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Strike!  作者: 蜂蜜@
13/21

12話 俺とハルと春人と。

注・なんとなくBLっぽいかもしれません(涙; 

 一ノ宮和・・・つまり俺の事だ。


 李玖は驚いた顔で俺を見ていた。


 ・・・無理も無いだろう。だって春人・・がここにいるのだから。


「春人...李玖に何をした?」


「ん?何にもしてないけど?」


 春人のケロッとした態度にふつふつと怒りがわいてくる。何もしてないという事はありえないだろう。それにしてもどうして李玖がこの部屋に・・・・。


 俺は耐え切れなくなって李玖の手首を掴んだ。


 うしろから李玖の抗議の声が聞こえてきたが、無視。


 ただ一つ思うのは・・・。


 



 ・・・・・・春人に・・・会わせたくなかった・・・。


 




 俺は無言のまま歩き続けた。気づいた時には公園の目の前まで来ていて、そこで我に返る。


「お前・・・・どうした?」


 李玖の心配そうな声が聞こえる。 


「別に・・・なんでも...」


 俺はなんとなく嫌になってその場を立ち去ろうとしたが、李玖の細い手に俺の手首を掴まれる。細くて弱そうな容姿なのに力が割りと強い。そう考えている俺に対して李玖はとても心配している表情が見える。


「待てよ。お前さ、今日変じゃないか?」


「・・・・・・・」悪いが同情されるのは嫌なんだ・・・、と言い訳して立ち去る事もできるのになかなかできない。


「一ノ宮。ここに座れ!」と、指差す場所はブランコ。水色のペンキと赤色のペンキの色が塗ってあるなんだか不釣合いのブランコ。ペンキを塗った部分が所々(ところどころ)ハゲていてなんとなく痛々しい。


 なんとなくこの歳にもなってブランコというのは恥ずかしいが、幸い誰も居なかったので座った。座った途端に李玖が真面目な顔で怒鳴るように喋る。


「お前、思ってる事全部吐け!」


「・・・・・・・・は!?」


「だから!思ってる事全部吐けよ!」怒っているような李玖の口調。でも顔を見るとあきらかに心配そうだ。


「・・・・・・・何で」


「いいから」


 強引な態度にムッときたが、素直に喋る事にした。


「一ノ宮和いちのみやかず・・・・・・・・――――俺は、一ノ宮グループの一人息子・・・と、されているんだ」


「は!?」驚くのも無理は無い。だって俺は一人息子・・・・だと思われているのだから。


「俺は跡継ぎをするために生まれた。それ以外の人間はいらない」李玖の言葉に構わず、喋り続ける。なんとなく俺の言葉に怒りの様なモノが混じる。


「そして双子の弟・・・春人はるひとは俺と同じように育てられたが、親の愛情は俺にそそぐばかりだった」


「そして春人は身体がもともと弱かったので学校にも行かず、正式には春人の存在は世には知れわたってはいない。両親も、跡継ぎ以外は必要無いと思っていたらしく、春人の事はあまり人には話されなかった」


「そしてますます、春人の存在は世に知れわたらなくなり、いつの間にか俺は、一ノ宮グループの一人息子という事になっていた・・・」淡々と俺は喋り続けた。李玖に言っているじゃなくて俺自身・・・に言っている様な気がするのは気のせいだろうか?


「一ノ宮・・・俺にそんな事話していいのか!?ってかお前ら双子!?そんなサラリと言うなよ!?」


「なっ・・・お前が全部吐けっつたんじゃん」李玖とはして目を合わさない。合わしたら何もかもぶちまけてしまいそうな気がして。


「そうだった・・・。なんか御免な」


 誤りたいのは俺の方だよ。李玖・・・。


 本当は全部・・話していないんだ。


 本当は・・・・――――。


 



 



 こんな俺を憎んでもいいハズなのにハルは笑顔で接してくれる。


 俺はハルの事がとても嫌で溜まらなくなったことがある。


 それは少し昔の話・・・・小6の時・・・・。


「ハルー。調子はいい?」 


 いつもの様に俺は、ハルの部屋の扉を開けてベットに横たわるハルに俺はランドセルをかずいたまま、話かけた。ハルは俺が帰ってきたのを嬉しそうに見つめる。


「うん。たいぶ良くなってきたんだ」


「そっかー。じゃ・俺、宿題するから戻るね」と、俺が自分の部屋に戻ろうとした時。


 くいっ、と自分の服の裾を引っ張るハル。その瞳には寂しそうな感じがする。


「カズ、行っちゃうの?」


「えっと....、うん・・・・」


「寂しい。カズが居ないと」子犬のような・・・そんな寂しそうな顔をするハル。


「じゃ、もう少し居るよ」


「本当!?ありがとー」


 俺はベットに腰かけ、にこにこと笑うハルにいろんな話をした。学校の事、湿った空気の事、雨が降った後に見える綺麗な虹、時々塀の上を通り過ぎる珍しい模様の猫の事・・・そんな話をハルは嬉しそうに聞いてくれる。


