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 エリーの言葉でしばし固まってしまって居たが、何とか正気を取り戻し


「おかしいだろ! 俺はサーシャを引き取っただけで、所有物とかじゃないから!」


 奴隷商から引き取っただけで夫婦になるなら世の中大変な事になる。

 俺の声で鞘華も正気に戻ったのか声を上げる。


「そうよ! それに正樹は私と夫婦なんだから!」


 俺と鞘華が口々に異議申し立てる。

 しかし、そんな物はどこ吹く風と言わんばかりにエリーは告げる。


「領主が女の奴隷を引き入れるという事はそれだけで下衆な輩が下衆の想像や噂を生みます。そういう事が無いように、領主が異性の奴隷を買う事は夫婦になり、幸せに暮らしますという意味を込めてそういう決まりが作られました。それに、サヤカ様の事は何も問題ありません。基本的に一夫多妻制ですので」


 俺と鞘華は開いた口が塞がらなかった。

 サーシャはどう思っているのだろうとかと思い、サーシャの方を向く。

 赤面させて俯きながらモジモジしている。


「サーシャは知っていたのか?」

「は、はい。ですが私は第二婦人ですし、元奴隷なので私にとってはご主人様です」


 うぁー、と天を仰いだ。

 ここはゲームの中でヒロインの攻略やイベントは必須。

 俺達がどう言ったってシステムは変えられない。

 それを鞘華に説明して納得するだろうか?


 それにゲームのクリア条件がヒロイン全員攻略のハーレムエンドしか無い。

 つまりサーシャ以外にも妻が増えるという事になる。

 俺は意を決して鞘華に話しかける。


「鞘華、ちょっといいか?」

「なに? 何か良い案でも浮かんだの?」

「えっと、その事についてなんだけど……」


 俺は鞘華に自分の知る限りのゲームのクリア条件を話す事にした。

 途中途中で鞘華の顔が青くなったり赤くなったりしていた。

 そして全ての説明が終わった。


「……という訳なんだ」

「そっか、そういうシステムならしょうがないわね」


 どうやら納得してくれたらしいと安堵しようとすると


「なんて言う訳ないでしょー! なんなのよ! 折角正樹と付き合えたと思ったら次の日には別の女が正樹の奥さん? しかもそれが今後増えてくなんてどうかしてるわ!」

「お、落ち着けって」

「落ち着ける訳ないでしょーが!」

「落ち着けって言ってるだろッ!?」


 俺の怒声で鞘華がビクッとし、俯きがちに黙る。

 無理やり落ち着かせる。

 そして鞘華を諭すように語り掛ける。


「昨日、俺が言った事覚えてるか?」

「……うん」

「鞘華も思考を読んだから分かるだろうけど、あれが俺の本心だ」

「……」

「今もその気持ちは変わってない。これからも変わる事は無い」

「……」

「鞘華は俺の事嫌いになったりするか?」

「正樹を嫌いになるなんてありえない!」

「俺も同じ気持ちだよ。だから鞘華」

「なに?」

「俺をずっと鞘華に惚れさせ続けてくれ」

「へ?」

「どんなヒロインやイベントがあっても、鞘華が一番だと思わせてくれ」

「……」

「駄目か?」

「……いいわ! 今以上に私に惚れさせて、私無しじゃ生きられない様にしてあげる!」

「それでこそ俺の好きな鞘華だ」

「ふん。他の女なんかに負けないんだから!」


 どうにか鞘華を説得できた。

 異世界ヒロインとの修羅場は見たくないからな。

 どうにか俺達の話がまとまって、再びエリーに話しかける。


「俺達も覚悟はできたよ。サーシャを第二婦人として認める」

「左様でございますか。安心しました」

「心配してくれてたんだね」

「このような事で決断が鈍る様では領地の統一などできませんから」

「手厳しいな」

「私の役目はご主人様の領地統一のサポートですから」


 エリーとそんなやり取りをした後、サーシャにも声を掛ける。


「悪かったな、色々騒いだりして」

「いえ、私は気にしていませんので」

「改めてこれからよろしく」

「はい、マサキ様」

「サーシャが最初のライバルね。一応よろしく」

「サヤカ様もよろしくお願いします」


 改めて挨拶を交わした。

 そしていよいよ風呂の時間である。


「正樹は先に入ってて!」


 と、鞘華に言われたので現在一人で入浴中である。

 昨日は結局入れなかったし、色々ありすぎて疲れた体が沁みる。

 風呂はレンガのような石造りになっていて、なんと魔法で湯を沸かすらしい。

 もしかしてエリーは魔法使えるのだろうか?

