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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

亜麻色の記憶

作者: くるみたん

第一章

「どうしてなんだ?」僕は俯き、そして泣いていた。 響き渡るサイレンの音、何かが起こったかのような人だかり、僕にとってその全てが許容するのが困難であった。

僕には1年間前から、ずっと交際してきた亜麻色の髪をした彼女がいた。名前は"春乃"。 僕はまるで 春の日の日差しの様に 暖かい温厚な性格に 恋い焦がれていた。

だがしかし、事件は起こった 。青信号が点滅している時に 横断歩道を渡った彼女は信号を無視をした 車に引かれてしまったのだ。そして、救急隊に運ばれて行く彼女を見る僕 。そして今の状況に至る。

僕の無力さがこの事態を招いたんだ、という自傷的な事が頭の中を巡っていた。 僕は、救急隊と意識不明の重体の彼女と一緒に救急車へ乗りこみ 、病院へ向かった 。

病院へ 到着後 彼女は 緊急手術が行われることになった。 僕は 仮眠を取りつつ、必死に手術の成功を祈った。僕は「彼女に付き添ってあげれば あんな事故は起こらなかった」そんな言葉を紡ぐことしかできず、罪悪感に苛まれていた。数時間後、医師が手術室から出てきて、必死になって「彼女は助かりますか!?」と聞く僕を前にして 首を横に振った。 つまりはそういうことだろう。 僕は 罪悪感と喪失感で、涙を流しながらも そこに立ち尽くした.....。


第二章

彼女が死んでからというもの僕の日常はまるで、それまで鮮やかだった色を失ってしまった。 僕は 私立の有名大学に通っているのだが 、その大学の授業もやがて サボり気味になっていた。「はぁ...大学か...面倒臭いなぁ」そんなことも呟くようになってしまっていた。

そんなある日だった...ふとインターネットの掲示板 のある記事が目に入った。それは "タイムリープマシーン"についての記事だった。「ふーん これがあれば春乃を救えるのかなー 」とありもしない妄想を 、頭の中で膨らませていた 。というもの、今年で2025年になるが、 この時代の科学でタイムリープマシーンを発明•開発することは不可能であった。「あぁ また春乃のこと思い出しちゃったな、少しは学校行くか」 僕は一人言を呟き、大学の授業に出ることにした。

久々に来る大学の受講室は 雰囲気が前と少し変わっているような気がした。春乃の交通事故によるものだと思う。

「あれ?あの人 しばらく 来てなかった人だよね?」「何していたんだろう?」などと、お喋りをする周りが少し騒がしく感じた 。

久々の 受講はとても充実したものであった。そして、しばらく授業を休んでいたため 大量のレポートの課題が出されていた。


第三章

「レポートかぁ..頑張ろうかな」大学からの帰路についた僕は、少々疲れ気味にそう呟いた。

テーマは 最近興味を持った"タイムリープマシーン"を題材にするつもりでいた 。

その日 以降僕は、授業を全て出席しつつ、レポートをこなすように成る程 状態は回復していた。 "タイムリープマシーン"についても僕なりに調べ 理論を立て 機械をいじるようにもなり、レポートも完璧に調べた。だが、しかし そのレポートを教授に提出すると鼻で笑われてしまった。現代科学では実現不可能とされる 題材のレポートを書いてきてしまったからだろう。そして僕は悔いを抱えながら、その場を去るしかなった。

その時、教授に笑われた悔しさを忘れられず 僕は"タイムリープマシーン"を研究するサークルを立ち上げた。だが、入りたいと言う人は集まらず 大学からの費用をもらえず 研究は手付かずだった。それでも独学で 理論作りをし続けた。いつか 春乃を救える時が来ると信じ続けて。


第四章

あれから 何年が経っただろうか? 僕もすっかり年老いてしまった。 僕は人生の全てを"タイムリープマシーン"に費やしたと言っても過言ではない月日を過ごしてきた 。いつか、春乃を救える日がやって来るとそう信じて。研究者仲間もいつしか増えていた。

