幼年期3 魔法
魔法。それは異世界に転生した身として興味をそそられるものである。ファンタジーの主人公にでもなれる可能性があり、何にも熱中できなかった自分を熱中させてくれるかもしれない!
…?今一瞬頭に浮かんだが…まぁいいか。
まずは母に魔法を教えて!と素直に頼んでみるが、
「まだ1歳には早すぎるかなー」
あっさり断られた。そりゃそうか。ならば勝手に学ぶまで!一度火をつけたら止まれないとまらない!!!
母がいないのを見計らって這い這いでキッチンに潜入。水晶を触ろうとするが高くて届かない!くぅ、これが俺の限界だというのか。
いや、もっと頑張れる!立て!立つんだおれ!
うおおおおおおおおお、正面の壁に手を付き、体の状態をあげる。俗にいう壁立ちである。
あと少しで水晶に届く!あとすこし…
「あー!ユーリがイタズラしてる!!」
り、リニア姉。そんな殺生な…すぐさま母が飛んできて軽く拳骨をくらった。
キッチンの水晶は取り外され、リリスがどこかに隠してしまった。その為魔法を確かめる事は
できなくなってしまった。しかしどうすれば魔法の事を知れるのだろう…。
そう悩んでいるところにリニア姉が通り過ぎた。そうだリニア姉に聞けば何か知っているかもしれない!
「おねーちゃん!」
「なに?ユーリ」
「まほうおしえて!」
「だーめ、私だってまだまおう先生のところにいるときしか使っちゃ駄目っていわれてるんだから」
リニア姉でも一人で使えないのか。でも新たな情報を手に入れたぞ…先生と呼ばれる人物がいるらしい。ここは上手くリニア姉に取り入って、先生とやらのところに連れて行ってもらえれば魔法を見ることは可能なんじゃないか?
あわよくば使えれば…。
「リニアおねえちゃん、せんせいってだれ?」
「先生はせんせいよ!魔法もうまくて、すっごいかっこいいの!オトナの雰囲気をもっててね、それで・・・etc」
どうやら姉は先生とやらにほの字みたいだ。6歳児が大人に惚れるってのもおかしな話ではある。その後、長い長い姉の話を聞き流し、なんとか先生のところに一緒に連れて行ってもらえることになった。
数日後、母に抱えられ先生とやらのところへやってきた。この村はアラーム村というらしく、あまり豊かではないが食うのには困らない程度の村である。総人口で500人もいないだろう。そんな村の中で学校と呼べる場所がここヤム治癒院である。
ヤム先生はもともと冒険者だったが、足を痛めたことから引退し故郷であるアラーム村で薬屋を始めたそうだ。薬屋も暇だったみたいなので、村人に魔法を教え始めたら予想以上に好評でそれ以来先生と呼ばれるようになったようだ。
今回の訪問は俺のわがままだったが、一応対面的には母と姉が魔法を教わりにきた事になっている。
「先生!こんにちは(ニコッ」
「はい、こんにちはリニアちゃん」
ヤム先生はにこやかに微笑むと優しくリニア姉の頭を撫でる。小学生が担任の先生に憧れてるみたいだ。
母も俺を紹介しつつ挨拶し、授業が始まる。
「今回は新しくユーリ君も来たから簡単に魔法について説明してあげよう。それで構わないですかリリスさん?」
「はい、よろしくおねがいします!」
リリムに聞いたはずなのにリニア姉がハキハキと答える。まぁ、魔法の話が聞ければなんでもいいけれども。
「まず、魔法はミリル流・ムーア流二つに分かれます。その違いは?はいリニアちゃん」
「えーと…ミリル流は手から出して、ムーア流は水晶から?」
「概ね正解です。ミリル流・ムーア流の多くな違いは魔力を直接変換させるか間接変換させるかです。ミリル流の場合、自身の魔力を体外に放出し拡散する前に火や水に変換し使用します。それに対してムーア流の場合、特殊な道具、水晶などを用い中に魔力を注入し、起動させることで魔法を発動させます。
では、両者のメリットはなんでしょう?はいリニアちゃん」
「え!?あ、はい。うーんわからないです」
リニア姉がションボリとした顔で答える。
「まだ難しかったかな?じゃーユーリ君わかるかな?」
リニア姉が落ち込んでしまった空気を切り替えるために一歳児に話題をふるとは。まぁ、先生も答えを期待して聞いてるわけではないだろう。母も「ユーリわかるー?」と聞いてくる。
「安定したけっかを出すためで、ムーア流の場合毎回いっていのけっかを出すことができて、ミリル流の場合は道具がなくてもその場で使うことができます」
ちょっとバカにしすぎじゃないですか!と抗議の意味を込めて話してしまった。
「せ、せいかいです。1歳なのにすごいね…先生驚いちゃったよ」