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幼年期9 ユニウス出立

やっと進んできたぜ


村長の家から父ユニウスが帰ってきた。どうも顔色が悪い。どうしたのだろうかと思っていると広間に家族全員集まるようにと言われた。やはり昨日アルに生意気な口を聞いていたせいだろうか。


「徴兵されることになった。」


そうユニアスは短くいった。普段の快活な笑い声は聞こえてこない。

リリスはただ夫の目を見ていた。いたたまれなくなったのかリニア姉が声を出す。


「どうしてお父さんがいくの!そもそも戦争なんてないんでしょ!?」

「いや、どうも南の森。果ては東の大陸の方から魔族が進行してくるかもしれないという話だ。」

「まぞく!?」

「そう、魔族だ。魔大陸にいるはずの魔族が現大陸に現れ、あまつさえ海を渡り私たちに国に侵略しに来ているらしい。その対応で兵が足りなくなってきているらしい。少しでも男手が必要らしく父さんも行かなくてはいけなくなった。他にもモナコの両親や若い村の男は一緒に行くことになるだろう。」


魔族…本で学んだ内容だと魔大陸に住む種族で魔力の扱いに富んでいる。しかし魔大陸から現大陸に来るには転移門と呼ばれるところを通って来るしかなく、厳重に管理されているとされていた。


その後も色々リニア姉が父に言っていたが既に決定済みだと言われるのみだった。今回貴族のお方が村に来たのもその要件だったのだろう。お通夜のような雰囲気が流れたが父は「はっはっは!」と笑うと


「俺は必ず生きて帰ってくる!それまで家のことは頼む!」

そういって酒を傾けた。

「ユーリ、お前は男だからな、お姉ちゃんとお母さんを守るんだぞ。剣は帰ってきたら教えてやる」

といって俺の頭をごしごしと撫でた。



三日後には父を含めた大人十数名が戦地に向かうことになった。中でも父は村で一番強かったので、実際に戦うところまで、前線まで送られることになるのだろう。普通に考えれば片道切符。この世界では命はそれほどまでに軽いんだ。ようやく俺は理解した。


それでも父は最後まで笑って、俺たちに不安さえ与えずに旅立っていった。




男手の少なくなった村は仕事で溢れていた。

もうすぐ4歳の俺も特訓ばかりしていられらなくなった。また戦時になったのだという意識が村人たちにも芽生えたのかどこか暗い雰囲気が漂う。軽くランニングを行ったあとは畑仕事を手伝う。

昼まで手伝ったあとは家のことを手伝う。洗濯や掃除といったことだ。リリス母は家畜の世話や畑の仕事に向かっているので家のことでできることは手伝うと決めたのだ。


「ユーリ、最近魔法の練習しないけどいいの?」

「そんなことしてる暇ないだろ?モナコも家の手伝いしなきゃだし…まぁ、戦争が終わればまたやるかもな」


魔法の特訓はいつの間にかやらなくなっていた。異世界に転生して、浮かれていたけれど俺は二度と「死」を経験したくないと思ったのだ。

今回のことで強くなれば危険なところに行かなくてはならないかもしれない。ユニアスはまさにそうだった。父は強い、村で一番…だから最初に出兵メンバーに選ばれた。

腕っ節の強くない人や、ヤム先生みたいに足の悪い人は選ばれなかった。つまりそういうことだ。


強くなれば戦いを強いられる。漫画とかでもそうだ。力を獲れば得るほど、戦いの方からやってくる。俺はもう死にたくない…戦いたくなんかない、だから魔法も使えなくてもいい。剣も振れなくていい。弱くてもいい。いきていたいんだ。

ファンタジーの主人公のように俺はなれない。彼らはきっと心が強いんだ。剣すら振ったことのない子供で、水鉄砲にもおとる魔法しか使えない子どもなんだから別にいいんだ。これで…いいんだ。


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