そして念願の日が やって来た時には既に84歳になっていた。 「長かったのぉ」僕は嬉しそうにそう言った。僕はベッドに横になり「僕の人生は君のためにあったんだね」そう呟いた。酷くなる目眩、遠のいていく意識、


そして僕はあの事件が起きた2025年へ タイムリープした。


第五章

目が覚めた そこは ベットの上.... 。見慣れている天井、恐らくは僕の家だろう。目覚まし時計の針は午前7:23分を指していた。顔を洗い、朝食を摂った後 携帯をチェックすると1件のメールが届いていた 。「ん? 春乃からか? あぁ そうか今日は2人で買い物に出かける予定だったな」 そう呟き、僕は身支度を済ませる。 僕は体感的には50年以上 彼女を目にしていない。そして、彼女に会うことに対して、嬉しい半面辛い半面もあった。僕の行動次第では、彼女が死ぬ未来が 変わらないということもあるからだ。

「えぇーっと ここで良いんだよな?」春乃から待ち合わせに指定されている 駅前に着いた僕は、不安そうな顔でそう呟いた。そして、数分後のことだ。「あ、見つけた!お待たせ、ごめんね。」春乃が到着し、そう謝った。彼女の息が切れている、相当 急いでこちらに向かってきたのだろう。 僕は気を遣って「大丈夫全然待ってないよ じゃあ行こうか?」と、言った。「うん!」彼女は嬉しそうに同意していた。

そして、その後彼女との 買い物や食事を経て時刻は15:40 になっていた。 ここまでは何も変化が なく、それは逆に僕の不安を煽ることとなっていた 。


第六章

「ねぇねぇ 起きてよもう」僕は、春乃に軽く肩をゆすられ 目を覚ました。 先程まで、 公園のベンチ に座っていたが、僕はそこで居眠りをしてしまっていたらしい。「ぐっすり眠ってたね 。で、これからどうするの?」 彼女は 笑いをこらえながら聞いてきた。そんな彼女へ向けて僕は 「 すまないな...今日はこれで 解散にしないか?」と言い放った。彼女は「何か予定でもあるの?」と心配そうに 聞いてきた。

というもの、彼女は あと数時間後に死んでしまう。だから、安全な彼女の家に早めに返してあげないといけない。だが、彼女の家が安全だと誰が保証できるのだろうか? などと、頭の中に色々な考えを巡らせていると 、「大丈夫?気分でも悪いの?」彼女は言った。 僕は「あぁ 少しね でも大丈夫 そっちの家までは送るよ」と、少しかっこつけた ことを言った。

僕には彼女を失う未来が 見えていることに関して、彼女を救う意志、彼女を失うことに関しての不安感 とは別にもどかしい思いがあった。それは 僕にとって 非常に愛おしく、そして、恋慕を抱いてる 春乃に僕の "好き"という気持ちを伝えられていない ことだった。僕は万が一彼女が死ぬ未来に なっても このもどかしい思いは 払拭したい。 今日僕は 彼女に告白すると そうこの2025年の雲一つないこの快晴の空に向かって誓った。


第七章

-事故が起こるまであと10分-

僕は周囲に目をこらし、春乃を守るようにして 歩いていた。僕の頭の中は 複雑な感情が絡み合っていて、既に思考する余裕すらなかった。額には大量の汗が出ている。今の気温は 22度、汗をかくほど暑くはない。恐らくは、冷汗 なのだろう。そして少しずつ気分のだるさと吐き気が僕を苛み始めた。今日の一日だけは 我慢しろと言い聞かせていたのに 。そんな僕を見兼ねて彼女は僕に気を遣って 「大丈夫? 無理しなくても良いんだよ」などと、言っていたが 「大丈夫だ....帰ろ.....」 僕はその言葉を最後まで言い切れないまま 僕の意識は朦朧とし始めた 。「糞、結局僕は誰も救えやしないのか....こんなところで終わってしまうのか」そう僕は呟いた。そんな僕の元に寄ってきた春乃。「ちょっと待ってて今救急車呼ぶから」と泣き目になってそう言った。

