくれないか?」

「手の甲なんで大丈夫ですよ。ほら、これです。生まれつきあるそうで消えないんですよね。」


西条は朱里の右の手の甲にあるアザをマジマジとみた。

アザというより文字のようにもマークのようにも見えるのだが、なにかの病気かと医者にかかったりもしたが健康上全く影響はなようでそれからずっと放置していたのだ。


「やっぱりアンタ妖憑きだったんだな。」

「妖憑き?」


西条は部屋の奥にある巻物を持って広げて見せた。

そこには妖憑きについて書かれていた。



妖憑き

一、その一族は妖を「視る」ことができる

一、一族の当主はその妖を使役することが可能である

一、妖憑きの当主の身体には必ずどこかに紋様が現れる



「視える奴はその一族とごくわずかに力を持つものだけであり、視える奴らはかなり少ないんだ。」

「じゃあ、西条さんも白虎がいたからその妖憑きなんですか?」

「あぁ、俺は首のところにアザがある。」


確認するとたしかに首元に赤いアザのような物があった。

でも家族も朱里も霊感が強かったり今まで見たことはなかった。さっきの巻物の説明が正しければ、私も何か白虎みたいなのを使役することができるのだろうか。


「あの、私も何か使役することができるってことですよね?」

「あぁ、アンタ一度も自分の使役獣を呼んだことがないのか。白虎の話によればアンタの使役獣は朱雀だ。」

「朱雀…不死鳥ってやつですよね。カッコ良さそう!でもどうやって呼ぶんです?」

「呼び方は俺が教えてやる。が、一つ条件がある。」


西条が提示した条件、それはもし使役獣が朱雀だった場合、〈水鏡〉として働いてもらうというものだった。〈水鏡〉とは警察組織であり、特殊部隊とされている。

主に扱うのは妖関連の事件のみ。そのため水鏡には妖憑きしか所属できないためかなり少数部隊である。

その条件を聞いた朱里は迷いはしたが、使役獣を見てみたい好奇心に負け条件をのんだ。 そして明日その儀式を行ってもらうこととなった。


「で、アンタ家はどこだ?送っていく」

「あーそのことなんですけど、私異世界から来たようなんですよね。」


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