 エリー以外の使用人を見た事がないし。

 と、考えていると扉の向こうから声を掛けられた。


「正樹ー、は、入るわよー?」

「お、おう」


 ついに鞘華達が入って来る。

 心臓の鼓動が早くなる。


 ガララ、バタンッ


「お、お邪魔しま~す」

「失礼します」


 タオルの様な布で前を隠した鞘華とサーシャが入って来た。

 アニメ等で湯気や奇妙な光で隠されている部分がしっかりと見えてしまった!

 鞘華は隠しているつもりなのだろうが、いかんせん 布が小さい為隠しきれていない。

 サーシャに至っては隠そうともせず、堂々と裸体を晒していた。

 これは目のやり場に困る。


「ちょっと、あまりこっち見ないで」

「ああ、気を付け……」


 鞘華から目を逸らそうとした先にはサーシャの裸があった。


「ちょっ、そっちも見るな!」


 しょうがないので目を瞑る。

 しかし、目を瞑る事で先ほどの光景が脳裏に浮かんでしまう。

 冷静になれ! 心を無にするんだ!

 そんな俺の抵抗などぶち壊すよな言葉が聞こえた。


「マサキ様、お背中流しますのでこちらへ来てください」

「ちょっ、サーシャ本気なの?」

「はい」

「行かなきゃダメか?」

「主人の身体を洗うのが妻の仕事です」

「うぐっ!」


 こんな予感はしていた。

 していたが敢えてスルーしていたのに。

 鞘華は鞘華で妻の仕事という単語に何故か同様している。


「やはり、私ではご不満でしょうか?」


 涙目上目遣いで見ないで!

 くっそ! こうなりゃヤケだ!

 立ち上がりサーシャの前まで行き、椅子に座る。


「じゃあサーシャ、頼む」

「初めてですので至らない点があるかもしれませんが」


 そう言い、石鹸を使って泡立てる気配を感じる。


「では、失礼します」


 他人に体を洗われるのはいつ以来だろうと考えていたら背中に電流が走る!

 二つの柔らかくて大きな物が背中を上下に動いている。

 こ、これはもしかして!

 確認の為サーシャに声を掛けようとした所で、鞘華が声を荒げる。


「サーシャ、あ、あなた何してるのよ!」

「マサキ様の身体を洗っていますが何か?」

「何か? じゃないわよ! その洗い方はおかしいでしょ!」

「そうなのですか?ご主人様を洗う時はこうする様に教わりました」

「普通はこの布に石鹸付けて、布で体をあらうのよ。わかった?」

「わかりました。では、あらためて」


 そう言い、今度はちゃんと布で洗い出した。

 安心した様な、勿体なかった様な。


「気持ちいいですか?」

「ああ、気持ちいいよ」

「良かったです」


 俺が完全にサーシャに身を任せていると


「わ、私も洗ってあげる!」


 鞘華も俺の背中を洗い出した。

 恐らくサーシャに対抗心を抱いたのだろう。


「どう? 気持ちいい?」

「気持ちいいよ、鞘華」


 一生懸命に体を洗っている鞘華を想像して笑みが零れた。

 やっぱり鞘華は可愛いな。

 体を洗って貰ったお礼にと鞘華とサーシャの背中も流した。


 風呂も無事に終わり今は各自部屋に帰りくつろいでいる。

 俺と鞘華は今までと変わらず一緒の部屋だが。

 二人きりになるとドキドキしてしまう。

 風呂あがりのせいか、妙に色っぽく見える。

 長い髪をタオルで乾かしている姿に見とれてしまう。


「ねぇ、正樹」

「は、はい!」


 急に話しかけられたのでビックリして敬語になってしまった。


「ふふ、何ビックリしてるのよ~」


 そう言いながら鞘華は俺の隣に腰掛ける。

 なんか良い匂いする。


「いや、ちょっと考え事してて」

「もしかしてエッチな事考えてたんでしょう~?」


 うりうり~と頬っぺたをつついてくる。

 わざとなのか素でやっているのか分からないが可愛すぎる!


「ち、違うって!」


 思わず声が大きくなってしまった。


「ごめん、調子に乗りすぎたね……」


 シュンとする鞘華も可愛い!


「鞘華は悪くない! って言うか、か、可愛かった」

「ホントに?」

「ああ、可愛かった」

「へへ~、ありがと♡」


 ああ~、もう抱きしめちゃっていいかな?