僕はこんなこの時代までやって来てまで得たチャンスを空費してしまうのか?朦朧とする意識の中 それだけが 頭の中に浮かんでいた。 そして、 僕は彼女と向き合って 「ありがとう、僕は春乃の事が大好きだ。これだけは忘れ無いで欲しい」と言い残し 意識を失ってしまった。彼女の返答を聞くことができずに。

そして、この間に救急車を呼びに大通りに出ようとした 彼女は青信号を渡っている途中に、信号無視をした車に引かれて死亡してしまった。

目が覚めた...どうやら意識を取り戻したようだ。「どうしてこうなるんだ」響き渡るサイレンの音、人だかり。見覚えのある光景。

僕は運命に対し、ひどい嫌悪感を覚えた、だが、それ以上に大きかったのは、己の無力さだ。僕では何をしても彼女を救うことができない その感情からだろうか僕は泣き崩れてしまった。


第八章

記憶、それは儚いものと書かれてある小説の1ページに栞を挟み、僕は 家のリビングに1人佇んでいた。

僕には 思い出せない記憶がある 。それは決して鮮やかとは言い難いが、とても暖かさを感じる。それは亜麻色の記憶。どうしてそんな大切な記憶を失ってしまったのだろうか、もう僕にはそのことすら理解ができない。

そして、記憶の片隅にはあることに必死になって人生1つ を捧げたのに、その努力は報われなかったというものがあった。これは何の記憶なんだろう? 必死になって思い出してみたが 、記憶のピースはつながらなかった。 それは、大きな喪失感となって僕を蝕んだ。 今の僕には何があるだろうか?そんなことを考えたが 何もないとういのが正直なところであった。僕から「はぁ...もう疲れたよ。」と 溜息と共に出た言葉に 反応してくれる人は誰もいない。 それは孤独。

ふと、僕の目の前には鋭利な 果物ナイフがあった 。

「これを使えば 楽になれるのかな?」僕は何かに縋るようにそう言い放った。

今僕は狂っている、それは僕自身分かっている。だが、これ以上僕を苛む喪失感と孤独感から解放されたい という願望が大かった。 僕は左手首に 果物ナイフをかざし、動脈を切った。赤く鮮やかな血が、切断部から噴き出ている。

「こんな人生無意味だったな」僕はそんな捨てセリフを放つと、意識を失い、その場に倒れこんでしまった。


最終章

目が覚めたら、僕は青々しい草 が生い茂っている草原にいた。 まるで夢の中のように 居心地が良い。

「死んでしまったのかな僕は...」と呟く僕の声は風の音に掻き消されて消えていった。

僕は、体を 起こして 、倒れこんだ 以前の記憶を整理しようとしていた。

雲一つない 青空 。そして、周りは暖い。

僕はこの美しい空をずっと眺めていた。

すると、僕の背後から「こんなところで何してるの?」 と、話しかけてくる 女性がいた。

彼女の亜麻色の髪に、僕は見覚えがあったが、詳しい所までは思い出せない。

「あぁ空が綺麗でね、黄昏ていたんだ」

と、僕は彼女にそう言った。 すると彼女は僕の近くに寄り添って「おかえり」と囁いた。 その瞬間僕は 全てを記憶を思い出してしまった。「あぁ、ただいま 春乃。」僕はそう彼女に言った。

空は綺麗に晴れている。僕の春乃に関しての記憶も、この澄み渡った空の様に綺麗に見渡せる。だが、しかし現実の僕はもう死んでしまっているのだろう。 僕は今、目の前にいる春乃と会うために報われない人生を送ってきたのだろうか? 。後悔の念が頭の中を駆け巡ってしまっていた。


僕は不幸者だ。


Fin.

始めて の小説投稿なので至らない点もあったと思いますが、お読み頂きありがとうございます。

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