10話 転校生と風邪。
俺はいつものよーに、家を出て学校へ行こうと玄関の扉を開く。俺のほっそりとした白い指がドアノブに触る。元は黒い健康的(?)な肌だったのだが、女になって白い肌になっている事に気がついた。それに、髪の毛もストレートのロング。すっかり俺の外見は変わってしまった。変わっていない事といえば俺自身だけだろうか・・・?
俺はそんな事も考えながら少し水っぽいアスワァルトの道を歩いた。
塀の上を歩く猫。時々ちらちら見える真っ赤な家の屋根。電信柱。それにしめっぽい朝の空気。
いつもとあんまり変わらない道を歩く俺。こういう静かな時が好きだ・・・と毎回思う。
俺はしみじみと老人のようにゆったりと道を歩いた。あぁ...なんて静かなんだ・・・!、と。
そんな時。
「水野さ〜んっ!」
どこからともなく聞こえる声。・・・・なんだ?
俺はピタッと止まり、キョロキョロとあたりを見回した。だがどこにも見当たらない。気のせいだな、きっと。俺はそう心の中で確信すると、横に向いている首を前に振り向こうとした。
「ここよここ!目の前にいるじゃないっ!」と、俺の目の前に突然現れた女の人。アーモンド型のくりくりっとした瞳がきらきらと輝いているようにみえた・・・・ってあれ!?
「い、いつから居たんだっ!?お前っ!」
「あらヤダ〜ずっとココに居たわ〜」にこにこと微笑む女の人。白い着物(みたいな?感じ)を(なぜか)着て、顔はとてもこの世のものとは思えない程の美人。フワフワの髪をカールにしていて、茶色っぽい色の髪。髪の毛にゆるくウエーブがかかっていて、後ろの方の髪だけを太い紐のようなものでちょうちょ結びに一つにまとめたヘアースタイルだ...ってなんか前同じような事を思ったような・・・・?
とにかく。
「嘘だろ!?嘘と言ってくれ!嘘だろ・・・絶対。俺は周りをちゃんと見回したんだから。前にいたら絶対気づくはずだ。それにいつからここにいたんだ...ありえない!ありえなさすぎる!!」
「あいにく、嘘は付かない性格なのよ☆御免ね、水野さん」
「謝まらなくてもいい...ってかなんで俺の名前?」
「あー。私の事覚えてないんだ・・・残念」
「え、えと,,,誰?」
「私は天宮神社の長女の天宮光というのよ〜。よろしくね♪」と、天宮さんは優雅にくるりとその場で一回転した。
「・・・あ、あぁ...宜しく」曖昧な返事をしておく。天宮さんはそれが気に入らなかったのかちょっと不機嫌な顔をして、「元気ないわよー。もしかして風邪引いた?」
「・・・・・?いえ」
「そう。なら良かったわ...。はい、コレ!昨日はありがとう!」ト、言いつつ折りたたみ傘を俺の方に差し出した。・・・・・・あ!
「昨日の!」俺はモヤモヤとしていたきりが晴れるようにスッキリした気持ちで思い出した。昨日の傘を貸した人だ...と思う。
「思い出してくれた?おかげで昨日は濡れずに済んだわ。水野さんは濡れちゃたけど...御免ね...」
「えっ!全然いいよ!ってか天宮さんが誤る事無いじゃん!」
「ふふ,,優しいのね。水野さん・・・・ますます気に入ったわ」ふふ・・・と、闇のように微笑んだ。言葉の最後らへんが小さくて聞こえない。なんていったんだろ・・・・?
「ん?」
「あ・なんでもないのよ〜っ!気にしないで!」
「・・・・?」
「では、また会いましょうね〜」と優雅に微笑み、俺が瞼を1回瞼を閉じたときにはもう去っていた....何だったんだ・・・?
*
学校へ着くと時計の長い針は12を回っていた。
やばい!遅刻だ!
俺は全速力で廊下を駆け抜けた。そして階段を2コ抜かしで走る。そのままの勢いで教室になだれこんだ。
「遅かったなのだ〜水野さん〜。これからは気をつけるのだ〜」と、ゆっくりした口調で龍之介先生は俺に話しかけた。あー・・・間に合わなかったかー....。
しぶい顔で「はい..」と言っておくと、紅葉と目が合う。なぜか紅葉は顔を真っ赤にして目をそらした。一ノ宮は...いないな。風邪でも引いたんだろう。とにかく、平和平和♪
俺は、席に着くと龍之介先生の隣に女の人がいるのに気づいた。
真珠の様な真っ白い肌。フワフワのカールした髪・・・・って....
「天宮さん!」俺はガタッ、と音をたてて立ち上がる。皆の視線が俺に...。はずいぞ。コレ・・・。
龍之介先生は別に怒る様子もなく、にこにこっ〜と笑う。「お〜、知り合いかなのだぁ〜。こんな感じで仲良くしてやってくれなのだ〜」
なぜか紅葉の視線が痛い。俺はそしらぬ顔をしながらふと頭によぎった事を述べた。
「え?天宮さんもしかして...」
それまで黙っていた天宮さんはニコリと微笑み、俺の言葉に続けた。「そう、転校生よ。昨日は学校にあいさつに行ってから制服を着てたの」と、言いつつ自分の白い着物の端をつまむ。
「えっと...とりあえず自己紹介をしてくれなのだぁ。それと水野さん、座ってなのだ」
「あ・・・はい・・・」俺はゆっくりと椅子に腰をかけた。その様子を見計らって天宮さんは口を開いた。
「天宮光っていうのよ。えーっと私は天宮神社の長女で、一ノ宮のイトコなの」
俺はその言葉に驚く。・・・確かに...似ているような気がするけど・・・。
「じゃー、とりあえずそこに座ってくれなのだ」と、俺から斜め右の席を指差した。そこの席に天宮さんは座った。そして俺の方を向くと、「よろしくね」と軽く一言。俺も「こちらこそ」と返事をした。
*
「うーんと...誰か一ノ宮さんにプリントを届けてくれる人いないかなのだぁ?」
放課後。
俺と龍之介先生しかいない教室。皆はさっさと帰って行ってしまったし、紅葉は「さ、先かえるね!」と行ってしまったし、天宮さんは授業の間にいきなし窓から飛び降りて帰っちゃたし(猫か天宮さんは;;)...。
・・・・・・・・・・どうみても俺に頼むしかないだろ!!!龍之介先生!!
俺はアホらしくなって教室を出ようとした。だが....龍之介先生の縋るような瞳に負け、結局俺が届ける事に。
家は知らないので地図を貰い、学校を出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・嫌〜な予感がするのは気のせいだろうか?
俺はそう思いながらも、とぼとぼとアスファルトの道を歩いた。
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