 そんなハルを好きだな、って思う。別にそうゆう意味の好きではなくて、にこにこと天使の様に純粋に微笑むハルを見ていいな、って思っただけ。俺もそんな風に笑いたいな。


 俺は友達とかに、よく作り笑いをする。相手には分からないような作り笑い・・・。そんな俺が嫌だけど、ハルは違う。まるで天使の様に純粋に笑う。


 とても、いいなって思う。


 だから俺もハルと居ると、自然と笑顔になれる。この時の俺だけ、少し・・・ほんの少し...自分が好きだな、って思えるひとときでもあった。


 


 ・・・・・・・・・その時は、俺とハルの関係が崩れるとも思ってもみなかったけど。


 俺とハルの関係が変わり始めたのは、父様の事をどう思っているか気づかれたからでもあった。あの時、俺があんな事呟かなければ良かったって今でも、後悔してる。


 


 俺はいつもの様に学校から帰り、靴を脱ぎ捨ててハルの部屋に行った。そしていつもの様に話をする。ハルは純粋そうに笑っていた。そんな笑顔を見て俺は呟く。


「ハルの事好きだなー・・・・」


「えっ?」きょとん、とハルの目が丸くなる。


「いや・・・そうゆう意味じゃなくて、ハルの笑顔が好きだなってっ事」俺は笑いながらそう言った。するとハルの表情がくもる。


「何ソレ・・・・」


「へ?」


「俺の事好きって言ったと思ったら笑顔の事?嬉しいけど、カズ・・・さ、違う意味で『好き』は無いの?俺に対して」


 ハルのいきなりの発言に戸惑う俺。え・・・今なんて。


「俺・・・・ずっと昔から・・・・カズの事・・・・」俺の返事も聞かずに、ハルは喋り続ける。


「好きだと思ってる」泡がどんどん弾けるように話が進む。いきないの展開。思考が追いつかない。


 



 やっとその言葉を認識した時、俺は思考が停止フリーズした。


「・・・・・・・・・え?」


 



 ふっと、ハルは俺に苛立ちの表情を見せた。ハルのこんな表情カオ・・・初めてだ・・・。ハル、が、おかしい。こんなの、ハル、じゃない・・・・!


 途切れ途切れにぎる言葉。俺はめまいしそうになった。


 その時。


 ハルはベットに腰を掛けている俺の手首をぐいっ、と引っ張る。


 そのまま俺はハルの方向に倒れる。そして、ハルと俺の唇が重なった。


「・・・・・・・!今・・・・・何した・・・?」


「キス」


 かぁっと顔が熱くなる。・・・・嫌。嫌だ!こんなの・・・ハルじゃない!


 俺は何もかも嫌になって・・・目の前が真っ暗になって・・・・どうしようもなくなって・・・パンと弾けたようにハルの手を振り払い、外へ飛び出した。うしろからハルの声が聞こえたような気がしたけど、すぐに俺の中の声にき消されて消えた。


 裸足はだしだったけど、何にも考えずに飛び出した。


 嫌だ。嫌だ!何もかも!


 アスファルトの道が、冷たい。でも構わない。


 俺は走って走って・・・・・誰がどんな目をしようと走った。


 そんな時。



 ドシン!




「痛!」「ぅわ!」


 どうやらぶつかったようだ。目をゆっくりと開く。目の前には俺と同じような年代の男の子が倒れていた。男の子は、痛そうにおでこをさすっている。


「だ・・・大丈夫?」


「大丈夫な訳あるか!・・・ってお前・・・べしょべしょだぞ、顔。そんなに痛かったのか?」最初は強気な態度で俺に暴言を吐いたが、俺の顔を見てすぐに表情が変わった。


「・・・・え!違うけど・・・」自分がさっきの事で泣いていた事に気づく。


「お前・・・名前は?」男の子は何にも無かったみたいにスッ、と立ち上がった。


「一ノ宮・・・・和・・・・」いきなりの質問におどおどと答えると男の子は満足したみたいにニッ、と笑った。


「そっか。俺は水野李玖って言うんだ。宜しく」


「え・・・うん」


「元気が無い!ちょっとこっちに来い!」と、腕を引っ張られた。


 とくん


 ・・・・・・・・・?


 今の気持ちはよく分かんなかったけど、不思議な感じだった。えーと...何ていえばいいのか・・・・?

