9話 折りたたみ傘とどしゃぶり
俺はいつも折りたたみ傘を(なぜか)持ち歩いている。
そんでもって俺は折りたたみ傘の存在をいつも忘れてしまい、折りたたみ傘を使わない事が非常に多い。
なので俺はいつも家からもう1つ持ってきている。そして帰りになるとふと折りたたみ傘の事を思い出すのだ。そして俺は思う。・・・なんでこんな事を繰り返すんだろー・・・、と。
6時間目がもうすぐ終わるという時。俺は龍之介先生ののんびりした声で思い出した。
「皆さぁ〜ん。雨が降ってきたので傘を使いましょうなのだぁ〜。無いのなら龍之介先生が貸してあげるのだ〜。1つしかないけど〜」なんか言葉が成立してないぞ....。龍之介先生・・・敬語の後に『なのだ』は、いらねーし...。しかも1つしかないのなら龍之介先生はどうするんだ...。
そういえば。
折りたたみ傘あるのに・・・・家からまた持ってきちゃったな......。
「どうした?李玖?俺とあいあい傘したいの?李玖ならいつでもOKだよ」といって微笑んだ。そういえば、なぜか紅葉が『一緒に一ノ宮さんを血祭にあげよう!』とか言ってはりきってたな....。ひとまずコイツの事は無視しよう!俺はもくもくとノートをとるふりをする。一ノ宮はつまらなさそうに俺の毛をなぜか一本取った。
プチッ
「ぃっ......」
「ちょっと一本くれよ」と、言いつつ俺ソックリの人形を取り出す。
「おまっ...何する気だよ!」
「えっとねー。髪の毛をこの人形にいれると両想いになれるっていうおまじない♪」
「やーめーろっ!キショイぞっ!俺はおと...」と、言いかけて喋るのを止める。今は女なんだった....。
「え?俺はおと?」
答えられずに黙っていると一ノ宮が閃いたようにポン、とグーで手の甲を手を叩く仕草をする。(いいかげん古いぞお前...)
「分かったー。俺は乙女って言いたいんだろー♪嫌だなぁ、李玖は俺だけの乙女じゃないかぁ」
「違う!どーでもいいから人形返せ!」俺は人形に向かって手を伸ばし、取ろうとした。だがあっさりと一ノ宮はその攻撃をかわす。
「えー。最初っから李玖のじゃ無いじゃん」と、無邪気に笑った。そして人形の背中のチャックを開け、髪の毛を一本入れる。俺はその隙を見逃さない。
「ほらっぐずぐず言うな!勝手に俺の何か作るのは、えっとー....著作権だぞ!多分...」と、言いながら俺ソックリの人形を取り上げた。全く、コイツは目を離すとロクな事が無いんだから...。
「え・それって四六時中俺の事見てるって事だよねー」と、人形を笑顔で取り返す。
「なっ・・・何勝手に人の心読んでんだ!しかも違うし!」人形にてを伸ばすが、ひょいっ、と避けられた。
「俺は何でもできるんですよー」
「んな訳ねーだろっ!」俺は一ノ宮の勘違い&馬鹿っぷりに否定しながら呆れながら、人形をやっと取り戻した。そんな時、一ノ宮は瞳をらんらんと光らせていた。俺の頭の脳細胞はピコーンピコーンと音をたてながら『悪い事の起きる前触れ!』と騒ぎ出す。
「じゃ・賭けしない?」と、悪魔の様に微笑む一ノ宮。だいたいはこの笑顔で騙されるが、俺は騙されないんだからな!脳細胞は悪魔のに微笑みを見てもっと騒がしくなった。やばい、逃げたい!
「何だよ。賭けって?」曖昧に聞いておく。コイツの事だろうからロクな事が無いと思うが。脳細胞は聞くな!聞くな!と言い返す。今サラ遅いぞ!
「俺が李玖の唇奪えたら俺と付き合う、ていう賭け。そんでもって奪えなかったら李玖の事構うのやめるよ。期限は一ヶ月。これでいいねー決定〜♪」脳細胞達はショックをうけ、倒れ始めた。
「ちょっ...何勝手に決めてる...」と、言いかけて口が止まる。コイツが構ってこなければ平和なんだ!多分。それだったら・・・!
「ちぇーっ駄目かー・・・」
「いえいえ!全然駄目じゃねーよ!むしろOK!」俺は頭をブンブン縦に振り、肯定した。
「え・いいんだ」驚いたように目を丸くする。
「ああ!」
「ふーん...。じゃ、李玖。負けて当然だね」ふふん、と余裕の笑顔を見せた。
「一ノ宮!俺はこの勝負!勝つからな!」
そこまで言った時、チャイムが鳴った。そして6時間目が終わった....。
雨はどしゃぶりになっていた。走って帰る人も多かった。殆ど男子だったけど...。
そして俺は学校から出て、商店街の中を歩いていると店の屋根の舌に雨宿りしている女の人を見つけた。女の人はフワフワの髪をカールにしていて、茶色っぽい色の髪だった。髪の毛にゆるくウエーブがかかっている。後ろの方の髪だけを太い紐のようなものでちょうちょ結びに一つにまとめたヘアースタイルだった。顔はとてもこの世のものとは思えない程の美人。アーモンド型のくりくりっとした瞳も印象的だ。身長は女といのに長身。俺らの学校の制服を着ているからきっと同じ学校だろう。先輩だと思ったが、ピンバッチが赤色なので2年生らしい。雨のせいかフワフワの栗色の髪がしぼんでみえる。
俺は美人はあまり好きという訳でも無いが、とても困っている感じだったので自分の傘をちょうちょ結びの女の人に差し出した。
「ハイ。どーぞ」
「えっ...私に?」
「あぁ。使いなよ。濡れるよ」
「え、ええ。有り難う」女の人は一瞬戸惑ったが、すぐにニッコリと笑顔を見せ、傘を受け取った。
俺は折りたたみ傘があるから大丈夫だと思い、鞄の中を手であさる。
・・・・・・・・・・・・・無い。
俺の頬に汗が一粒。つー・・・と、つたった。
・・・・・どーしよ。今サラ返せってのもヒドイし。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・もう、どうにでもなれ!
俺は女の人に「では!」とだけいうと雨の中走って帰る事にした。ばしゃばしゃとすっかり雨で水びたしになった道を走った。
後ろからさっきの女の人の声が聞こえる。「あ!本当に有り難う!君、何組?」
「2−2!」
俺はそれだけいうとどしゃぶりの雨の中を駆け抜けていった。
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