 いやいや、鞘華を大切にするんだ! 我慢我慢。


「昼間の事考えてたんだよ」

「何を考えてたの?」

「スキルを使ってモンスターを殺しただろ?」

「そうね」

「それで思ったんだけど、この世界ではどこまでスキルが通用するのかなって」

「確かに気になるわね」


 う~ん、と人差し指を顎に当てて考えた後


「私も気になる事があるのよね」

「なんだ?」

「サーシャの事よ」

「まだ攻略の事納得してなかったのか?」

「そうじゃなくて! 昼間、正樹がスキルを使うとき霧みたいなのが見えるっていったたじゃない?」

「そういえば言ってたな。俺から黒い霧が出て、それがモンスターに触れた瞬間にモンスターが死んだって」

「そうそう」

「そうだな。それに、昔から他人には見えない何かが見えるって言ってたな」


 何故かは分からないが、サーシャには俺達がスキルを使う時に霧の様な物が見える。

 スキル以外にも何かしら見える様だがそれが何か自分でも分からない。

 スキルを使う時、一度頭で念じる必要がある。

 サーシャは思念が見えるという事なのだろうか?


「鞘華はどう思う?」

「ん~、正直お手上げね。霧がどうこう言われても私達には見えない訳だし」

「取りあえず、サーシャはこのままでも問題ないか」

「そうね」


 霧が見えている本人がよく分かっていないのだ。

 俺達がいくら推測をしたところで所詮推測に過ぎない。

 霧が見える事で俺達に害は無いのだからこのままでいいだろう。

 俺がそう整理していると


「それより、正樹のスキルの事よ」


 鞘華がそう切り出した。


「モンスター相手に、というかこの世界に対してもスキルは使えたな」

「そうなのよ! だ、だからね……」

「ん?」


 鞘華は俯き、指をモジモジさせている。

 顔が赤くなっていて、口元もモニョモニョさせている。

 やがて意を決した様に俺に向き直り


「正樹の封印解除、し、しましょ?」


 それで何やらモジモジしていたのか。

 封印解除には解除の鍵である鞘華が必要で、しかもキスでの唾液交換が条件らしい。

 何で陽佳さんはこんな解除方法にしたんだ。


「い、いいのか?」

「恋人同士なので、何も問題ないと思います」


 緊張からなのだろうか、何故か鞘華が敬語で返事する。


「じ、じゃあ、いくぞ……」

「ちょ、ちょっと待って!」

「どうした?」

「その、部屋の明かり消して欲しい……」

「わ、分かった!」


 俺は慌てて部屋の明かりを消す。

 すると、月明かりに照らされた鞘華が浮かび上がる。

 こうして見ているだけで吸い込まれそうだ。

 ベッドに座る鞘華の横にすわり、鞘華の方に向き直る。

 そして、鞘華の両肩に手を置く。

 すると鞘華の身体がビクッと一瞬跳ね上がる。


「大丈夫か?」

「私なら大丈夫だから……」


 そう言い、鞘華は目を閉じる。

 柔らかそうな唇が少し震えている。

 俺はその震えを抑える様に唇を重ねた。

 最初は昨日の様な唇と唇が触れるだけのキスを数回繰り返した。

 鞘華の緊張がほぐれていくのを感じ、控えめに舌を入れる。

 鞘華の舌も中に入ってくる。

 温かく、ヌルヌルとした舌が絡みつく。

 キスってこんなに気持ち良かったのか。

 脳が痺れてまともに思考できない。

 鞘華の腕が俺の背中に回されて、離さないといった感じに抱きしめてくる。

 俺も手を肩から離し、腰に回して鞘華を引き寄せる。

 俺の五感全てが鞘華で埋め尽くされていく。

 どれ位そうしていただろうか。

 数秒のような気もするし、数十分の様にも感じた。

 どちらからともなく唇が離れる。

 キスで興奮してしまったのか、少し呼吸が乱れる。

 それは鞘華も同じようだった。


「こ、これで封印解除できたな」


 何か喋ろうと必死になってやっと口にしたのが雰囲気もへったくれもない言葉だった。

 すると鞘華が


「あっ!」


 と、声をだした後、照れたように言う。


「そ、その、キスが気持ち良すぎて封印解除って念じるのわすれてた……」


 そう言うと手をモジモジさせながら


「だから、も、もう一回……して?」


 その言葉を聞いた瞬間に俺の理性が吹き飛んだ。

 鞘華をベッドに押し倒して少し強引なキスをした。


「鞘華、ごめん、俺もう……」

「……いいよ?」


 そう言って鞘華は俺を抱きしめる。

 俺も鞘華を抱きしめ返して耳元で鞘華に囁く


「鞘華、好きだ」

「私も大好きだよ」



 その夜、俺達は一つになった

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