 

 とにかく....俺は公園に連れて行かれ、ブランコに座らされた。水野、っていう子が口を開く。


「一ノ宮・・・どうして泣いたんだ?何かあったのか?」


「えっ!いやーあのー・・・」


「遠慮しなくていいって!な?思ってること全部吐けよ〜」


 な・なんだコイツは。


 別に自分にぶつかった人間くらい知り合いでもなんでもないし、放って置けばいいのに・・・・。


 俺はそう頭の中でもんもんと考えていたが、素直に言うことにした。


 少しだけ話すつもりだったハズなのに、いつの間にか全部言ってしまった。不思議な事に前よりも心が軽くなっような気がする。ついつい話込んでしまった事に気づき、俺は水野さんに頭を軽く下げた。


「・・・御免。話込んじゃって」


「いいよ、俺も暇だったし」と、軽い返事。


「・・・・そう」


「お前さー。何でも一人で悩むなよ〜」


「え?」


 いきなりの発言にどくん、と心臓が波打つ。


「だからさ...一ノ宮って一人で彼是あれこれ悩みそうだし・・・」


 ・・・・・・・なんだ。カンかよ。


 俺はクスッ、と笑った。水野さんが「なんだよ!」と顔を真っ赤にして言うのでもっと笑ってしまう。小さな笑い所ではなく、もう大笑いになっていた。


 こんなに笑うのって久しぶりだ・・・。しかも、いつもはハル以外作り笑いだったけど、またまた久しぶりに自然と笑えた。


「な、なんだよっ///」


「あはは」


「なっ・・・」ますます顔が赤くなる。面白い。なんでか知らないけど。


「こんなに笑ったの久しぶり」 


「そうか・・・なら良かったよ」赤くなっていた顔が笑顔に変わる。やわらかい・・・ハルみたいな笑顔。そして水野さんはブランコから降り、立ち上がった。


「じゃ、行く。また会おうな」


「え・・・行くの?」


「あぁ」


「そう....またね...」


「あ・言い忘れてたけど」


「え?何?」


「お前の事好きだよ」


「えっ////」


「いや、そういう意味じゃなくてさ。お前の笑顔が好きって事!」


「え・・・そっか...」


 って何ガッカリしてるんだよ///


 ・・・・・・・え?


 この台詞セリフ、どっかで聞いた・・・


 

 あ。


 なるほど・・・・・そういう事か。


 頭の隅に残る台詞セリフ。俺はその言葉を思い出した時にすべて分かった。ハルの気持ち。そして俺の気持ち。




 俺・・・・水野さんの事好きになってしまった・・・って事。




 




 少し昔の事を思い出しているうちに口元が緩んだ。


 春人との問題はまだ解決していないけど。


 俺はその時からハルの事を゛春人゛と呼ぶようにした。


 ハルとはあまり喋らなくなったけどそれでも良いかも、と思う。


 それから李玖が女になっていた時は正直驚いた。だって李玖は男だったんだから。

 

 でもって李玖の男だった時の事を皆覚えていない。


 だから俺は神様がチャンスをくれたんだと思う。


 李玖が女になってくれたのも、(多分)俺しか李玖の男だった頃を覚えているのもチャンスだと思う。


 だから俺は、あの時誓ったんだ。李玖の事を・・・・


 俺が思い出にふけっていると隣から李玖の声。


「一ノ宮ー」


「ぅわ!」


「何ぼっ−としてんだよー」


「別にー。李玖の事考えてただけ」


「うわー。コイツ元に戻りやがった!せっかく人が慰めてやったのに」


「いいじゃん。李玖って今日ヤケに優しくない?俺に」


「なっ・・・!違う!」


「何が?」


「・・・・っ!帰る!」と、真っ赤になって、李玖はブランコから降りた。そんでもって一言。


「お前さー。何でも一人で悩むなよ」


「・・・・・!」


「じゃな」


「あぁ・・・・ありがと」


 俺はそう言い、少し昔の李玖の言葉を思い出す。


『お前さー。何でも一人で悩むなよ〜』


 そう思い出し、口元がまた緩む。


・・・・・・・全然変わってないな。李玖。


 軽く伸びる。眼中に空が映った。空は夕日に染まっていた。


「李玖っ!」


 俺は李玖を呼んだ。その時、公園を出ようとしていた李玖がパッと振り向く。


 逆光で顔が見えにくく、眩しい。


 俺は走った。李玖の隣まで来たとき・・・小さな桜色の唇に軽くキスをした。






「なっ・・・・」


「賭けは俺の勝ち♪」にやっと俺は笑ってみせるとそのまま駆け出す。


「ちょっ・・・待てよ!」


 李玖の言葉も聞かずに俺は走る。






 だから俺は、あの時誓ったんだ。李玖の事を・・・・



 



 俺だけのモノにするって。

実を言うと一ノ宮はこの作品にでないキャラだったんですが、何故か今...出ています。(問題発言)しかも双子って;;&ネット小説の人気投票に参加しています〜。投票していただけると励みになります。(月1回)

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