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時速十億八千万kmのスローライフ

作者: ひよこねこ

 スローライフ。

 おそらく現在、秒単位でせわしない生活を送っているであろう皆さん。皆さんはあのスローライフというやつに憧れたこと、あるんではないでしょうか。

 高速回転するコマのように過ぎていく毎日。今日の仕事が終わってもまた始まる明日の仕事を思えば、なんだか今日が終わった気にもなりませんよね。

 大変だとは思いますが、頑張っていただきたい。

 そんな他人事の口調な私は今、スローライフをおもいっきり満喫しております。

 毎日のんびり、本当にスローな生活です。といってもどこからが今日で、どこからが明日なのかも気にならない生活ですが。仕事らしい仕事といえば数日に一度、簡単なチェックをすることと人工知能とおしゃべりすることだけという緩やかな生活です。

 ワンオペ職場なのが玉に瑕で、話し相手が人工知能しかおりませんが、慣れればそれも楽しいものです。こういう生活、私にはあってるんだと思います。

 それはともかく、実はこの職場、ものすごい速度で移動しております。時速で言うとおよそ十億八千万㎞。ほぼほぼ光速なんです。時速十億八千万㎞のスローライフというわけです。出発地点は我らが母星、目的地は皆さんが目下絶賛開発中であろう植民惑星。

 そう、恒星間移民船が私の職場です。

 今はまだ皆さんはこの船の中で受精卵という形で眠っておられます。船が植民惑星に到着して、人工知能の働きによって皆さんが誕生する頃には、残念ですが私はもう空のお星さまになっていることでしょう。

 なぜ私だけ生身のまま乗っているのかって? 

 人工知能だけで航海できれば良かったんですが、どうしても機械任せでは心もとない。やはり人間がこいつらを監督してやらねばいかんという考えが母星では強かったんですよ。誰かがやらなきゃいけなかったんで。

 もっともこの航海、船内時間でも百年を少し超えるぐらいかかりますんで、最後の方は私が仕込んだ人工知能が仕事を行うことになるでしょう。

 できるかぎり延命しながら頑張って皆さんの顔を見たいんですけどねえ。

 無理でしょうねえ。

 でも天気の良い夜は空を見てください。細長い月みたいなものが浮いているでしょう? 役目を終えた恒星間移民船です。

 それが私のお墓……それも辛気臭いですね、そうそう、それが私のスローライフな職場です。

 ではみなさん、これからも頑張って惑星開発に精を出してください。

 月並みな言葉ですが、わたしはいつまでも皆さんのこと、見守っていますからね。

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