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魔法使いの予知少女

作者: 幻中 飽那

こんにちは飽那です。まだまだ拙い文章かとも思いますが、読んでいただけると幸いです。

「はじめまして。君の未来、教えてあげましょっか?」

「はい?」



その意味わからん言葉を言われたのは学校の帰り道だった。

急なことだったので、素っ頓狂な声が出てしまう。


「え、えーと。あなたは?」

「私ですか?私はですねー魔法使いです。」


やべぇ、かなり痛い人だと思ってしまった。


「何言ってんだこいつみたいな顔してますね。んーそうですねー。信じてもらうには……、たとえば三十秒後、あの曲がり角から三つ編みの女子高生が出てきますよ。」


そんなこと言われても信じられるわけないと思っていたら、本当に三十秒後に出てきてしまった。

今のオレはめちゃくちゃ驚いた顔をしているだろう。


「ね、信じてもらえました?」


なんてこの自称魔法使いは言ってくる。

でも、まだ信じられない。

そんなことがあるわけない。そうだ、きっとまぐれだったんだ。

そうオレは納得していた。

だってあり得ない。

そんなこと。


「むうー。信じてくれてないみたいですね。まあわかってたことですけど。」


わかってた?その言葉に引っかかった。

本当に知ってるみたいだ。


「いっきに言ってもわかりませんよね。」


「あ、いや別に……。」


「まあいいです。また明日来ますね。バイバイ!」


「お、おい!」


オレの言葉も聞かずに行ってしまった。

嵐みたいな女だな。



次の日は、あの女に会いたくなかったので違う道を通った。

でも、会いたくないという願いは叶わなかった。


「ねぇ、なんでこんな道通って帰るんですか?私に会いたくなかったんですよね。私知ってますもん。」


今日もまた後ろからいきなり現れたのでびっくりした。

しかもこの声の主は昨日会った、自称魔法使いの痛い女だ。


「別にオレがどの道通って帰ろうとお前には関係ないだろ。自称魔法使いさん。」


「自称じゃないですし!んーよし。今から五秒後、あそこの男の子が持ってるクレープが落ちてその男の子が泣いてしまいます!」


「はあ?そんなことあるわけ……。」


そういったとき本当に男の子が持っているクレープが落ちてしまった。

大泣きだ。


「はは、まじか。」


「ふふーん。まじです。」


もう信じてやるしかないなと思った。

そんなすぐ信じすぎだろうと思うかもしれないけど、実際に会ったら信じざるを得ない。

まじで。


「はいはい、信じます信じますから。」


「やっりー。」


その魔法使いは八重歯を出して笑った。

その笑顔を見て、オレは少しだけこの魔法使いのことが好きになってしまったみたいだ。

女なんて免疫のないオレは、惚れやすっぽかったらしい。

そんなことを思っているとこんな疑問が生まれてきた。


「こうやってオレに信じさせたのはいいが、なんでオレにそんなこと言う必要があったんだよ。」


ふふんっといった顔で説明して来た。


「それはですね。私が君に会いたかったからです。駿河羽夜斗(するがはやと)くん。」


なんでオレの名前を知っているのかと思ったけれど、それもこいつの力だろうと納得した。


「なんで会いたかったかというとですね、君にあることを伝えたかったのです。」


「昨日言ってたオレの未来ってやつか?」


「違うような、合っているような、そんな感じです。実は私ですね、魔法使いといいましたが、予知ができるんです。生まれた時からそんな不思議な力があってですね。周りの人から気味悪がられて両親に捨てられました。それで空腹で死にそうだった時、君に会いました。おなかがすいてそうだった私を見て、君はその時持っていたお菓子をぜんぶ私にくれたんです。もう何年も前のこと、君も私も小学2年生くらいの時でしたから覚えてないと思いますけど。だからその時の気持ちを君に言うために会いに来たんです。」


