20話 どうせ嘘なら最後まで、
何処に居るんだろうッ!?
あたし・・・菊来紅葉は騒がしく長い廊下をバタバタと駆け回っていた。同じ風景をもう何度も見ている気がする。
一ノ宮さんと2手に別れて駆け回る。
もういい加減見つかってもいい気がする。
酸欠状態一歩手前になりながらも走り続けた。
だって、負けたら天宮さんのお嫁に・・・!
それだけは嫌だ!、と走り続ける。
そういえばどうしてこんなに頑張るんだろう。
だってそんなに大切でなければ他人の人生なんかどうでもいいものだと思う。
親友だから?
自分で思った答えにチクリと胸が痛む。
―――違う?でもそうでしょう?
自分の心の中から誰かが語りかけてくる。
そうだけど、
―――そうだけど?
何かが違う。
―――何が?
・・・何がだろう。分からない・・・でも違うの。
―――分からないなら違わないでしょう?
そうだ。そうだけど違う。李玖が《好き》だ。大切だ。
―――《好き》って親友の?
親友の《好き》・・・・?
―――だって親友でしょう?
違う、これは・・・・・
異性に対しての《好き》だ。
あたしはただ走った。
***
頭がぐらぐらする。
俺は殺風景な部屋に倒れこんでいた。腕時計を見ると先刻の時間からは1時間程度経過している様だ。
それにしても何で此処に、と思った途端に鮮やかに記憶が蘇える。
俺は天宮に拉致されて、それで・・・・
それ以上難しく考えようとすると頭がキン、と耳鳴りがなった。
「痛っ・・・・・」
・・・・・・とにかく抜け出そう。扉を開け長い長い廊下に出る・・・・と。
「紅葉?」
妙に息を切らした紅葉がいた。
「李玖・・・・・・・ッ!」
「どうした・・・?何か凄い顔だけど」
紅葉は見ての通り泣きそうな顔になっている。何か放っておけないし此処から脱出したいので駆け寄ろうとした・・・が。
ぐいっ
首根っこが掴まれ後ろの方へ引き寄せられる。と、思ったのは数秒で手首を掴まれた。
「!?」
何が起こったんだ、と思い後ろを見ると天宮さんがにこにこと笑いながら立っていた。何か恐ぇ・・・。
「天宮さん?」呼びかけても返事はしない。逆に紅葉に向かって呼びかける。
「時間切れね・・・ゲームオーバー」
「えっ」紅葉が驚いた声を出す。俺も驚いたが、よく意味が分からない。ゲームオ−バーって何が・・・というか掴まれた手を離してほしい。
「約束通り李玖ちゃんと結婚するわね♪さ、行きましょ李玖ちゃん」
「はぁああああッ!!????」
俺は思わず大声を出す。な、何だそれ・・・。
「だってぇ―――約束しちゃったのよぉ約束は守らなくちゃいけないのよぉ〜〜〜」
天宮さんは行き成りブリっ子口調になって体をクネクネとさせる。は、はっきりいって気持ち悪いな・・・。
「約束って・・・天宮さんそんな事してない・・・いや、してたけどさ選択権無しでしたとは言わないッ!大体数秒か数分程度位いいじゃないッ!」
「駄目よ駄目よ―――。そちらが私の部屋に来る位時間はいくらでもあったんだからやりたくないという余裕はあった筈だわ。李玖ちゃんを探してるって事は参加したって事よ・・・それに、」
「こっちは李玖ちゃんを探しにきたんだから普通は探すわよッ!この×××の××××ッ!」
「な、何が×××の××××なのよッ!?」
「××××でしょ充分×××の××××よッ!!」
「紅葉ちゃんこそ充分××××××の素質があると思うけど?人の事いえないわよぉ―――」
「天宮さんこそッ」
ピーピーピーーーピーーーピーーー
すでに禁止用語の枠を超えた争いが始まっている。(というか俺と天宮さんが結婚する事前提で話が進んでるのに異議有りなんだけど)
俺の耳がおかしくなる程俺の目の前で禁止用語が飛び交う。はっきりいってうるさいから違う場所でやってほしい・・・。(これって公害なんじゃ・・・)
「李玖ッ!」
頭がキンキンするのでその場に座り込んでいると一ノ宮が俺の方に走ってきた。
「ぎゃッ!」
「ぎゃッとは何。ぎゃッとは・・・。それより大丈夫?」
「や、大丈夫だけど・・・。違う意味は大丈夫じゃない・・・」
と、目線をピーピー禁止用語で言い争っている二人に移す。
「あぁ・・・凄いね・・・」
一ノ宮さんは呆れる様に言い争う二人を見つめる。そして低い声で、
「光」と天宮さんに言う。ビクッと動揺した様に天宮さんの肩が震える。
「何」
「我侭な事はもうよせ。見苦しい」静かな声で・・・・それだけ言う。天宮さんは弾かれた様に一ノ宮さんを睨む。
「何よッ・・・・!あんたに言われる筋合い無いわ・・・。あんただって・・・・ッ」途中から声がか細くなっていく。同時に天宮さんの瞳が潤む。
「お前は何がしたいんだ?人を困らせたいのか?」一ノ宮のいつものふざけた様な口調ではない。真剣だ。
「和だって困らせてるじゃない・・・私を...。私、和の為にこうなったのよ?」
「分かってる」
「いつも気づいてる癖に。挙句の上には違う人を好きになって・・・私、馬鹿みたい・・・」
え、待って思考あ追いつかない。ぐるぐると回る言葉を黙って聞く。
「分かってる・・・御免な」
「誤らないでよ...李玖ちゃんの事私は利用しようとしたのよ?和は私に興味が無いみたいだから和の興味がある李玖ちゃんを利用しようとして、」ぽろぽろと涙が天宮さんの頬をつたる。
「御免・・・」
「だからッ・・・!」
「有り難う」
「・・・っ!」
一ノ宮がぽんぽんと天宮さんの頭を撫でる。ま、まてこれはどういうシーンだおい。
つまり天宮さんは一ノ宮にかまってほしくて俺を利用しようとした訳か・・・。
「でも俺はさ、」
「何・・・」すっかり大人しくなった天宮さんを見た後しゃがみ込んでいる俺の腕を引っ張る・・・と、頬に柔らかい触感。
「李玖の事が好きだから☆御免な?」
「「「え」」」三人揃ってハモる。
「離せ変態ッ!いっぺん死んで来いっつーのッ!!」
俺は一瞬固まったが一ノ宮の腕を振り払い一ノ宮にドロップキックをかます。
「痛っ・・・いいじゃんか〜」
「よくねえっつのッ!!地獄に落ちろッ!!」
俺と一ノ宮が色々騒いでいる間紅葉がすっかり落ち着いた天宮さんの隣にススス・・・と寄った。
「大変ね・・・天宮さんも・・・」
「大変よ・・・。今日は血祭りね♪」
さらっと恐いな・・・、と紅葉は思ったが苦笑いを浮かべ話を受け流した。
***
何はともあれ、何とか一件落着して、夜。
もう時間は夜で俺は風呂とかご飯とか食べる前にベットにダイブした。
それにしても頭が痛い。それにキンキンと激しく耳鳴りもする。
それは天宮さんの家でもあった事だがその時は軽く痛い、だった。それなのに今は比べ物にならない程痛くて、くらくらする。
痛い・・・・。
耳鳴りが凄くする・・・・・・。
俺の意識はだんだんと遠のいていった。
話についていきない方すみません^^;
中々話が進まない涙