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少年の探訪記、少女の調査日誌

初投稿です

【某県某所―古びた洋館】


『異世界探訪記』


「やったぞ!やっと…やっと!」


――ついに


「開いたんだ!」


―ついに成功したのだと確信する。


 僕のじいさま、綿無 勇志(わたなし ゆうし)が残した奇書『異世界探訪記』-異世界の生活、技術、そして魔法などが書かれた本だ。じいさまが亡くなり、この洋館を譲り受け、この本を見つけてから数年。ついに成功したのだ。―『異世界への門を開く魔法』を…


 今日僕は、この世界から旅立つ。帰ってくることがあるのか、誰かの目に触れることがあるのか、わからないが、異世界の記録を記しておきたいと思う。そうこれは、僕の―――


『異世界探訪記』 著:綿無 勇心(わたなし ゆうしん)


――

―――

【異世界某所-●●●を祀る神殿】


『調査日誌』 記:エーバー・シュバイン

 

 ●月●日


 なんとか奴らを撒けたようだった。巫女の予言を一体どこで嗅ぎつけたのだろうか。しかし、『鍵』がなければ樹海を抜けてこの神殿まではたどり着けないだろう。


 そう今日は予言の日だ。-この世界を、魔法を揺るがす事態が起こるという。私は、それが事実なのか、何なのかを調査あるいは確保・処分するために『世の国 リンネ』から派遣されてきた。


 ここ100年、予言による大きな事件などは全くおきていない。すべて、ちょっとした解釈の違いによるものだった。今回もその類だと思っているが、(実際、調査に派遣されたのも私一人と、国の方も重く見ていないようだ)途中私の持つ鍵を狙ってきた、賊たちは何か明確な狙いがあるように見えた。


 そう、にわかには信じがたい予言だが、この神殿には1000年以上前もの英雄『大賢者 ユーシ・フルヒトザーム』の残した魔術書が封印されているという。何かがあってもおかしくないのかもしれない。


――

―――

『異世界探訪記』 著:綿無 勇心


「いっ…痛…」

 目の前が光ったと思ったら、凄まじい衝撃が走った。辺りを見回すと薄暗くてよく見えないが、洋館の図書室ではないようだ。どうやら転世は成功したらしい。ひとまずホッと胸をなでおろす。目が慣れてくると、どうやらここは石造りの建物の中のようだ。


「……転世できたんだよな…そうだ!荷物は無事か!?」


手荷物を確認する。図書室にあったじいさまのトランクの中に、じいさまの『異世界探訪記』、僕の『異世界探訪記』、ちょっとした本と食料が揃っているのを確認する。


「欠損、欠品はないみたいだな…。なら、とりあえず外に出て周辺を探索するか…」


ふと、その時人の気配が近づいてきていることに気づいた。


「君は一体何者だい?さっきの音は君の仕業かな?君も()()と同じように予言の品を狙っているのか?返答によっては君を処刑する権利が、私にはある。


名乗らせてもらおう。私は『集の国 カニスルプス』所属、二等騎士『エーバー・シュバイン』である!」


 そこには、フードを目深に被ったメガネの少女がいた。


―― 

―――


「なるほど、じゃあ君は異世界からやってきたというのかい?」


 事情を話しながら、神殿を出て森の中を歩いている。


「異世界人というのは、君で3種類目だよ。それにしても珍しいな、単身で、こちらがどんな世界かよく知らずにやってくるなんて。」


 少しでも、自分の情報を開示しないと、何をされるか分かったものではない雰囲気だったので、異世界人だということを話してしまった。

 しかし、こちらの世界に来て、一人目の住人に異世界人だということが、あっさりと受け入れられるとは、正直驚いている。


「ただ、君の世界の文字で書かれた大昔のこちらの世界の探訪記かぁ。もしかしたら、大昔にこっちから、そっちにいった人がいるのかもね。」


 そう、こちらに来てもう二つ驚いたことと、誤魔化したことがある。

 こちらの世界とあちらの世界では時間の流れが大きく異なるらしく、じいさまがこちらの世界にいたのは1000年以上昔のこと。

 そして、じいさまはこちらの世界では()()()として知られているらしい。

 探訪記の著者が、僕のじいさまで、そのじいさまがこの神殿に祭られている大賢者であることは彼女に話していない。


「まぁ、ともかく君が神殿に現れた理由と経緯はわかった。が、こっちの事情もさっき話した通りだからね。ひとまず、国まで行って、一通り検査とかしないといけないから。」


「あぁ。別に明確な目的があって来たわけじゃないんだ。いくらでも付き合うよ。」


「それにしても、魔法を揺るがす存在って聞いていたから、魔法を使えたことのない人間が現れるとは思っても見なかったよ。」


「ほんとに。いままでいくら魔法の練習をその本の通りにしたんだけどな。転世魔法が成功したのが、不思議なくらいだよ。」


「君の世界には、魔力(マナ)が全くないのかもね。こちらの世界で魔力(マナ)に満ちた空気を吸ってるうちに使えるようになると思うよ。」


 なんて、話をしているうちに辺りの木々が少なくなってきた。どうやら、そろそろ森を抜けるらしい。


「気をつけてね。樹海を出ると、人避けの結界がなくなるから、さっき言った賊がいつ襲ってくるかもしれないから。不用意に離れないでね。」


「了解、了解。ところで、どれくらいかけて、どこへ向かうんだ?」


「えっとね、最終目的地は『世の国 リンネ』なんだけど、そこまで1週間護衛1人はキツイから一旦『カニスルプス』に寄って人員を補充するかな。そこまで1日くらい。そんで、カニスルプスからリンネまでは6日ちょっとくらいかな。」


「1週間…それじゃあさ―――」


 森を抜けた瞬間、視界は暗転し、轟音が響き渡った


――

―――

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