本当に覚えていない。

ってか──、


「予知ってすげえな。じゃあこれから起こることもわかるってことだよな!」


そういったとたん魔法使いが顔を歪ませた。


「よ……。」


「よ?」


「よかったよぉ、君にあの人たちみたいに気味悪がられたら、どうしようと思って怖かったですけど、そんなことなくてぇ。」


大泣きしだしてしまった。

なんでかよく分からなくて、びっくりする。


「お、おい泣くなよ。ていうか怖かったって、予知すればわかるんじゃないのか?」


「こ、怖くてしてなかったんですよぅ。」


「泣くなって、泣くなって。」


それから少しの間魔法使いは泣き続けた。

そんな怖かったのに自分に話してくれたんだなと思うと、さっきよりもさらに好きになってしまった気がする。


「ありがとうございます。もう大丈夫です。」


「お、おう。」


魔法使いは大きく背伸びをした。

何かの決心をつけているみたいだった。


「それじゃ話の続きです。もうここら辺は予知してないので心臓ドキドキです。え、えーと……それで気持ちを言うために来たんですが……。あ、あの、わ、わたし、」


魔法使いの顔は真っ赤になっている。

こ、この展開は……。

まさか告白──なんてわけないか。


「羽夜斗君のことが好きなんです!」


その言葉を聞いてオレの好き度はMaxになってしまった。

ほんとに告白だったとは。


「オレも、好きです。」


驚いて無意識にそんな言葉が出てきてしまった。


「あ、いや、別に好きとか、そんなんじゃ……。」


恥ずかしくなってとっさに否定してしまうけど、一瞬明るくなった顔がみるみる暗くなっていくのっを見たら、肯定するしかなくなった。

実はそう見えただけだけど。


「やっぱり好きです。今無意識に飛び出た言葉にびっくりして否定してしちゃったけど本当はすきです。まじで好きです。付き合ってください。」


魔法使いはぽかんとした顔をしていたが、いきなり動き出した。


「は、ははははいいい?え、え?幻聴?好きって言った?付き合ってって言った?」


「言ったよ、オレ。」


「本当ですか?」


聞かれたのでもう一回言ってみる。


「本当です。付き合ってください!」


「は、はい。こちらこそ……よ、宜しくお願いします。」


「よろしくね。俺たちは付き合うことになったってことでいいんだよね。」


「うん!ありがとう。羽夜斗。」


「ねぇ、名前教えてくれる?彼女の名前は知っとかないと変でしょ?」


「私は由雨紀(ゆうき)。」


「由雨紀、か。よろしくね。」


「うん!」


出会って二日で恋人ってどんなラブコメだよって思うよね。

オレもそう思う。

まあ、正確には二日じゃないけどね。

 


それからオレたちは毎日毎日デートした。

由雨紀は予知を使わないで過ごしていた。

いつだって新鮮な気持ちがいいらしい。

そうして一週間が過ぎたころ。

一度だけ、オレたちの未来をのぞいてみることにした。

二人とも気になってしまったのだ。


「見てみるよ。いい?」


「うん。いいよ。」


由雨紀の未来をみたとき顔が、なんだか暗いような表情に見えた。


「どう、だった?悲しいことがあったの?」


「ううん、とっても楽しそうだった!ほんっとうに。」


「それなら、よかった。」


その時の由雨紀の笑顔が素敵すぎて、オレはその言葉を信じてしまった。

そんなこと、なかったのに。



次の日、また二人でデートを楽しんでいた。

今日は街で食べ歩きをしていた。


「これ、ほんとにおいしいね!羽夜斗。」


「そうだね。ほんとにおいしい。」


そういいながら信号が青になるのを待っていた。

そうしていると、急に由雨紀がなんでそんなことをきくのかよく分からないことを言ってきた。


「ねえ、羽夜斗は私のこと好き?」


「え、なんで今そんなことを……。」


よくわからない不安感が襲ってきて、狼狽えてしまう。


「お願い、答えて。」


「えっ……、好きだよ。当たり前じゃん。なんでそんなこときくの?」


「好きって言ってほしかったから。」


「そっか。オレは由雨紀のこと好きだよ。世界で一番愛してる。」


「ん、私も、好きだよ。ありがとう、羽夜斗。」


そういいながら近寄ってきてオレのことを突き飛ばす。

とっさのことで、飛ばされてしまった。


その瞬間、由雨紀のいた場所に車が突っ込んできた。

何が起きたか、理解することさえ難しかった。

目の前が真っ黒な世界に変わっていく。

誰かの悲鳴も聞こえなくなっていく。

全身の力も抜けていく。

由雨紀がどうなったかを確認することもままならず、オレは気を失ってしまった。



目が覚めたのは病院のベットの上だった。

オレはとっさに飛び起きて、近くにいた医者に聞く。


「あ、あの!由雨紀は、轢かれた女の子は、無事ですよね!?」


その医者は困ったような顔をして、とても残酷なことを口にした。


「大変申し上げにくいのですが、その女の子は亡くなってしまいました。即死でしたので、我々にもどうすることもできませんでした。居眠り運転だったそうです。」


そんなことを言った後、医者は出て行ってしまった。

そんな医者がいるのか。


でも、そんなことどうでもよかった。

由雨紀はもうどこにもいないのだと理解すると、今まで流したことのないような大粒の涙が溢れ出してきた。

悔しくて悔しくてしょうがなかった。

だって、考えればすぐにわかることだったのだから。

あの、未来を見たときのあの表情。

あの、信号機を待っている時の言葉。

きっと由雨紀は悲しんだに違いない。

未来を知って、怖くなったに違いない。

それなら、どうして……。


「どうして、何も言ってくれなかったのかなぁ。」


言ってくれれば、解決策を一緒に見つけられた。

より濃い時間を過ごせた。

ずっと一緒にいれたのに。


そんな言葉が、誰もいない病室に響いた。



特にけがはなかったので、次の日にオレは退院した。

家に帰ると、昨日から来ていた服を脱いだ。


「カサッ。」


服のポケットからそんな音が聞こえた。

覗いてみると、ひとつの封筒が入っていた。


『羽夜斗へ』


すぐに由雨紀からのだと分かった。封筒を開いて、読む。


『羽夜斗、あなたは今、とても悲しんでると思います。

 何もできなかった自分を責めていると思います。

 でもね、そんなことないよ。

 こうなることを言わなかったのは、私のわがままです。

 きっと言ってしまえば、

 君はどうにかして生きる方法を見つけようとするでしょう。

 見つからなかったら、残りの時間を少しでも濃く過ごそうとするでしょう。

 でも、未来は変わらないし、私はいつも通りに楽しんで終わりたかったんです。

 自分でもこうなるって知ったときは、未来を変えたいと思った。

 でも、変わらないんです。

 今まで何度も試してきたけど無理だったから。

 このことは君のことを全然を考えてない行動だと思います。

 だけど、私の初めてのわがままを許してくれると嬉しいな。

 私に楽しいをくれてありがとう。

 ずっと灰色だった私の世界に色をくれてありがとう。

 私は君のことが大好きです。

 私のこと、忘れないで。』


「ゆう、き……。ほん、と。わがままだなぁ。そうだね、忘れないよ、忘れない。ずっと覚えてる。だから、また、合えるといいな。さようなら、由雨紀。またね、由雨紀。」

ここまでお読みいただきありがとうございました。誤字脱字があったら教えていただけると嬉しいです。アドバイスや感想も送って下さったら幸いです。

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